脊椎圧迫骨折の基礎知識や、リハビリにおける注意点について。

脊椎圧迫骨折は、頻度の高い骨折であり、主な背景因子として骨粗鬆症が挙げられます。

高齢化の進む日本において、今後さらにこの骨折の発生率は増えていく可能性があります。このことは、将来的な要介護者の増加にもつながる恐れがあり、見過ごせない事柄です。

ここでは、不運にも転倒などにより圧迫骨折をしてしまった方、もしくはその不安がある方に向けて、リハビリの観点から話を進めさせていただきます。

脊椎とは?

いわゆる脊椎とは、以下の骨で構成されています。

頸椎(けいつい) :7個
胸椎(きょうつい):12個
腰椎(ようつい) :5個
仙椎(せんつい) :5個
尾椎(びつい)  :5個
計        :33個

※頸椎=C 胸椎=T 腰椎=L

脊椎圧迫骨折とは?

脊椎圧迫骨折とは、簡単に言ってしまえば次のようなものです。

背骨の前方が潰れてしまうこと

よくある受傷機転は、転倒によるものです。特に、しりもちをつくように転倒することで、背骨に縦方向の力が加わることで骨が潰れてしまうのです。

よく勘違いされていることとして、圧迫骨折というのは、背骨全部が潰れてしまっていると思ってしまうことがありますが、そうではありません。

脊椎骨折の分類

脊椎の骨折による分類には、three column theoryというものが役に立ちます。

これは、脊椎を前方支柱(anterior column)、中央支柱(middle column)、後方支柱(posterior column)に分けて考える方法です。

これを基に説明すると、脊椎骨折は脊椎圧迫骨折脊椎破裂骨折に分けられます。

  • 脊椎圧迫骨折:前方支柱が潰れる。
  • 脊椎破裂骨折:前方支柱だけでなく中央支柱までも潰れる。

脊椎破裂骨折は脊椎圧迫骨折に比べて不安定な骨折であり、神経症状を引き起こすことがあります。なぜなら、脊椎破裂骨折で損傷を受ける中央支柱のすぐ後方には脊柱管が存在しており、脊髄へ影響が出やすいからです。

一方、脊椎圧迫骨折は主に前方支柱のみが潰れるために、安定型となります。

前方が潰れるために、楔状に変形することが多いです。

知っておくべき遅発性脊髄神経麻痺について

先ほど述べたように、神経症状が起きる可能性があるものとして特に注意が必要なのは脊椎破裂骨折です。

しかし、脊椎圧迫骨折でも神経症が絶対に出ないわけではありません。圧迫骨折後に、潰れた椎体の後ろの部分がじわじわと後方に突出することによって、脊髄神経を圧迫刺激することがあります。これを遅発性脊髄神経麻痺といいます

その際には、お尻から下肢にかけてのしびれ感や痛みや、下肢の筋力低下、排尿障害などが生じることがありますので注意が必要です。

圧迫骨折が起きやすい部位

脊椎圧迫骨折の好発部位は、T12(12番目の胸椎)からL1(1番目の腰椎)という、いわゆる胸腰椎移行部が最も多い傾向にあります。

なぜこの部分で圧迫骨折が多いかについて考えてみましょう。それには、その周囲の解剖学的特徴が重要です。それを以下に列挙します。

  • 胸椎は、前方に胸骨・肋骨が存在することで、胸郭による骨での支持があります。
  • 腰椎の前方には骨による支持はありません。しかし、腹横筋を中心とする腹筋群や、後方の多裂筋といった固定筋が働くことで、それを補う構造となっています。
  • 胸椎は回旋可動域に優れていますが、腰椎は回旋可動域に乏しい形状にあります。

これらのことから、胸腰椎移行部では、胸椎と腰椎という2つの機能・構造の違いによる力学的ストレスが加わりやすいと言えます。また、体幹筋力が低下することで、その負荷は増大する傾向にあるでしょう。

加齢により体幹筋力低下が起きることは、脊椎圧迫骨折が起きやすくなる一つの要因と言えそうです。

それに加え、次に述べる骨粗鬆症による影響がさらに大きな要因となります。

骨粗鬆症による影響

骨粗鬆症の患者さんの約8割が女性と言われています。

その理由は、女性が閉経後に女性ホルモン分泌量が低下することで、急激に骨密度が低下していくるからです。女性ホルモンの一つであるエストロゲンは骨代謝に深くかかわっており、骨吸収を抑える働きがあります。

