棘下筋(きょくかきん)の起始停止・神経支配・作用とリハビリ応用について

棘下筋についての基本的な情報はこちらです。

起始:肩甲骨棘下窩

停止:上腕骨大結節の中面

神経支配:肩甲上神経(C5,C6)

作用:棘下筋の作用は、肩の肢位によって異なります。詳細は以下の通りです。

肩関節外旋作用棘下筋は、小円筋とともに肩関節外旋に働きます。
肩関節の下垂位では、横走繊維である棘下筋上部の繊維束が優位に働きます。
肩関節90°外転位では、斜走繊維である棘下筋下部の繊維束が優位に働きます。
肩関節水平伸展作用肩関節屈曲90°の肢位では、棘下筋は水平伸展として働きます。
これは、作用するベクトルが変化するからです。

さらに棘上筋について詳しく知りたい方は、以下の目次より進んで下さい。

 英語表記

棘下筋の英語表記は、次の通りです。

Infraspinatus muscle

略して、ISPと呼ぶこともあります。

棘下筋の概要

軸回旋について

棘下筋は、棘上筋や小円筋、肩甲下筋とともに、回旋筋腱板を構成する筋肉の一つです。回旋筋腱板の中で、棘下筋は唯一表層にある筋肉であることから、筋腹を直接的に触れることが可能です。

棘上筋が働くとき、肩は外旋するわけですが、これは水平面における軸回旋となります。棘上筋の収縮により、下の図のように、副運動として、青色の矢印のように、上腕骨頭は関節窩上を後方に転がりながら、前方へ滑ります。

その際には、反対側にある肩甲下筋が伸長されることで、緑色の矢印のようなベクトルの力が生まれます。このことによって、骨頭は抑え込まれるような形で軸回旋は安定します。

しかし、棘下筋の拘縮や筋スパズムが強くなれば、青色の矢印の力は強くなり、緑色の矢印による力だけでは負けてしまいます。
そうすると、骨頭は前方へ変位(位置が変わる)してしまうことになります。このことは、『obligate translation』と呼びます。

棘下筋周囲の圧痛ポイント

その他の注目すべき点としては、棘下筋は肩甲骨に広く起始していますが、肩甲頚(関節窩基部のやや細くなった部位)までを覆っていないということです。

上の図の黒の円で記された部分には、棘下筋をはじめ何の筋肉も付着していません。この周囲における棘下筋の深層には脂肪体が広がっていることもあり、拘縮に伴う圧痛ポイントの一つとなっています。

触診

触診では、肩下垂位でも外転位でも、どちらでも棘下筋を触ることができます。

棘下筋の横走繊維である棘下筋上部の繊維束と、斜走繊維である棘下筋下部の繊維束を触り分ける方法としては、次のことが考えられます。

2nd Positionから、水平伸展と外旋運動を分けて動かします。その際に、棘下筋の上と下に指をあてて、収縮の出方を確認します。すると、水平伸展では上方の棘下筋もしっかりと働いていますが、そこから外旋動作を行うと、優位に下方の棘下筋が働いていることが分かります。

リハビリへの応用

投球動作による棘下筋の作用

学生さんなどで、野球肩などで整形外科のリハビリに来院される患者さんは、比較的多くいらっしゃいます。

投球動作に関しては、コッキング期において棘下筋は求心性に働き、フォロースルーでは遠心性に働きます。よって、投球動作を反復していくことで、棘下筋に何らかの損傷が起きる可能性は十分にあります。

コッキングとフォロースルーについては以下の動画をご参照下さい。

投球障害において、どの時期に過負荷が加わっているかを評価するとともに、棘下筋にトラブルが起きていないかを見ていくことは重要なポイントです。

肩甲上神経に関する障害

冒頭で記載したように、棘下筋は肩甲上神経により支配されています。

棘下筋は、バレーボールなどのスパイク動作などによって過負荷が加わると、肩甲上神経の圧迫が生じることがあります。進行すれば、肩甲上神経の絞扼により棘下筋の萎縮を呈することもあるので、注意が必要です。

このような場合には、肩甲骨のアライメント不良が伴っていることがありますので、肩甲上腕関節のみならず、肩甲胸郭関節の動きにも着目する必要があります。

【肩甲胸郭関節へのアプローチ】胸鎖関節と肩鎖関節の理解で肩のリハビリは捗る。

まとめ

棘下筋は、水平面における軸回旋運動にとって非常に重要な組織です。

動作における受傷機転や、神経との関連を交えてリハビリしていくことが重要と言えそうです。特に、スポーツ障害についても棘下筋のトラブルはよく見られますので、スポーツ整形などでリハビリを担当する場合には、特に理解しておく必要があります。