介護保険の特徴と歴史について簡単にまとめてみた

今ではすっかりと日本に定着し、利用者も続々と増えている介護保険制度。

少子高齢化が進むにつれて、改革が進められています。今から10年後には、今よりもさらに様式を変えているでしょう。

介護保険の最大の特徴は、利用者が自ら選択し、契約していくということです。このような制度に発展した歴史と背景をまとめてみました。

上昇する高齢化率と介護の実態

まず、高齢者の定義です。

高齢者とは65歳以上をいい、65歳以上75歳未満の高齢者を前期高齢者、75歳以上を後期高齢者と呼びます。これは、介護にかかわることだけでなく、例えば医療保険の枠組みの中でも同じであり、例えば後期高齢者医療保険も、この定義にならって75歳以上の方を対象としています。

高齢化は介護保険制度設立当時よりも急速に進んでおり、現代においては、より大きな問題となっています。

平成28年9月時点での人口推計において、総務省の出したデータによると、

  • 高齢者人口は3461万人、総人口に占める割合は27.3%と共に過去最高。
  • 女性の高齢者割合が初めて30%を超える。
  • 日本の高齢者割合は、主要国で最高。

引用:総務省統計局:統計からみた我が国の高齢者(65歳以上)-「敬老の日」にちなんで-

昔は両親と子供とともに、祖父母などが一緒に生活してた、いわゆる拡大家族が多かったのですが、現代においては、核家族化が進んでいます。最も大きな問題は、65歳以上の単独世帯や夫婦のみの世帯が増加しており、“老々介護”と称される高齢者が高齢者を介護するという現実が増えていることです。

それに加え、介護をするために仕事を辞めるという介護離職や、とりわけ実際に介護を行う比率の高い女性への負担が増加しています。

介護保険誕生の背景

介護保険制度は、このような介護を家族だけに依存するのではなく、そのような状態を脱して『介護の社会化』をめざすものです。

「介護保険がない昔の時代はどうしていたのだろうか?」と疑問を持つ方も多いでしょうが、介護保険制度以前にも、老人福祉制度はありました。

その内容としては、市町村がサービスの必要性を判断した上で、“措置”として、ホームヘルプサービスやデイサービス、特別養護老人ホームなどのサービスは提供されてきました。あくまでも“措置”制度なので、利用者がサービスを選択し、自由に決めるということはできませんでした。また、老人医療サービスの方が利用しやすい背景があり、その制度も整っていたこともあり、社会的入院が問題視され、医療保険財政を圧迫していました。

介護保険制度の特徴

介護保険制度は、高齢者介護を社会全体で支えるという理念のもと、2000(平成12)年4月に誕生しました。介護の社会化を目指すことで、家族の負担を軽減し、高齢者自身の将来への不安を緩和させ、お互いに安心して生活できる社会を作ることを目指しています。

介護保険制度の特徴としては、以下のことがまず挙げられます。

  • 応能負担から応益負担へ
  • 措置から契約へ

応能負担から応益負担へ

介護保険制度が始まる以前には、老人福祉制度と老人保健制度により、応能負担としてサービスが提供されていました。応能負担とは、介護サービスを受ける利用者や家族の所得に応じた費用を負担するということです。これは、所得の多い人にとっては、費用が大きくなる傾向にありました。

一方で介護保険制度では、応益負担となり、利用者が受益に見合った一定額を負担するということになりました。これには、国の社会福祉に関する財源の問題が絡んでおり、利用者が一律で一定額を負担することで、社会保障費を抑制する狙いもあります。それでも利用者負担は1割もしくは所得に応じて2割であり、残りの財源は介護保険料と国と都道府県、そして市町村が一定割合で負担しております。

措置から契約へ

応益負担となり、利用者が一定割合の費用を負担してサービスを受けるとともに、介護保険料を支払うことになりました。現行制度では、40歳以上が第2号被保険者、65歳以上が第1号被保険者となっており、介護保険料を負担するのは40歳以上の国民です。