これは、脊椎圧迫骨折が女性に多い理由の裏付けとなっています。

また、糖尿病や関節リウマチ、副甲状腺機能亢進症などの内分泌疾患があると、骨粗鬆症が進行しやすい傾向にあります。

骨粗鬆症の早期発見が鍵

脊椎圧迫骨折を予防するには、骨密度検査が重要です。

骨粗鬆症検診などでは、主にYAMを用います。

YAMとは、Young Adult Mean(若年成人平均値)のことであり、20~44歳の健康成人の骨密度を100%としたときに、現在の自分の骨密度が何%であるかを比較した数値となります。

基準値は80%以上となりますが、これが70%未満の場合は骨粗鬆症の可能性が高いと言えます。また、低骨量(骨密度がYAMの80%未満、あるいは脊椎 X線像で骨粗鬆化がある場合)が原因で生じた、脆弱性骨折(転倒や、わずかな外力で生じた骨折)があれば、それも骨粗鬆症の診断基準となります。

逆に言ってしまえば、脊椎圧迫骨折が起きてから初めて骨粗鬆症が分かる方も多くいらっしゃるわけです。

転ばぬ先の杖と言いますか、骨折する前の検査が重要な理由がお分かりいただけるかと思います。

脊椎圧迫骨折の治療

脊椎圧迫骨折の治療における基本は保存療法ですが、場合によっては手術療法が選択されることもあります。

ここでは保存療法についての流れや、リハビリについてご紹介します。

急性期について

急性期では、椎体のさらなる圧潰の予防が重要になります。

受傷してから2~4週間の間は、骨が癒合する段階にあるので容易に変形します。痛みも強い時期なので、鎮痛剤などの薬物療法を行いつつコルセットを着用して安静にしておく必要があります。

圧迫骨折は、仮骨形成によって修復されるのに8〜12週かかります。

急性期における理学療法士の役割

急性期においては、骨折部に荷重と離開のストレスを繰り返すことで骨癒合が遷延される可能性があり、さらには偽関節に進む可能性があるので注意が必要です。

そのため理学療法士に対して、圧潰のリスクを理解した上で、必要に応じて動作指導や良肢位を保つ指導を求められることがあります。

特に、寝返り・起き上がり動作では、骨折部にストレスが加わらないように、特に前屈・回旋動作が過度に行われていないかどうかを分析する必要があります。

通常の動きではどの相で負担がかかりやすいかを、前もって理解しておくと良いかもしれません。

【寝返り動作】から【起き上がり動作】について。動作分析のポイントを解説します。

安静姿勢としては、胸腰椎を過度に屈曲させない程度の側臥位や、背臥位におけるギャッジアップは、過度にならないよう30°程度までが良いでしょう。

脊椎圧迫骨折のリハビリについて

ベッドサイドにて

骨折による強い疼痛は1〜2週間ほどで徐々に緩解してきます。

特に高齢者の長期臥床は廃用症候群につながりますので、早期からのベッドサイドの理学療法が必要になります。

患部に負荷がかからないように注意しながら、愛護的に関節可動域訓練などを行います。

離床から退院まで

画像診断にて骨癒合が進んだと判断されれば、患者さんの状態に応じて、コルセット着用下において、動作を伴うリハビリが開始されることになります。

この時期に評価すべき項目は、廃用性症候群による機能低下です。筋力低下や関節可動域は、安静期間に応じて問題が生じる可能性が高くなります。

それらの廃用による機能障害に対するリハビリと合わせて、ADLの拡大や歩行訓練を行うことになります。

退院後のリハビリ

急性期を過ぎた退院後は、回復期リハビリテーション病棟に移るか、自宅へ帰ることになります。自宅へ帰った後に、近隣の外来の整形外科へ通うという選択もあるでしょう。

そこでのリハビリでは、状態に応じて医師の許可の元にコルセットを外し、積極的な運動療法を行うことになるでしょう。

ここでは、主に再発予防の意味でのリハビリを行うことになります。圧迫骨折が一度起きると、上下に隣接する椎体の圧迫骨折リスクが増加すると言われています。よって、再発予防の運動療法を行うとともに、骨粗鬆症に対する管理を十分に行っていく必要があります。

