最近いろんな場所やネット上で、
「理学療法士は将来介護士になる」
という噂みたいな憶測が飛び交っています。そんなことを多くの理学療法士が心配していること自体が僕は心配ではあるのですが、少しそれについて考えてみました。
最初に言わせていただきますが、理学療法士が上で介護士が下だというように、仕事に優劣があるという意味ではありません。介護士も立派な職種であり、尊敬する方も多くいます。その前提でお読みください。
確かに介護士は不足している
国は2025年を一つの社会保障に関するハードルとして見ています。2025年は、団塊の世代が75歳を超えて後期高齢者となるような時期です。日本に住む人口の3人に1人が65歳以上となり、それに比例して要介護者も増加するでしょう。いわゆる『2025年問題』のことです。
それに対して、厚生労働省は2025 年に向けた介護人材にかかる需給推計(確定値)について の中で、2025年には介護人材が約253万人必要になることに対して、供給の見込みは約215万人であり、およそ38万人の介護職員が不足する見込みとのことです。
理学療法士数の今後の動向
現在理学療法士は年間約1万人ずつ誕生しています。しかし、今後は理学療法士という職種に対する人気は低迷していくことでしょう。もしまだ増え続けるとしても、いつか必ず落ち着きます。
詳しくはこちらの記事をご覧ください。
もし万が一、「理学療法士は余っているから介護士として働いてもらおう」といった方針が打ち出されたとしてみて下さい。学費に何百万も支払って理学療法士になる人間は激減します。
そうすれば、高齢者が増加する中で理学療法士への需要は逆に高まり、収まる位置に収まるでしょう。
国もバカではないので、数の差だけでそのような極端な方針は打ち出さないでしょう。
医療ニーズが低下した場合にはどうか
もしリハビリ医療というニーズが低下した場合はこの限りではありません。医療的ニーズが減れば、高齢者が増えようが増えまいが、理学療法士は必要なくなります。
そうなれば、今働いている人間はどこかに仕事を求めなければいけません。
受け皿となるのは、介護士としての業務でしょう。
ただ、恐ろしいことに医療ニーズの低下というのは、部分的に現実となってきています。その最たるものが、平成28年度の診療報酬改定での回復期リハビリテーション病棟についてです。
リハビリテーション実績(FIM得点)が一定の水準に達しない保険医療機関については、回復期リハビリテーション病棟入院料を算定する患者に対して、1日6単位までに制限するといった内容です。この改定直後、回復期リハビリテーション病棟に関わる理学療法士の友人たちは、戦々恐々としていました。
飛び交う憶測の中で、間違っている点と合っている点
間違っている点単に理学療法士が増える+介護士が必要=理学療法士の介護士化ではない。
理学療法士の質の低下+介護士が必要=理学療法士の介護士化である。
実力主義の時代が来る
今までは、理学療法士であることだけで仕事に困ることなど、ほとんど無かったわけです。いわゆるリハビリバブルだったからです。
これから、理学療法士は少しずつ介護士化されてくる可能性は十分あります。しかし、それは『実力のない理学療法士』に限定されます。社会全体としてのリハビリ医療ニーズが無くなることはありえない話です。あるとすれば、個別の医療ニーズがなくなることでしょう。
レストランも、おいしくない場所は潰れるのと同じように、結果を出せない理学療法士は少しずつ介護士として働くようになるかもしれません。
これは全く不思議なことではなく、資本主義の世界では当たり前のことでしょう。
まとめ
僕としては、このような話に一喜一憂するのではなく、それぞれの理学療法士がちゃんと患者さんや利用者さんのニーズを満たすために勉強して実力をつけることの方が建設的であると思います。
特に介護保険領域で働いている理学療法士の方は、身近な問題であると思います。実際に、職場内でリハビリの意味がないと思われしまえば、介護業務を手伝うことになるケースは出てくるのではないでしょうか。僕自身も、理学療法士の介護士化が現実のものとならないように、しっかりと実力をつけていきたいと再確認させられました。