【これなら誰でも分かる】リハビリにおけるクリニカルリーズニングの内容

“能力のある理学療法士は、クリニカルリーズニングができる人間である”

これは確固とした事実であり、今後も変わることはないでしょう。

学生、臨床家を問わず、全てのリハビリに関わる者にとって、これが患者さんと関わる際の最重要項目と言っても過言ではありません。

しかし問題は、とにかく概念が分かりにくいことです。

ここでは、分かりにくいクリニカルリーズニングを、できるだけ分かりやすく説明します。

クリニカルリーズニングとは?

クリニカルリーズニングとは、日本語訳すれば『臨床推論』であり、仮説とその検証の過程によって症状の原因となる問題点を特定し、特定した問題点の解決に適した治療法を選定するというプロセス方法論で、一連の心理・認知的過程を指します。

うーん・・・自分で書いておいて何ですが、実に分かりにくいですね。

クリニカルリーズニングを他の表現で説明しているものを見てみましょう。

限られた情報の中から、どのようにその障害像を捉え、さらにほかにどのような評価が必要なのかを思考し、最終的に問題となる原因について臨床的判断を下し、最適な治療プログラムへ結びつける一連の思考過程である。
引用:【理学療法】25巻9号2008年9月

やっぱり難しいですね。

あらかた文献などを渉猟してみましたが、正直クリニカルリーズニングを簡単に説明している文章を見つけることができませんでした。

そこで、今回はたとえを使ってクリニカルリーズニングを説明していこうと思います。

プリンを食べたのは誰?

【クリニカルリーズニング】を、【プリンを食べた犯人を見破っていく過程】になぞらえてみましょう。

僕は昔から牛乳プリンが大好きなのですが、冷蔵庫に入れておくと、気づいたときには決まって無くなっていました。犯人はおそらく父親か兄か妹なのですが、全員可能性がありすぎて絞り切れません。絶対に誰が普段食べているのかを見つけたいわけです。

そのような時に、あなたならどうしますか?

証拠を探し出します!

  • 口の回りにプリンがついていないかチェックする
  • 誘導尋問をする
  • 隠しカメラを設置する
  • 目撃者を探す

その結果、疑惑はある程度確信へ変わり、本人へ突きつけるわけです。相手が否定すれば、証拠を基にした客観的判断により、母親から怒りの鉄槌が下され、プリン代弁償となるわけです。

クリニカルリーズニングも同じです

リハビリにおいて、これを応用してみましょう。

問題の原因について仮説を立てる

【冷蔵庫のプリンが無くなった】というのは、『患者さんの問題』としてください。

そして、【おそらく食べたのは、父・兄・妹の誰かだ】というのは『原因の仮説』です。

まずは、思考のスタートはこのような発想から始まるわけです。歩くと膝が痛いと訴える患者さんだとすれば、『おそらく原因は、筋力低下・拘縮・炎症によるもの』のどれかだろうと予想するようなものです。

仮説の検証(犯人さがし)には注意が必要

リハビリにおいて、問題の仮説は立てたは良いのですが、思い込みによって、問題点を決めつけてしまうことがあります。

MMTしか検査していないのに、「歩行時痛の原因はきっと大腿四頭筋筋力低下だ」といっても、それだけでは信憑性がありません。

そのような状態は、先ほどのプリンの例で言えば、『だいたいこういうことの犯人は兄だ』と決めつけているようなものです。

これは、認知バイアスと呼びます。人間は自分にとって、都合が良いように思い込むことがあります。この場合、兄がいつも自分のものを奪っているという認識から、偏った考えをもってしまったと言えます。リハビリにおいてもこのようなことは多々あります。研修会などで学んだ知識などを活かそうとしたり、自分で考えた仮説が合っていて欲しいと願うあまり、偏った考えで問題点を決めつけてしまうことがあるので注意が必要です。

プリンの例で言えば、【犯人を疑ったはよいが、証拠固めができていない状態】です。

客観的証拠(評価)を積み重ねる

もっと証拠が必要です。

兄の言動について、妹に聞いてみましょう。すると、「さっきプリン食べていたよ」と目撃情報を得ました。しかし、別のプリンかもしれません。

もっと証拠を集めましょう。

隠しカメラを設置して、もう一つプリンを冷蔵庫に入れておきました。後日カメラを見たところ、兄がプリンらしきものを手にしているのが確認できました。

これでもはや逃げ道はありません。

リハビリにおいても、評価(証拠)を積み重ねましょう。一つの評価(証拠)では信憑性がありません。ROM検査やMMT検査、整形外科的テストやADL検査、動作分析などあらゆる評価を行い、それらを統合して問題点を信憑性のあるものへとしていきます。これが統合と解釈です。

統合と解釈についてはこちらもどうぞ

理学療法士の実習生が悩む【統合と解釈】を超分かりやすく解説する

ここまで来てようやく、「この検査とこの検査、さらにこの検査によって、膝の痛みの問題点は大腿四頭筋の筋力低下だ」と言うことができるのです。一つの検査ではなく、いくつもの検査や評価を組み合わせた結果、問題が明らかになります。

証拠(評価)に矛盾が出たらどうしますか?

例えば、ここまで証拠を積み重ねたとしても、父親がやってきて「いや、プリンを食べたのは妹だ」と言ったとすればどうでしょうか。

証拠に矛盾が生じますね。

父親の意見は無視しますか?それとも今まで積み上げた証拠をなかったことにしますか?

リハビリの現場でもこのようなことはよくあります。評価を積み重ねて問題点をある程度絞れて来ていても、全く矛盾する検査結果がひょこっと出ることがあります。それと同じです。

2つの仮説の種類

仮説には、以下の2つのものがあります。

  • 帰無仮説(証明されてほしくない仮説)
  • 対立仮説(証明されることを歓迎される仮説)

プリンの例で言えば、父親の意見によって生まれる仮説は帰無仮説でしょう。しかし、ここで父親の意見を無視してはいけません

リハビリにおいても、特定した問題点を批判的思考から考えるということは非常に重要なことです。考えることが増えるので避けたくなる気持ちは分かりますが、反対の立場から、本当にこれで良いのかということを鑑別することもクリニカルリーズニングでは重要です。

父親が言う通り、プリンを食べたのが万が一、兄ではなかったとすれば、兄弟げんかは血を見る戦いになるかもしれませんからね。

まとめ

クリニカルリーズニングは、厳密に言えば治療やその後の効果判定までを含めますので、これが全てではありませんが、一連の流れを見てきました。

ぜひリハビリを進めていく上で行き詰った時には、『プリンを食べたのは誰か?』と思い出していただければこの上なく幸いです。