介護保険制度に関わる市町村の役割

介護保険制度において、国-都道府県-市町村は、連携を図りながらも違った役割を持っています。

国は介護保険制度の大枠を決定し、制度運営に必要な各種基準を設定します。その中には、介護保険制度における財政や理念といった部分までを含めます。介護保険の改正については、基本的に国会において審議されます。

都道府県は、国と市町村間の連携を図る役割があり、広域的に各市町村の支援・監督・介護サービス基盤の整備を担う責任があります。それぞれの市町村が健全な介護保険サービス運営ができているかどうかは、都道府県のバックアップが必須となります。

市町村は、地域に密着した形で介護保険の加入者を支えています。介護保険サービスの必要性が、各市町村によって差があります。高齢者の比率もサービス事業者や社会資源も異なります。できるだけ地域のサービス事業者や要介護者の近い位置にいる市町村が最前線で実務的な役割を担うことが必要となります。

ポイント介護保険では国・都道府県・市町村それぞれの特徴を活かし、適した形で管理運営を行っており、特に地域に密着している市町村の役割が重要

介護保険は社会保険に該当し、主な財源は社会保険料ですが、公費も投入されており、医療保険と同様に、直接金銭を給付する形ではなく、サービス自体を提供するといった現物給付が大部分を占めています。介護保険における市町村の役割を理解することで、どのように介護保険が運営され、公費が使われているかといった実態を把握する手助けとなります。

 市町村の役割

市町村は、介護保険の保険者となります。保険者とは、保険を運営する責任主体であり、これには東京23区といった特別区も含まれます。また、市町村に代わって、地方自治法に定められた特別地方公共団体である広域連合や、一部事務組合などは、小規模の市町村で介護保険者として事業を行うことができます。これは、小規模な市町村では保険財政が安定しないケースもあり、事務処理の面でもいくつかの市町村にまたがって広域的に取りまとめることで効率化にもつながるといったメリットがあります。

市町村の担う役割としては、主に以下のものがあります。

市町村の役割

・介護保険の財政運営に関する事務
・保険料に関する事務
・第一号保険料率の決定
・保険給付に関する事務
・被保険者の資格管理に関する業務
・介護認定審査会の設置等
・要介護認定、要支援認定に関する業務
・地域支援事業・保健福祉事業の実施
・地域支援包括支援センターの設置
・市町村介護保険事業計画の策定・管理
・サービス提供事業者に関する事務。
・事業者、施設への報告命令や立ち入り調査等

市町村の財政管理

介護保険における公費負担割合の内、市町村負担分は定率12,5%となっています。また、介護保険事業運営に関わる事務費においては、市町村の一般会計から介護保険特別会計への繰入が行われます。

また、市町村では保険料に関する事務も行われます。65歳以上の第一号被保険者については、2014年に行われた介護保険制度改正により、9段階の保険料率を定めるための標準段階に新たに見直しが行われ、所得水準に応じた保険料設定が行われています。40歳以上64歳未満を対象とした第二号被保険者については、医療保険の保険料として一括徴収されます。保険料の額は、加入している医療保険者によって異なり、徴収された保険料は、支払基金(社会保険診療報酬支払基金)に納付されます。支払基金は、市町村等からの交付申請に基づいて、介護給付費交付金及び地域支援事業支援交付金を市町村へ交付します。

 保険給付に関する事務

介護保険給付には、大きく分けて介護給付と予防給付がありますが、それ以外にも、市町村が独自に支給する権限を持つ、市町村特別給付というものがあります。どのような人が受給できるのかというと、介護する家族のケガや入院など、特別な理由で区分支給限度額を超えて介護サービスが必要になった際などに、市町村の裁量で給付することができます。

また、実際は国民健康保険団体連合会に委託することが多いですが、介護報酬の審査・支払に関する事務や、償還払いの保険給付の支給、住宅改修費の支給などがあります。

被保険者の資格管理

市町村は、介護保険事業者の請求の審査を目的に、被保険者台帳を作成し、都道府県国民健康保険団体連合会に送付します。これには、介護給付と予防給付を受けている市町村在住の被保険者が登録されており、市町村が管理しています。

また、市町村は被保険者証の発行・更新も行います。

要介護認定、要支援認定に関する業務

介護認定の申請は、申請者が被保険者証を添えて市町村に対して行われます。市町村の職員は、被保険者と面接し、その心身の状況や置かれている環境、現在受けている医療に関する情報を調査します。これらの業務は、都道府県知事の指定する指定市町村事務受託法人へ委託することもできます。面接などで調査した内容は、コンピューターに入れることで一次判定を行います。そしてその一次判定の結果と主治医の意見書を原案として、介護認定審査会にて二次判定が行われ、最終的な要介護度の区分が決定します。

まとめ

ここでは、介護保険における市町村の役割を一部紹介しましたが、市町村の担う役割は介護保険の改正ごとに増加している印象を受けます。それだけ、地域に根差した社会的な介護システムの擁立を国が目指しているということでしょう。

今後は、市町村の委託事業とともに、インフォーマルな社会資源も合わせたシステム化が進むことが求められています。