より効果的な【変形性膝関節症のリハビリ】を行うための基礎

変形性膝関節症は、理学療法士には身近な存在です。整形外科であれば、腰痛に次いで多い疾患です。しかし、その症状は多岐にわたることもあり、運動療法のコンセプトも病院やセラピストで異なる部分もあります。

今回は、変形性膝関節症のリハビリを行うための基礎が中心です。

 変形性膝関節症の概要

膝OA(OA=変形性関節症)のほとんどは一次性の問題です。要するに、原因がはっきりしていないものです。ちなみに、二次性とは原因がはっきりしているものであり、例えば、骨折や靭帯損傷、リウマチなどに続発して起きるものです。多いものとしては、前十字靭帯損傷や半月板損傷に続発して生じるものです。これは、膝関節の不安定性が増すことが原因であると考えられます。

膝OAのリスクファクター因子としては、一般的には①筋力低下、②肥満、③女性、④加齢、⑤遺伝、⑥栄養要素、⑦過度な運動ストレスなどが挙げられます。

単純X線画像では、骨棘の形成や関節裂隙狭小化、骨嚢胞、骨硬化像などがみられます
X線画像上の分類は、Kellgren-Laurence(KL)を用いるのが一般的です。KL分類では、関節裂隙狭小化の程度・骨棘や骨硬化像などの変化が指標となります。膝OAは内反型と外反型に大きく分けることができ、腿骨の長軸と脛骨の長軸のなす角度 (FTA=femoro-tibial angle )を指標にします。日本人の成人の正常膝関節では、立位において男性平均178°、女性が176°ですが、日本人に多い内反型の膝OAでは、180°以上となります。FTAが大きくなればO脚、小さくなればX脚となります。これは見た目に両ひざがOやXのように見えることからです。

また、こういったOA変化は、脛骨大腿関節(大腿骨と脛骨の関節)だけではなく、膝蓋大腿関節(大腿骨と膝蓋骨の関節)のどちらにも起きる可能性があります。

膝OAの進行度は、主に初期・進行期・末期と分けられます。

 症状の現れ方

患者さんが受診する理由は、大体以下の通りです。

  • 歩いていて痛む
  • 膝がこわばる
  • 立ち上がり、歩き始めに痛む
  • 正座ができなくなる
  • 曲げ伸ばしに制限が起きる
  • 膝が腫れてきた

症状の現れ方は様々ですが、症状だけで重症度を推測することは困難です。X線にて、変形がかなり進行している場合でも症状が軽度な場合や、変形はほとんどないのに症状が強い場合があります。しかし、一般的な膝OAの進行度合いによる症状の現れ方は傾向がありますので、その違いを見ていきましょう。

膝OAの進行度による症状

初期

初期には、膝関節がこわばる程度であることが多いです。または、長時間同じ姿勢をしていたり、特に座った状態から立ち上がる際に痛みを訴えることもあります。初期には基本的に関節可動域制限を認めることは少ないですが、しゃがみ込みや正座といった、深屈曲動作の制限は時折みられます。

この時期に理学療法を行うことは、予後の面でも非常に有効と思われますが、患者さんによっては、「そのうち治るだろう」と様子見をする方も少なくありません。よって、膝OAの認知度を広め、いかに早期に介入できるかどうかが今後さらに重要であると考えられます。

進行期

内反型変形性膝関節症では、病変が進行すれば、膝関節は伸展可動域制限、内反変形が増強し、下腿の外旋なども生じてきます。

また、変形性膝関節症が進行してくると、変性し摩耗した軟骨が関節内に遊離したり、半月板や靭帯の損傷が続発して起きることで生じる炎症が生じることがあります。俗にいう“膝に水がたまる”というのは、この炎症により滑液が関節内に過剰に分泌されるためであり、これを関節水腫と呼びます。立ち上がりや、歩き始めたといった動作での痛みも強くなり、日常生活に支障が出てきます。その結果、炎症が波及して特に膝蓋骨周囲組織の拘縮を引き起こすことが多くあります。

【膝蓋骨】に付着する組織の基礎知識

炎症が一旦は治まり、膝の腫れが引いたあとも、同じように何度もそれを繰り返すことがあります。このように炎症が慢性化してしまうと、痛みの閾値も下がり(痛みを感じやすくなり)、一日の運動量自体が低下して筋力低下が進んでしまうこともあります。そして筋力低下はさらに変形を助長する結果となり、結果的に悪循環となっていきます。

末期

変形が高度になり、関節可動域は重度に障害されます。繰り返された炎症により、滑膜は肥厚し、関節周囲の様々な組織は拘縮・弱化します。このレベルに達していると、リハビリも効果的でないことがあります。安静時痛も出現したりと日常生活の支障が大きくなってこれば、手術も検討されます。主な手術は、『人工膝関節置換術』や、『骨切り術(高位脛骨骨切り術)』などが挙げられます。

患者さんが手術を希望されない場合には、保存療法としてリハビリを行いますが、杖やシルバーカーの使用による免荷が必要になることもあります。また、関節に負担をかけない動作指導なども行います。

