前十字靭帯損傷の受傷機転(メカニズム)について【危険な動作や肢位】

前十字靭帯(ACL)は膝の安定に不可欠な組織ですが、スポーツ活動などで損傷しやすい部分です。

その受傷にはいくつかのパターンが存在しています。

前十字靭帯がなぜ損傷してしまうのかを理解することは、普段のトレーニングで予防を意識することにつながります。また、手術後のリハビリで再発予防を行う際にも重要です。

ここでは、その受傷パターンについて主にご紹介していきます。

前十字靭帯の受傷機転

前十字靭帯の受傷機転は、次の2つに大別されます。

  • 接触損傷(contact injury)
  • 非接触損傷(non-contact injury)

接触損傷

接触損傷では、特にサッカーやバスケットボールなどのコンタクトスポーツなどで、膝に強い外力が加わることで生じるものです。

例えば、バスケットボールのリバウンド時に膝の上に乗られたり、サッカーで相手の膝が外から当たったりするような場合です。

接触損傷では、荷重位で膝屈曲位から捻るような動きを強制された場合に生じます。

外からの力による損傷なので、外因性損傷とも呼びます。

非接触損傷

非接触損傷とは、ジャンプの着地時や加速・減速時の膝の動き、ステップ動作などによって生じます。

やはり荷重時における膝の捻り動作が、前十字靭帯損傷の原因となります。

接触損傷=外因性損傷に対して、非接触損傷は内因性損傷とも呼びます。

非接触損傷の場合には、身体機能上の問題や体の使い方の問題が内在していることがあります。例えば、股関節や足関節のの筋力低下や可動域制限、足部の接地位置の問題などが背景に存在していることがあります。

特に多いのは、方向転換時やジャンプからの着地時における膝の不安定性の存在です。

膝の動的な制動力低下と言い換えても良いかもしれません。

そのような不安定性を抱えている膝は、前十字靭帯損傷を引き起こしやすいわけですので、未然にメディカルチェックなどで発見できれば理想です。

多いのはどちらか?

前十字靭帯損傷における接触損傷と非接触損傷では、どちらの頻度が高いのでしょうか。

いくつかの書籍や文献を確認しましたが、非接触損傷の方が多いというのが一般的な認識のようです。

前十字靭帯の機能

ここで、前十字靭帯の機能を復習しておきましょう。

前十字靭帯には、次の3つの機能が存在します。

  • 脛骨前方移動の制御
  • 膝関節内旋の制御
  • 膝関節過伸展の制御

そしてそれらは、前十字靭帯の2つの繊維束(前内側繊維束と後外側繊維束)の作用により成り立っています。

前十字靭帯の構造と機能について【リハビリに必要な基礎知識】

具体的な受傷機転

具体的な前十字靭帯損傷の受傷機転を把握することは、二次損傷予防や再断裂予防のためのリハビリにとって重要です。

前十字靭帯損傷は、主に次の4つの動作を強制されることで発症します。

  1. 膝の外反・内旋
  2. 膝の内反・内旋
  3. 膝の過伸展
  4. 脛骨の前方引き出し

1.膝の外反・内旋

前十字靭帯損傷の大半を占める受傷パターンです。

守屋¹⁾によると、調査では98例中48例がこのタイプの受傷であったとのことです。

膝外反時に脛骨の急激な内旋が加わると、“ボキッ”・“ブツッ”というポップ音とともに断裂音を自覚します。

下の3D画像のように、外側から外力が加わった場合にはこのような外反・内旋が起きやすい傾向にあります。

また非接触損傷においても、カッティング動作やステップ動作などでは、膝を軽度屈曲位で捻る動きにつながりやすく、外反・内旋を強制されることがあります。

文献によっては、外反・外旋でも受傷すると報告しているものもあります。しかし前十字靭帯損傷にとっては、外反が大きなリスクファクターであるということに関しては統一した見解であるようです。

2.膝の内反・内旋

前十字靭帯損傷は膝の内反でも生じることがありますが、頻度としては外反時よりは低い傾向にあります。

このような受傷形態の際には、過剰な下腿の内旋動作が複合しているはずです。そうでなければ、解剖学的な位置関係からみても前十字靭帯は損傷を受けるまで強く伸長されることは少ないと思われます。

外反時の損傷パターンと異なり、内反と下腿の外旋動作の複合動作においては、前十字靭帯は大きな伸長ストレスが加わるとは考えにくい形状をしています。

3.膝の過伸展

膝関節の過伸展を強制されるような場面でも、前十字靭帯が耐えられる力学的負荷を超えた場合には損傷することがあります。

スポーツにおいて、前方からタックルなどで相手と衝突した際などがこれに当たります。

4.脛骨の前方引き出し

後方から脛骨へ衝撃が加わった際にも、前十字靭帯は損傷の可能性があります。

例えば、後方からのスライディングや、自分自身が後方へバックしている際に人と接触するような際に起き得ます。

特に脛骨の上端外側への衝撃は、前十字靭帯の付着部間を引き延ばすために危険です。

受傷しやすいスポーツ

守屋¹⁾によると、前十字靭帯損傷の発生頻度の高いスポーツは以下の通りです。

上位3種目まで記載します。

男子(150例中)

サッカー:61例

バスケットボール:17例

バレーボール:15例

女子(126例中)

バスケットボール:75例

スキー:12例

器械体操:8例

まとめ

前十字靭帯損傷の受傷機転パターンは多く、それぞれに接触・非接触要素が絡みます。

重要なのは、受傷を予防するためにどのような動作に危険があるのかを知ることが一つあります。また受傷後に、再損傷を予防するために、損傷しやすい要素が身体に隠されていないかを知ることです。

それらのために、前十字靭帯損傷の受傷機転(メカニズム)をしっかりと押さえておきましょう。

参考文献

1)守屋秀繋:前十字靭帯損傷「部位別スポーツ外傷・障害2 膝.南江堂,1995」