前十字靭帯損傷の手術(STG法・BTB法)の特徴と、その後のリハビリへの影響

前十字靭帯(anterior cruciate ligament=ACL)損傷は、スポーツにおける膝関節靭帯損傷の約半数を占めます。

その治療には手術療法と保存療法があるわけですが、スポーツ復帰を目標とする方に対しては手術療法として靭帯の再建術が選択されます。

ここでは、前十字靭帯損傷の手術法と、その後の術後リハビリへの影響についてご紹介していきます。

前十字靭帯損傷について

受傷の要因

サッカーやバスケットボール、ラグビーといったスポーツにおいては、ステップ・ジャンプ・ターン動作の際や人と接触した際に、膝の捻じれが起きることがあります。

そのような動作に膝の前十字靭帯が耐えきれない場合には、ポップ音(ブツッという断裂音)とともに靭帯損傷が起きます。

前十字靭帯損傷の受傷機転(メカニズム)について【危険な動作や肢位】

どのような場合に手術になるのか?

膝関節を構成しているものとして、靭帯の他に半月板関節軟骨といったものがあります。

前十字靭帯は『膝の回旋』や『脛骨の前方移動』を制御しているために、前十字靭帯が損傷すると膝の安定性が悪くなり、半月板損傷などが将来的に起きやすくなります。

詳しくは、以下の関連記事内の【➁前十字靭帯損傷に続発するもの】をご参照下さい。

半月板損傷のメカニズム(受傷機転)について

このような理由のために、特にスポーツ復帰を望む方には手術が選択されます。

逆に、日常生活を送ることが出来れば良いという方には、保存療法として筋力訓練や装具療法などが行われます。その際には、半月板損傷の合併がない方が適応となります。

また、骨端線閉鎖前の若年者も保存療法の適応ですが、将来的な手術に向けての一時的な保存療法として治療を行うこともあります。

手術自体は、スポーツ復帰を前提に行うケースが多いことから、実際に手術適応となるのは10代~20代がほとんどです。しかし、たとえ50代や60代であっても、希望があれば手術を受け、スポーツ復帰することは可能です。

しかし、年配者の場合には、膝の変形が進行していないかどうかといったことも影響を与えます。

術前のリハビリテーション

手術を行うことが決まったら、その手術の前にもリハビリが行われます。なぜなら術後の状態は、手術前の状態が大きく影響するからです。

特に、膝の伸展制限の有無は重要です。

膝が十分に伸びていない状態で手術を行えば、術後の筋力回復が遅れてしまうケースがあります。

ある程度早期の炎症が落ち着き、可動域に問題が無くなれば手術が行われます。

しかし、前十字靭帯損傷直後に手術を行うと、術後の関節に繊維性癒着(fibrosis)が起きることで関節拘縮を起こしやすい危険があります。よって、手術を行う場合でも受傷から3~4週間経過した後に行われます。

どのような手術が行われるのか?

2つの手術法

近年では、半腱様筋(Semitendinosus=ST)と薄筋(Gracilis=G)を使用したSTG法か、骨付き膝蓋腱(bone-patellar tendon-bone)を用いたBTB法のどちらかを用いた前十字靭帯の再建術を行う病院がほとんどです。

この両者の手術による予後への影響は、長期的に見ればそれほど大差がないとは言われていますが、それでも以下のような特徴があります。

STG法

STG法のメリット

STG法のリハビリに関わるメリットとしては、次のことがあります。

メリット

術後の疼痛が少なく、可動域訓練や筋力訓練が比較的スムーズ

しかし、STG法では次のような特徴もあります。

  • 膝の深屈曲域での筋力低下が起きる
  • 初期固定力がBTB法ほど高くない

よって、後述するBTB法とSTG法のどちらを選択するかは、実施しているスポーツの種類などを含めて医師と相談をすることになります。

STG法の詳細

STG法には、1重束再建術とACLの解剖学的走行に近い2重束再建術があります。

正常な前十字靭帯には、前内側繊維束(antero-medial bundle=AMB)と、後外側繊維束(postero-lateral bundle=PLD)という2つの繊維束が存在しており、それぞれが機能することで、前方安定性や回旋安定性につながっています。

前十字靭帯の構造と機能について【リハビリに必要な基礎知識】

2重束再建術は、下の図のように解剖学的な特徴に近いという利点がありますので、その分安定性に優れていると言えます。

この、2重束再建術は1重束再建術に比べて移植腱骨移行部の接触面積が広いため、早期の癒合による固定力を得る助けになります。さらに、どの程度テンションをかけて移植腱を設置するかといった、自由度が高いこともメリットです。

BTB法

BTB法のメリット

メリット

初期固定力が高く、靭帯強度が強い

その一方で、次のような特徴もあります。

  • 膝関節前面の痛みが生じやすい。
  • 術後早期は膝の伸展筋力が低下低下する(その後の回復は良好)。

BTB法の詳細

BTB法では、膝蓋骨と脛骨の一部ごと膝蓋腱を採取して使用します。

それにより、再建靭帯を通す骨孔は、骨と骨で接することが可能になることから骨癒合が得られます。一方で、前述したSTG法では、腱と骨が癒合することで固定することになります。

よって、骨癒合による固定が得られるBTB法は、術後早期の固定性に優れています。

その一方で、膝蓋腱を骨ごと使用するので、STG法よりも周囲組織への影響があります。

下の図をご覧下さい。

このような形で腱を骨ごと採取します。

採取する部分の特徴から、STG法のように2重束にすることはできません。

膝蓋腱の深部には、膝蓋下脂肪体が存在していますので、まずそちらへの影響は必ず生じるでしょう。

【膝蓋下脂肪体】による膝前面の痛みと伸展・屈曲制限について。リハビリ方法もご紹介します。

特に、膝を地面に接触させるような動作や、深く膝を曲げるような動作(立膝や正座など)では術後の痛みにつながりやすい傾向にあります。

まとめ

両者の手術法については、長期的には差がないという報告がほとんどです。

しかし、それぞれ別の腱を採取することから、その腱につながる筋肉の筋力低下や周囲組織への影響があります。これらを理解した上でリハビリへと展開していく必要があるかと思われます。