PTが行う評価・検査項目

  • 問診:いつから痛いのか。どんな痛みか。どの程度痛いのか。痛みが増強する姿勢や動作はあるのか。痛みが楽になる動作はあるのか。生活で支障を感じていることは。
  • 痛みの評価:安静時痛や夜間痛・動作時痛(立ち上がり、階段昇降、歩行、しゃがみ込み等)・圧痛・再現痛。
  • ROM-test(可動域検査):脛骨大腿関節だけでなく、膝蓋骨の可動性を検査することが非常に重要です。また、膝は屈曲位になると下腿の回旋可動性が生じます。この回旋可動性があるか無いかも、リハビリには重要な項目です。
  • 筋力検査:大腿四頭筋、大腿筋膜張筋、半腱様筋、半膜様筋、内転筋群などは、特に膝関節の安定性に関与しますのでチェックが必要です。特に、大腿四頭筋はExtension Lag(自動伸展可動域と他動伸展可動域の差)に関与が大きいと言われています。
  • アライメント:主にレントゲンで確認します。FTA(大腿骨-脛骨の角度)や膝蓋骨の位置などを把握します。
  • 整形外科的テスト:Ober-test、内反ストレステスト、外反ストレステスト、Ely-test、Mc Maurray’s -Test、Patella Grinding Test等。
  • 炎症所見:いわゆる炎症の5大徴候、熱感・発赤・腫脹・疼痛・機能障害を確認する。
  • 歩行分析:toe-out(in)、Knee-in(out)、lateral thrust、連続歩行距離、10m歩行時間等。

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評価・リハビリの流れ

リハビリの実際では、進行度による違いよりも、まずは現在出現している痛みが、Chemical factor(化学的要因)によものなのか、Mechanical factor(機械的要因)によるものかによって大きく変わります。よって、まずはそれらを見分ける必要があるでしょう。

Chemical factor

Chemical factorで大きなものは、やはり炎症です。炎症が起きると、それだけで発痛物質であるブラジキニン(炎症メディエーターと呼びます)濃度などが上昇し、痛みを感じます。要するに、「じっとしていても痛い」という状態です。膝の安静時の痛みはこの要因が大きいわけです。一般的には、膝蓋跳動(BOP=Bollottement of Patella)の有無をみて判断します。炎症が起きている最中であれば、医師による薬物療法と併用しながら、RICE処置(安静・冷却・圧迫・挙上)を中心に実施します。膝サポーターも有効であり、関節保護とともに適度な圧迫を患部に与えることによって、腫脹をコントロールすることができます

この時期に加重や関節運動を伴うリハビリを無理に実施すると、悪化の原因になりますので注意が必要です。関節運動を伴わないような、適度なPatella mobilizationやPatella setting、SLRエクササイズなどでしたら、大きな問題は起きにくいでしょう。

膝のリハビリにおける、パテラセッティングの基本と応用。

Mechanical factor

Mechanical factorは、メカニカルストレスと言い換えても良いかもしれません。要するに、「牽引」「圧縮」「剪断」「捻じれ」といった力によって、機械的に加わる刺激によって痛みが発生する場合です。

その前に、なぜこれからの刺激が痛みにつながるかを理解する必要があります。正常の膝であれば、これらの刺激による痛みがでなかっとしても、膝OAの患者さんは痛みを感じやすかったりします。原因は、炎症の二次的な作用によるものが考えられます。炎症が治まれば、それですべて元通りというわけではありません。まず、炎症は周囲へ波及する性質があります。局所的だったはずの問題が、いつの間にか広範囲の問題を引き起こすわけです。
しかも、炎症によって損傷を受けた部分に肉芽という組織が生まれ、それが線維化といってコラーゲン繊維に置き換わります。これらの過程で、毛細血管や神経が新たに構築されます。要するに、一時的に痛みを感じやすくなるわけです。

そのことに加え、膝の変形や拘縮を背景とした、動作によるメカニカルストレスも増大します。代表的なもので言えば、lateral thrust(ラテラルスラスト)現象があります。膝の伸展制限と内反変形により、歩行の立脚期において膝が外側動揺を起こすことです。それによって、制動のために外側広筋や大腿筋膜張筋といった膝外側支持機構が過剰に働きすぎて、筋肉が阻血状態(筋スパズム)により発痛物質を産生して痛みが出ているケースもあれば、内側広筋や大内転筋といった内側支持機構の過活動によって、伏在神経などの神経が絡んだ問題が生じることもあります。

また、変形性膝関節症を背景として、鵞足炎が生じるケースもあります。

鵞足炎のリハビリ治療の基礎と実際

圧痛と再現痛の重要性

変形性膝関節症に限ることではありませんが、痛みとは、その原因になっている組織がどこかにあります。痛みの原因組織は、ほとんどの場合圧刺激に対して敏感になっており、押すと痛みを生じます。逆に言えば、痛みの原因組織を探るためには、圧痛をみていくと効果的なわけです。

しかし、痛みの発生源が複数存在することもあり、主訴に直結するような痛みを見つけるためには、もう一工夫必要です。そのためには、圧痛と再現痛をリンクさせるということが重要です。実際に主訴である動作に伴う痛みなどを確認し、その痛みが圧痛と同じ部分であるかを問診することによって、原因組織の特定が容易となります。僕はこのことを最重要視しております。

まとめ

まだまだ変形性膝関節症に必要なことは多くありますが、今日は基礎としてここまでとさせていただきます。