大腿骨頸部骨折後の手術療法とリハビリについて

大腿骨頸部骨折は、高齢化する日本において頻度の高い骨折であり、しっかりと治療しなければ、寝たきりの原因にもなるほど身体機能へ影響を与えることもあります。

この骨折は高齢の女性に多く、糖尿病や骨粗鬆症、運動量の減少などの背景があると、さらにリスクが増加します。その受傷機転のほとんどは転倒により起こり、年間10万人以上の方が骨折すると言われています。

ここでは、大腿骨頸部骨折の病態と手術方法、そしてリハビリについて言及していきます。

 大腿骨頸部骨折の特徴

大腿骨頸部周囲での骨折は、それが関節包内での骨折なのか、関節包外での骨折なのかで大きく異なります。

いわゆる大腿骨頸部骨折は、関節包内での骨折を指します。関節包外での骨折には、大腿骨転子部骨折や大腿骨転子下骨折などがあります。

大腿骨近位部の骨折は、大腿骨頚部内側骨折(関節包内での骨折)と大腿骨頚部外側骨折(関節包外での骨折)とに分類され、両者を合わせて大腿骨頚部骨折と呼ぶこともありますが、近年の欧米文献では、大腿骨頚部内側骨折を大腿骨頚部骨折、大腿骨頚部外側骨折を転子部骨折・転子間骨折などと呼ぶことが多いようです。よって、ここではそれに倣って述べていきたいと思います。

まとめると、

名称骨折部位骨折の種類
いわゆる大腿骨頸部骨折関節包内側大腿骨頸部内側骨折
大腿骨転子部骨折
大腿骨転子下骨折など
関節包外側大腿骨頸部外側骨折
となります。紛らわしいので注意が必要です。

この2つの間で何が違うのかというと、癒合しやすいかどうかが異なるわけです。

その理由は以下の通りです。

  • 骨膜の存在の有無
  • 骨頭への栄養血管の損傷の有無
  • 荷重によるせん断力の加わり方の違い

骨膜の役割

骨折が生じた際に、その修復のためには局所的に骨の前段階の組織が作られ、これを仮骨と呼びます。

膜性骨化と呼ばれる修復過程では、直接骨膜から骨芽細胞により仮骨が作られていきます。

関節包外では骨膜が存在しますが、関節包内には骨膜が存在しないため、膜性骨化による仮骨形成が起きません。また、滑液が骨折部に流入してくるため、骨癒合が阻害されます。

骨頭への栄養血管

骨頭への栄養血管で重要なのは、➀内側大腿回旋動脈、➁外側大腿回旋動脈、➂閉鎖動脈(この分枝が、大腿骨頭靭帯動脈となります)です。その中でも特に重要なのが内側大腿回旋動脈であり、そこから分岐する上支帯動脈と下支帯動脈らが損傷を受けると、その血流は途絶え、骨頭壊死や骨頭圧潰につながっていきます。

これらは、大腿骨頭が折れた後に、どのくらい転位(ずれてしまったか)があるかによって、これらの血管は損傷を受けます。大腿骨頸部骨折では、この転位が起きやすい原因がありますので、それを次に述べていきます。

せん断力

大腿骨頸部骨折は骨折線の入り方で癒合に差が生まれます。なぜなら、骨折線が垂直に近いほど、せん断力(はさみなどを使って挟み切るような力の加わり方)が加わることで、骨折面同士の適度な圧力が加わりにくくなるためです。

 大腿骨頸部骨折の分類

大腿骨頸部骨折の分類として最もよく使われるものが、Garden(ガーデン)分類です。これは、大腿骨頚部骨折時の骨性・軟部組織の連続性と、転位の程度により分類されたものであり、stage I~IVの4段階あります。

stageⅠ:不完全骨折であり、内側で骨性連続が残存しているもの。

stageⅡ:完全骨折、最小転位(軟部組織の連続性は残存している)であり、主圧縮骨梁の方向性に乱れがないもの。

stageⅢ:転位のある完全骨折であり、Weitbrecht(ヴァイトブレヒト)支帯と呼ばれる血管を含む強靭な支帯の連続性は保たれていることから、転位した骨頭は後方へ大きく回転転位します。

stageⅣ:転位を伴う完全骨折であり、Weitbrecht支帯の連続性も無くなり、骨頭への結構は途絶えます。また、この支帯にけん引されることがないので、stageⅢのように、骨頭が回転転位しません。

 