リハビリのポイント

圧迫骨折のリハビリのポイントは、次の1つだけです。

骨折部への負担を減らすための体作り

これに集約されます。

そのため、リハビリにおいては、主に次のことを意識することが重要です。

  1. 肩甲帯・胸郭の可動性改善
  2. 股関節の可動性改善と筋力強化
  3. 背筋を中心とした体幹トレーニング

これらは、コルセット着用指示が出ている期間は、必ず着用下で行います。通常は2〜3ヶ月で、痛みがなければ医師の指示によってコルセットは外します。

1:肩甲帯・胸郭の可動性改善

骨折部位への負担として、回旋ストレスが挙げられます。

前述したように、胸腰椎移行部では回旋ストレスにさらされやすい構造をしています。そのため、そのストレス軽減を図る必要があるわけです。

その一つとして、肩甲帯周囲~胸郭の可動性の改善が挙げられます。

僧帽筋・肩甲挙筋・菱形筋・前鋸筋・肋間筋など、これらの筋の柔軟性を評価し、必要に応じてストレッチを行っていく必要があります。

運動療法:ストレッチポール

肩甲帯~胸郭の可動域改善には、ストレッチポールが有効です。

ストレッチポールがなければ、クッションなどを胸腰背部に当てて胸郭を広げるようなストレッチをすると良いでしょう。

2:股関節の可動性改善と筋力強化

もう一つ骨折部位への負担として、屈曲ストレスが挙げられます。

股関節と腰部は、兄弟みたいなものです。そのため、ヒップ・スパインシンドローム(hip-spine syndrome)という言葉があるくらいです。

圧迫骨折が起きると、ただでさえ脊椎の前方体積が減少するために脊柱は後弯変形を生じやすくなります。後弯変形は、屈曲ストレスとして、さらなる椎体の圧迫へとつながります。

それを予防するために重要なのは、まずは腸腰筋の存在でしょう。

腸腰筋は、腰椎の生理的前弯を維持するために必要不可欠な筋肉です。過度な前弯は良くないですが、圧迫骨折による後弯変形防止のためには、ぜひともトレーニングしておきたい部分です。

運動療法:骨盤傾斜運動

トレーニング方法としては、骨盤傾斜運動がおすすめです。

端坐位を取り、骨盤前後傾中間位から、骨盤を前傾させていきます。うまくできなければ、補助しても良いかと思います。

3:背筋を中心とした体幹トレーニング

背筋トレーニングといっても、動きを伴うものでなくても結構です。

重要なのは、骨折部である胸腰椎の安定なので、いわゆるアウターマッスルのトレーニングというよりも、インナーマッスル(最近ではディープマッスルとも言うそうですが)のトレーニングです。

ここで重要なのは、なんといっても多裂筋と腹横筋でしょう。

多裂筋は、腰背部の固定筋として非常に重要です。それは、筋断面積を見ても分かります。特に下位腰椎レベルにおける多裂筋の断面積は非常に広くなっています。これも、脊柱の後弯予防に重要なものでしょう。

特に、圧迫骨折後の患者さんのMRI画像を拝見すると、多裂筋が脂肪変性している様子がよく見られます。これは普段全然使えていない証拠です。

また、多裂筋だけでなく、腹横筋との協調的な筋収縮は、コルセットの役割を果たすことで、骨折部位のストレスを軽減させます。

そのための方法を2つご紹介します。

運動療法➀:セラバンドを用いた方法

骨盤をやや前傾位で保持させ、セラバンドは上では上肢で把持し、また下では足で踏んで押さえます。

そのまま、体幹の伸展が起きない程度まで上肢を挙上させていきます。大体90°程度で十分です。

ここで重要なのは、多裂筋も腹横筋もインナーマッスルとして固定筋とした働くために、強い負荷は必要ないということです。

強い負荷は、逆にアウターマッスルを働かせてしまうことになるので注意が必要です。

運動療法➁:バランスボールを用いた方法

バランスボールを利用した方法では、坐位にてバランスボールを上肢で押さえ、前方へ転がしながら体幹筋を収縮させる方法があります。

その際には、体幹の屈曲動作が起きていないかに注意する必要があります。

※胸腰椎屈曲が起きていないか注意

まとめ

長くなってしまいましたが、圧迫骨折についてご紹介してきました。

最重要課題は、骨折部の圧壊防止です。その後に、予防のためにリハビリをどのようにするのかということが重要となります。

医師と相談をしながら、骨折後にはより良いリハビリを行っていけるといいですね。

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