股関節前方が痛いときに注意すべき2つのこと

整形外科でリハビリを担当していますと、股関節前方が痛いという訴えを持っていらっしゃる患者さんが少なからずいらっしゃいます。

その中には、臼蓋形成不全や変形性股関節症、骨折などの疾患名がつく方もいらっしゃいますが、とりわけレントゲンやMRI画像にて問題がない場合もあります。
ここでは、そのような痛みを抱えている方のために、股関節前方の痛みを誘発しやすい動作や、仕組みをリハビリの立場からご紹介したいと思います。特に、整形外科などで、画像上は大きな問題がありませんと言われた方に対してです。

皆さんが、日ごろ注意すべき点があるかもしれません。

股関節の仕組み

股関節は、分類としては臼状(きゅうじょう)関節と言います。

これは、股関節が臼(うす)のような形をしていることにちなんでいます。

このような臼を思い描いてみて下さい。

カップのように、関節がはまり込む部分は深くなっています。これは、股関節が高い可動性を持ちながらも、体重を受けなければいけないので、このようにしっかりと支えることができるようになっているのです。

同じような関節としては、肩の関節があります。

肩は球(きゅう)関節といって、股関節と非常に似た関節です。しかし、決定的に違うことは、体重を受ける機会が少ないので、カップの部分がとても浅くなっており、その分可動性に優れていることです。

よって、股関節というのは、同じ球関節の仲間でも、可動性を犠牲にして支持性に特化した関節とも言うことができるでしょう。

股関節前方にある組織

股関節前方には、大きく以下の軟部組織と呼ばれるものがあります。

  • 関節包
  • 関節唇
  • 腸腰筋
  • 恥骨筋
  • 大腿直筋
  • 大腿神経
  • 腸骨大腿靭帯
  • 恥骨大腿靭帯

挙げだすとたくさん出てきます。その分だけ股関節の前方に関しても痛みの種類は多いわけで、それに加えて腰からの症状もあったりします。

ですので、痛みの部位を患者さん自身で特定することは非常に難しいところではあります。

しかし、共通して注意すべきことがあります。

それは、股関節を曲げる動作において、骨同士がぶつかりやすい動きがあることです。

股関節を曲げたときの骨の動き

よくある訴えは、「しゃがむと痛い」「座って足を組むと痛い」「車の乗り降りで痛い」といったケースです。

このように、股関節を曲げるような動作には、実は2種類の動きのパターンが存在します。

まず1つ目です。

股関節を、このようにまっすぐに曲げる方法です。

正常であれば、これだけで痛みが生じることはありません。しかし、実はこの動きは、大腿骨(脚の骨)と臼蓋前方(骨盤の前縁)がぶつかりやすい傾向があります。

もし、先ほど挙げたような股関節前方の軟部組織に何かしらの問題が生じていた場合、この動きでは痛みが出ることがあります。

 

その判断基準の一つとして、2つ目の曲げ方をしてみましょう。

これはちょっと極端ではありますが、いわゆる“ガニ股”での曲げ方です。

1つ目の曲げ方と比べてみて下さい。これだと、大腿骨と臼蓋前方の衝突は回避されます。専門的には、『頸部軸屈曲』と言います。

もし2つ目の股関節を少しでも開いた状態で曲げた際に痛みが出ないような時には、やはり前方の何かしらの組織に問題がある可能性があります。

近年、FAI(Femoroacetabular impingement)=“股関節インピンジメント”といい、骨盤側や大腿骨の形に生まれつき形態異常がある場合、股関節前方にて、股関節前方組織(とりわけ股関節唇と呼ばれる組織)が損傷するということが分かってきました。

しかし、この病態であれば、通常はレントゲン画像上で問題が分かりますので、指摘を受けることがあるかと思われます。

ともかく、FAIまではいかなくても、股関節前方には、このように骨の形状上、前方の問題が起きやすい傾向があるということです。

何を注意すべきか

➀痛みの出る動作をしない

まずは、当然ながらしゃがみ込んだりする際に痛みがあれば、痛みの出る動作を控える必要があります。下のものを取る動作などでは、問題のない方を曲げて立膝を立ててしゃがむなどの工夫は必要でしょう。

また、後に述べますが、股関節を多少開いて曲げるようにすることも効果があることがあります。

➁お尻の筋肉を柔軟に保つ

また、股関節後方の筋肉の柔軟性を改善させることも重要です。

先ほどの1つ目の動作を後ろから見てみましょう。

この曲げ方において、股関節後方の筋肉では、ある程度伸張性が求められます。そうでなければ、筋肉の押しやられて股関節は前方へ偏位してしまうことがあります。そうなれば、余計に股関節前方での衝突は大きくなりやすく、痛みが出る可能性も高まります。よって、お尻の筋肉を柔軟にするために、軽めの負荷で、サドルを高くして自転車などに乗ることなどは効果的です。また、水泳なども良いかと思われます。筋肉は、軽く使ってあげた方が硬くなりにくい性質があります。

 

ちなみに、2つ目の動作を後ろから見てみましょう。

いわゆる“ガニ股”での曲げ方です。この曲げ方では、股関節後方の筋肉などの組織の伸張性は1つ目の曲げ方よりは必要となりません。

よって、股関節前方が痛い方は、股関節を曲げる際には少し開くようにして曲げると痛みが軽快するケースがあります。

まとめ

今回ご紹介した例は、あくまでも大きな問題がないと病院で判断された方のためのものです。

痛みが続いたり、日ごとに増悪するような方は、再度病院で検査してみることをお勧めいたします。