【炎症】の基礎知識とRICE処置について。理学療法士がリハビリを行う上で理解しておくべき内容。

運動器疾患における急性期のリハビリの多くは、炎症との戦いといっても過言ではありません。炎症を理解することは、痛みの早期コントロールや、リハビリ期間の短縮につながります。

炎症の病態は実に様々ですので、一概に対応の答えは出ないのですが、炎症と向き合うためには、急性期のRICE処置やその生理学的な作用を理解することが助けになります。

ここでは、そのような内容について、ご紹介させていただきます。

炎症とは何か?

まず理解しておくべきこととして、『炎症』とは広い意味で使われており、特定の病態を示すものではないいうことです。

炎症とは、その字の通り、炎が燃えているかのように、“患部が赤く腫れあがって熱をもっているような症状”を表しているに過ぎません。

人体組織が損傷など有害刺激を受けると、体の防御・修復反応として炎症が生じることになります。

炎症の5徴候

炎症による代表的な症状は、次の5つに集約されます。

炎症の5徴候
・発赤
・熱感
・腫脹
・疼痛
・機能障害

炎症の程度によっては、全てを認めるケースばかりではありませんが、炎症が起きているかどうかを判断するためには、これらの現象の有無を確認することは重要です。

炎症のメカニズム

炎症の5徴候がなぜ起きるのかということを、急性炎症が起きたと仮定した上で見ていきましょう。

発赤・熱感

組織に損傷を受けると、生体反応として修復・防御の観点から、局所の血流が増加します。これは、それだけ損傷部位で必要となる細胞や栄養が増えるからです。

要するに、援軍が必要になるわけです。

血流が増加すれば、それが発赤・熱感として現れてきます。

腫脹

さらに、血漿成分(血液に含まれるアルブミンなどのタンパク質)が滲出していくために、毛細血管の透過性が増大します。これは、ヒスタミンなどの働きによって、血管内皮細胞の接合部が開くことで可能となります。

通常は血管外に出ることのない、タンパク質を含んだ血漿成分が血管の外に滲出することで腫脹が起きます。

 疼痛

血管内皮細胞の隙間が開くことで、血漿成分以外にも、好中球などの白血球も血管外へ出ていきます。
白血球は、炎症が起きている損傷部位に向かって遊走し、免疫反応として外傷などで組織の中に侵入してきた細菌や、異物を貪食していきます。

疼痛は、損傷した組織や、炎症部位に滲出した白血球などから放出される炎症メディエーターという化学物質により引き起こされます。

しかし、この炎症メディエーターにより、血管拡張や血管透過性亢進が起きることから、疼痛は体の修復過程において必要なものであるということが分かります。

機能障害

腫脹があれば可動域の制限などにもつながりますし、疼痛があれば筋・関節は機能障害を起こします。

さらに、先ほどの炎症メディエーターは、侵害受容器(ポリモーダル受容器)を刺激するので、痛覚閾値の低下が起きます。

“痛みを感じやすい”ということは、心理的にも影響を与えますので、その意味でも機能障害は生じていると言えます。

炎症の対処法

RICE処置とは?

急性炎症の対処法として有名なのは、RICE(ライス)処置です。

RICE処置とは、以下の頭文字をとったものです。

  • R:Rest(安静)
  • I:Icing(冷却)
  • C:Compression(圧迫)
  • E:Elevation(挙上)

いわゆる、炎症を抑える応急処置のことです。

RICE処置はなぜ必要なの?

RICE処置とは、炎症を抑えるためのものです。

しかし、ここまで見てきたように、炎症とは生体における正常な反応であり、外からの刺激に対して組織を守るためにあります。

そのような炎症を抑えてしまって良いのでしょうか?

その答えは、RICE処置の目的が二次障害を予防するということにあります。

炎症が起きると、血種が出現することで血流が遮断されたり、細胞の組織代謝が亢進することで、その部位の酸素需要量は増加します。

その影響で、周辺組織では酸素が欠乏し、二次損傷を引き起こすことになります。

RICE処置では、炎症を抑えることで二次損傷を予防し、局所の疼痛閾値を上げることに貢献します。

RICE処置の実際

Rest(安静)

炎症による組織修復の際に、さらなる侵害刺激を加える可能性のある運動などは控えるべきです。

基本的には、横になるのが良いでしょう。

外からの刺激が組織損傷を拡大させれば、ヒスタミンやブラジキニンといった発痛物質はさらに増加することになります。

また、運動により血流が増加しますので、炎症がさらに拡大する可能性もあります。

Icing(アイシング)

アイシングの目的は、腫脹を抑制することと、疼痛閾値を上げることです。組織温度を下げることで、代謝が下がり、血管透過性や血管の拡張を抑えることができます。

アイシングでは、アイスパックや氷水を使用します。

応急処置としてのアイシングは、受傷後48~72時間継続します。逆に、72時間以上継続する必要はありません。感覚がなくなるくらいまでアイシングを行い、感覚が戻ったらまたアイシングを施すということを繰り返します。凍傷を防ぐため、極端に低温のものは使用しないこと、また30分以上連続で冷やさないように注意してください。

通常は、15分~20分程度のアイシングが一般的です。

Compression(圧迫)

適度な圧迫力を加えることは、特に腫脹をコントロールすることにつながります。

圧迫には、バンデージや伸縮性包帯を用います。効果を高めるために、局所的にスポンジを当てた状態でそれらを巻くこともあります。

基本的には、炎症部位だけではなく、全体を巻くようにします。例えば、足関節の捻挫などによる炎症の場合には、遠位の足趾から順番に心臓の方に向かって巻いていきます。

Elevation(挙上)

心臓より高い位置に患部を挙上をすることによって、重力を利用して受傷部の腫脹を軽減していくことができます。

例えば、先ほどの足関節捻挫の例では、下腿をクッションなどで持ち上げた肢位とします。

まとめ

炎症の対処法のRICE処置は有名ですが、炎症の特徴を理解した上で行うのと、理解しないで行うのでは、リスクも効果も異なります。

生理学的な作用を念頭に置いた上で、適切な炎症管理を行う必要があります。

これらのことを理解することで、応用的に様々な炎症による病態に対応することが可能になってきます。特に、痛みがメカニカルな問題なのか、炎症によるケミカルな問題なのかを鑑別することは、急性期のリハビリにおいては必須のスキルと言えます。