その他の分類としては、Pauwels(パウエルズ)の分類があります。これは、骨折線の入り方による分類であり、せん断力の加わり方を見る時に有用です。

手術療法

大腿骨頚部骨折に対する手術療法としては、骨接合術と人工骨頭置換術の2つの治療法のいずれかが行われるのが一般的です。

どのように手術方式が決まるかというと、大腿骨頸部内側骨折では人工骨頭置換術、大腿骨頸部外側骨折では骨接合術になることが多いわけですが、必ずしもその限りではありません。重要なのは、先ほどのGarden分類などにより、骨折部がどの程度転位しているかが重要となります。その理由としては、転位があればあるほど、骨接合術で治療した後の大腿骨頭壊死などの合併症が生じやすいと言われているからです。よって、転位が少なければ骨接合術、転位が大きければ人工骨頭置換術が適応となるケースが多いです。

人工骨頭置換術

人工骨頭の種類には、モノポーラ型とバイポーラ型があります。どのように違うのかというと、動く部分が1ヶ所か2ヶ所かということです。従来のモノポーラ型では、ヘッドが一体となっていて、1ヶ所で動くためヘッドと臼蓋との間で摩擦が生じやすく、炎症を引き起こしやすいといった弱点がありましたので、その後、2ヶ所動くことによって衝撃や摩耗を起きにくくしたバイポーラ型が開発されました。

人工骨頭置換術では、どこを手術で切るかが重要となります。主に前方アプローチと後方アプローチがあり、後方アプローチでは術後、股関節屈曲・内転・内旋にて脱臼することがあり、その発生頻度は2~7%と言われています。前方アプローチでは、脱臼発生率は後方アプローチよりも低くはありますが、全くないわけではなく、股関節伸展・内転・外線にて脱臼危険性があります。

 骨接合術

骨接合術では、人工骨頭置換術のように脱臼する危険はありませんが先ほど述べたように骨圧壊や骨壊死、また偽関節などが生じるリスクがあります。

骨接合術の種類には、髄内釘と呼ばれるガンマネイルや、CHS(Compression HIp Screw)、Hansonピンなどに加え、近年ではラグスクリューなどのようにスライディング機構を有する内固定材を使用することにより、骨折部に適度な圧迫力を加えて安定させる方法もあります。

大腿骨頸部骨折術後のリハビリ

人工骨頭置換術後の場合には、生活指導にて脱臼肢位の注意指導を行うことがまずは重要です。一般的には、術後3か月までは脱臼リスクが高いと言われていますので、その期間、術式に応じた脱臼リスクに配慮して生活していただく必要があります。

リハビリの手順としては、手術を行う件数の多い病院では、大概はクリニカルパス(治療などに関するスケジュール表)があり、それに沿って進められます。

クリニカルパスは病院ごとに多少異なりますが、術後すぐにベッドサイドで可能な関節可動域訓練や筋力訓練(SLRやQuadセッティングなど)を行い、早期離床や早期歩行を促すことが求められます。特に、人工骨頭置換術では、術後翌日から立位訓練を始める場所が多いです。

重要視される股関節外側支持組織

大腿骨頸部骨折術後のリハビリで特に重要とされるのが、中殿筋・小殿筋や大腿筋膜張筋といった外側支持組織です。

これはなぜかというと、手術侵襲により特に筋力低下が起きやすいからだと言われています。前方アプローチにしろ、後方アプローチにしろ、大腿筋膜張筋や中殿筋の筋膜は切開される場合が多く、その筋力回復の前に加重訓練を行うと、過負荷による筋スパズムや筋の微細損傷により疼痛が生じることがあります。よって、初期の加重訓練の際には、健側上肢で体重を支持するなどの工夫により、股関節外転筋への配慮を行いながら、疼痛の範囲内で運動療法を進めるべきでしょう。

その他、生じる可能性のある問題

股関節周囲筋の筋力が低下した状態からのリハビリとなるので、何かしらの痛みにより股関節周囲筋に疼痛を生じることがあります。それにより、神経的な症状を呈することが珍しくありません。

例えば、腸腰筋や股関節外旋筋の過緊張により、大腿神経や閉鎖神経、坐骨神経といった神経的な問題が起きることもありますので、そのような場合には丁寧な評価により、早期解決が必要です。

まとめ

大腿骨頸部骨折は稀な骨折ではない分、データも豊富であり、クリニカルパスもしっかりとした病院が多い印象があります。しかし、だからこそ、盲目的なリハビリにならないように、個別にしっかりと評価・治療を行う必要があると感じています。