介護保険法には、「必要な保険医療サービスおよび福祉サービスに係る給付を行うため、国民の共同連帯の理念に基づき介護保険制度を設け」という一文があるように、介護保険は社会保険の延長線上といった側面があります。それによって、利用者はサービスを受ける権利があり、介護保険サービス業者との間には“契約”といった形での関係が生まれました。

介護保険制度の見直し

介護保険制度は、制度の見直しが5年に1度行われ、さらに3年に1度介護報酬の見直しが行われます。

2005年度介護保険法改正

2005年度の介護保険法改正では、

  • 明るく活力ある超高齢社会の構築
  • 制度の持続可能性
  • 社会保障の総合化

といった基本的視点のもと、介護予防サービスを重視する観点で、要支援者を要支援1・2に区分し、その2つの境界を流動的にすることで、より早期に効果的なサービスを実現し、介護の重度化を防止しようとする取り決めが行われました。

また、施設給付の見直しとして、住居費用や食費の見直しが行われ、居住費や食費も利用者負担として改められました。しかし、その一方では、低所得者の費用負担軽減として特定入所者介護サービス費が新設されました。

また、あらたなサービスの創設として、地域密着型サービス・地域包括支援センターが創設されました。これにより、在宅支援の強化や医療と介護の連携を図ることが期待されました。

 2011年度介護保険法改正

2011年には、介護サービスの基盤強化のための介護保険法等の一部が改正されました。ここでは、地域包括ケアシステムの構築が焦点となり、高齢者が住み慣れた地域で自立した生活を営めるように、医療や介護、生活支援サービスが切れ目なく提供されることを目的とされました。その中では、単身・重度の要介護者に対応できるように、定期巡回・臨時対応型介護看護、複合型サービスの2種類のサービスが創設され、これらは地域密着型サービスの一つとされました。

また、高齢者の住まいの整備や認知症対策の推進などの取り決めが行われました。

2014年度介護保険法改正

2014年度の介護保険法改正においても、地域包括ケアシステムの構築は重視され、それに向けた地域支援事業の充実が図られました。その中の、新総合事業では、要支援者の他、要支援には該当しない一般高齢者すべてを対象としたサービスも含まれます。しかし、ケアマネジメントを実施するのは、要支援者と、基本チェックリストで判定された「介護予防・生活支援サービス事業対象者」となります。介護予防・生活支援サービス事業とは、市町村や指定事業者などが実施する訪問型サービスや通所型サービス、生活支援サービス、介護予防ケアマネジメントのことで、これらを第一号事業と呼びます。

その他の改正点としては、

  • 訪問介護、通所介護といった予防給付を、市町村が取り組む地域支援事業に移行されました(2015年4月1日施行)。
  • 特別養護老人ホームの新規入所者を、原則要介護3以上に重点化されました。しかし、施行日(2015年4月1日)以前に入所している方は、そのまま引き続き入所できることとなっています。
  • 通所介護サービスの中で、その利用定員が18人以下のものは地域密着型通所介護として、市町村の管理下に置かれることとなりました。
  • 低所得者の保険料の軽減割合を拡大し、給付費の5割の公費に加えて別枠で公費を投入することとなり、低所得者の負担割合を減らすこととなりました。その一方で、一定以上の所得のある利用者(第一号被保険者に限る)は、低率1割の利用者負担が2割に引き上げられました。2割負担になる65歳以上の高齢者の所得水準は、合計所得金額160万円以上(単身で年金収入のみの場合、280万円以上)となっています。

まとめ

介護保険の歴史と変遷を見ていきますと、高齢化による財政と福祉ニーズの複雑化により、制度もそれに対応したものになるように、より複雑化してきているように感じられます。この流れは一層加速する可能性が高く、今後は介護保険制度の枠組みに、いかにそれ以外の社会資源を組み込み、医療と福祉の連携をスムーズにするかどうかということが、より重要となってくるでしょう。