脳性麻痺のリハビリ治療で重要な【二次障害】変形の理解について

僕の勤務する整形外科には、脳性麻痺の子どもさんが多く患者さんとして来院されます。それにより、僕自身も何年にも渡り脳性麻痺のリハビリに携わる機会をいただいています。

一般的に脳性麻痺のリハビリは“運動発達の促進”を行うことを指す場合が多い傾向にあります。これは神経からみたリハビリ治療であり、ファシリテーションテクニック(神経生理学的アプローチ)とも呼ばれ、有名なもので言えばボバース法やボイタ法などがこれに当たります。

しかし、神経的なアプローチでの改善は、出生から10歳前後までと言われています。その時期付近から、二次障害により筋肉や関節が硬くなり、変形が生じてきます。

ここでは、そのような二次障害についてご紹介していきます。

脳性麻痺とは

脳性麻痺とは、受胎から生後4週間までに生じた脳の障害による『運動と姿勢』の異常のことを指します。そして、その症状は2歳までに表に出てきます。

発生率は約2,2人/1000人であり、周産期医療の発達に伴って発生率は減少傾向にありましたが、1981年以降は増加傾向にあります。これは、医療の進歩により未熟児の死亡率が低下していくことで、未熟児による脳性麻痺が増えているからであると考えられています。

脳性麻痺には、以下の分類があります。

原因割合特徴
痙直型(四肢麻痺)錐体路障害全体の約70%筋緊張の亢進
アテトーゼ型新生児黄疸が主体全体の約20%不随意運動
失調型小脳の障害全体の約5%運動の調整機能障害
混合型上記3つの混合タイプ

学童期のリハビリで重視すべきこと

学童期に入ると、身体はどんどん成長していきます。ただでさえ、骨の成長に伴い相対的に筋は短縮位となりやすい傾向がある上に、筋肉の過緊張の影響により拘縮は進んでいきます。

また、低緊張部位は重力に負けてしまい、骨の変形が進んでいきます。

これがいわゆる二次障害です。

リハビリでは、これらの二次障害がどのように起きるかを予見し、予防的に何をするべきかを理解することから始まります。

4大変形・拘縮

この項目では、脳性麻痺についての二次障害について非常に深く考察されている、こちらの書籍を参考にさせていただきました。

著者の北村晋一氏によると、脳性麻痺の4大拘縮・変形は以下の通りです。

  1. 股関節脱臼
  2. 側弯
  3. 胸郭変形
  4. ウインドスエプト変形

1:股関節脱臼

股関節脱臼は、内転筋の過緊張が最も大きな原因です。交叉伸展(はさみ足)により、股関節側方脱臼が多くなります。内転筋と大腿四頭筋の緊張を「伸展共同運動」と呼びます。痙直型では、長内転筋や薄筋などに加え、内側ハムストリングスも緊張亢進することで、交叉伸展を助長している傾向があるように感じています。

リハビリでは、定期的な股関節周囲筋を中心とした筋緊張コントロールとともに、姿勢反射である対称性緊張性頸反射(STNR)の影響を考慮した頭部のアライメントの調整を行います。STNRでは、頭が後ろに反ることで下肢の伸展が強くなりますので、頸部の屈曲誘導を行うようなアプローチも有効です。

また、最近では股関節を良い位置に保つように調整ができる座位保持装置が各メーカーから発売されています。座位保持装置とは、体幹や四肢の機能障害により、座位保持能力に障害がある場合に用いられるものです。

2:側弯

側弯の原因となるのは、姿勢変換が困難なことに加えて、筋肉の萎縮や左右どちらか一側の緊張が優位になっていることが挙げられます。また、股関節脱臼により坐位時の骨盤傾斜が左右どちらかに傾いていることで、腰椎から始まる側弯も見受けられます。

その外科的治療には、脊椎インストゥルメンテーション手術をはじめ、整形外科的選択的痙性コントロール手術なども行われています。

リハビリにおいては、坐位姿勢の調節のために、車いすシーティングを重視します。また、脊柱起立筋や腰部多裂筋の過緊張部位のリラクセーションを行います。それでも重力により側弯が進む可能性があるときには、医師の処方のもとに側弯矯正装具などを用いることもあります。

3:胸郭変形

胸郭変形は、不良な呼吸運動パターンとともに、体幹低緊張が原因となる傾向にあります胸郭変形には、胸部の中央が陥没する漏斗胸や、胸郭が扁平化する扁平胸郭などがあります。これらは、腹筋群のバランスの崩れや、背臥位での重力による影響、また吸息と呼息のアンバランスによる影響により生じます。

リハビリでは、定期的な体位変換の指導や、腹筋群や肋間筋といった呼吸筋のストレッチや促通を行います。一度変形が起きると、不可逆的なケースが多いので、予防が非常に重要となります。

4:ウインドスエプト変形

ウインドスエプト変形とは、両下肢が横倒れとなり、股関節の一側は外転し他側は内転します。そして両者は互いに平行肢位となり、内転位側には股関節の脱臼を伴うこともあります。

これを、「風に吹かれた股関節変形」という意味でwindswept hip attitudeと呼びます。

この肢位が完成してしまうと、寝返り誘導が困難となります。リハビリでは、股関節の可動性改善はもちろんのこと、腰部の筋緊張コントロールを目的とした運動療法を行います。ウインドスエプト変形によって姿勢変換が困難になった場合には、側弯や胸郭変形、股関節脱臼予防のために十分な時間をリハビリに費やす必要があります。

まとめ

ここまで脳性麻痺の二次障害による変形・拘縮の出現様式を見てきました。

あらかじめどのような障害が起きる恐れがあるのかを理解し、リハビリ等に活かしていただければと思います。