実習でも使える理学療法士による3つの問診テクニック

理学療法士は、実習においても臨床においても、患者さんへの『問診』を避けて通ることはできません。

しかし、問診で何を聞けばよいのかが分からないという相談をよく受けます。

ここでは、問診の役割や具体的な方法について、僕の意見を書かせていただきます。

理学療法士による問診の目的

『問診』というと、すぐにイメージするのは、医師が疾患名をつける際に患者さんの病状や現病歴、既往歴を聞き出すことが思い浮かびます。

しかし、理学療法士の『問診』は、病名をつけるのが目的ではありません。

理学療法の最終的な目的は、患者さんの生活復帰・社会復帰ですので、問診の内容は以下のようなことになります。

  • 生活で困っていることを明らかにする。
  • 生活環境を把握する。
  • 身体の症状を聴取する。
  • 将来的な希望を聴取する。

これらには、それぞれ次のような明確な目的があります。

ゴール地点を明確にする

リハビリを含めた医療というものは、一方的な押し付けを行いません。

訴えもないのに、一方的に「あなたの体は悪いから治療しましょう」とはならないわけです。あくまでも、患者さんの訴えに応じて、そのための治療方法を選択枝として提示し、同意を得た上で治療を行います。

そのためには、相手がどこまでの回復を期待しており、最終的にどんな生活を望むのかを理解する必要があります。

ゴールが分からないのにリハビリをすることはできません。

問題の仮説を立てる

良い理学療法士は、問診に十分な時間をかけます。なぜなら、問診により患者さんの問題点を予測することが可能だからです。

僕が臨床において大事にしている言葉で、次のようなことがあります。

「問診・カルテ情報・画像診断・動作分析だけで問題点が8割予想できていないと、理学療法士は臨床では通用しない」

問題点の仮説を立てるための『問診』のウエイトはかなり大きいと考えています。しかし、それにはいくつかのテクニックが必要です。

理学療法士の3つの問診テクニック

理学療法士が効果的に問診を行うにはテクニックと経験が必要です。

経験は実務をこなしていく以外に方法はありませんが、今すぐ使えるテクニックもいくつかありますので、それをご紹介します。

1:オープン・クエスチョンを使う

オープン・クエスチョンとは、相手に自由に答えさせることのできる質問の仕方です。

どのような人で、何を望んでいるかのゴール地点を明確にするためには、オープン・クエスチョンが適しています

例えば、次のようなものがあります。

  • 「今一番困っていることは何ですか?」
  • 「家族や自宅の構造について教えて下さい」
  • 「痛みを表現してみて下さい」
  • 「リハビリによって、どのようになりたいですか?」 など

オープン・クエスチョンでは、相手のリハビリへのモチベーションが低いとうまくいきません。いかに相手の意欲を引き出していくことができるかが鍵となります。

 

2:クローズド・クエスチョンを使う

クローズド・クエスチョンとは、「はい、いいえ」で答えられる質問の仕方です。

このクローズド・クエスチョンは、問題点を推測することに適しています。

例えば、次のようなものがあります。

  • 「一番辛いのは、膝の痛みということですね?」
  • 「立ち上がるのに、力が入らない感じがしますか?」
  • 「痛みよりはビリビリした、しびれに近いですか?」
  • 「100m歩くと足がだるくなりますか?」 など

ここでは、すでに漠然とした仮説が立ててあるのが理想です。事前情報や画像診断より、どのような問題があるか可能性をリストアップしておき、問診でそれを確認していくといった作業が良いかと思われます。

3:同じ内容を違った角度から質問する

下の写真を見て下さい。同じごみ箱ですが、見る方向によって異なる見え方をします。いくつかの方向から見ることで、全体のはっきりとした形が分かります。

問診もおなじように、一方向からの質問よりも、いくつかの方向から同じ内容の質問をすることが効果的です。そうすることで、相手の訴えや状態が、より明確に理解することができます。先ほどのオープン・クエスチョンとクローズド・クエスチョンに分けて考えてみます。

オープン・クエスチョンの場合

オープンクエスチョンでは、5W1Hを使った質問によって、多方向から質問をします。

5W1HHow(どのように)、Why(なぜ)、What(何が)、When(いつ)、Who(だれが)、Where(どこで)

これを使うと、単に「一番生活に困っていることは何ですか?」という質問であったとしても、

  • 「どのように困っていますか?」
  • 「いつから困っていますか?」
  • 「どんな場所で困りますか?」
  • 「なぜ困っているのですか?」

など、状況に応じて質問の仕方を増やしていくことで、より具体的な状況を把握することができます。

クローズド・クエスチョンの場合

ここでは、変形性膝関節症の診断をされ、膝の内側部に痛みを訴える患者さんがいたとしましょう。膝内側の痛みについての問診は、次のような質問を行います。

  • つっぱる痛みですか?ズキっとする痛みですか?
  • 部位は、ピンポイントですか?広範囲ですか?
  • 痛みが緩和する動作はありますか?
  • 痛みが増悪する動作はありますか?
  • 安静にしていて痛みはありますか?

このように、同じ膝内側の痛みでも、質問の仕方を変えることによって、問題点を推測しやすくします。

まとめ

問診は、学生であろうと臨床家であろうと必須のスキルです。リハビリの方針を決め、問題点を推測していくことを効率化するためには、いかに適切に問診をするかにかかっています。