上腕二頭筋長頭腱炎の評価とリハビリ治療について

上腕二頭筋長頭腱炎は、バレーボールや野球のピッチング動作、水泳等のオーバーヘッド動作を繰り返し行うスポーツで多く発症します。また、肩関節周囲炎の一つの症状として、運動をそれほど行っていなくても退行変性した腱では容易に炎症を引き起こすことがあります。

ここでは、その上腕二頭筋長頭腱炎についての評価方法とリハビリ治療について触れていきます。

上腕二頭筋の起始・停止

上腕二頭筋は、いわゆる力こぶの筋肉です。上腕二頭筋は二頭の名の通り、長頭と短頭に分かれています。それぞれの解剖学的特徴をまず見ていきます。

上腕二頭筋長頭起始:肩甲骨関節上結節、上方関節唇
停止:橈骨粗面、前腕屈筋腱膜
神経支配:筋皮神経(C5・C6)
上腕二頭筋短頭起始:肩甲骨烏口突起
停止:橈骨粗面、前腕屈筋腱膜
神経支配:筋皮神経(C5・C6)

 上腕二頭筋の作用と特徴

上腕二頭筋は二関節筋であり、肩関節と肘関節に作用します。

肩関節に対しては屈曲・水平屈曲に作用し、肘関節については屈曲と回外へ作用します。

また、上腕二頭筋長頭腱は後述する結節間溝を通過しており、上腕骨頭の上方化を制動することにより、骨頭の求心性を高め、インピンジメントを予防する機能もあります。

上腕二頭筋腱炎が起きるメカニズム

上腕二頭筋長頭腱(long head of biceps brachii=LHB)は、大結節と小結節の間である結節間溝を通過します。本来は、結節間溝を通過する際に、腱鞘に取り囲まれることで、腱と結節間溝の摩擦係数を減らしています。しかし、大結節と小結節の間には上腕横靭帯があり、この狭い空間の中を上腕二頭筋長頭腱は存在することで、メカニカルストレスを受けやすい構造になっています。

上腕二頭筋腱炎の評価

この上腕二頭筋長頭腱についての有名なテストは、スピードテストとヤーガソンテストです。イラストや画像で見ても良く分からないので、動画が参考になります。

スピードテスト

上の動画の肩関節肢位では、結節間溝は正面を向いています。よって、この状態で屈曲動作を行わせながら抵抗をかけることで、上腕二頭筋長頭腱での痛みを誘発させることができます。
肩内旋位では結節間溝は内側へ隠れますので、上腕二頭筋長頭腱への負荷が減少します。よって、肩の肢位を変えながら、屈曲動作への抵抗を行い、その痛みの出現の差を見ていくことになります。

ヤーガソンテスト

ヤーガソンテストでは、肩関節を内転させ、上腕を体幹にしっかりとつけた肢位において、肘関節90°屈曲位・前腕やや回内位をスタートポジションとします。

この肢位から、前腕を回外させ、検者は抵抗を加えます。その際に痛みが誘発されるかどうかをみていくことになります。

これは、上腕二頭筋の回外作用を利用して上腕二頭筋長頭を収縮させ、結節間溝部での圧迫力による刺激を加える目的です。

注意点

上腕二頭筋長頭に関連する疾患として、関節唇損傷(SLAP損傷)があります。上腕二頭筋長頭は、関節包を介して上方関節唇に停止しています。

関節唇損傷がある場合には、上腕二頭筋長頭の収縮や伸長が、損傷した関節唇への痛みに影響する可能性があることに注意する必要があります。

上腕二頭筋長頭腱炎の治療

主に、治療は保存的に行われ、湿布などの外用消炎鎮痛薬や、抗炎症剤などによって痛みや炎症を抑えます。また、アイシングも必要に応じて行う必要があります。

それと並行して、肩周囲筋のストレッチを中心とする可動域訓練や筋力訓練を徐々に進めていきます。

万が一、上腕二頭筋長頭腱が断裂していたとしても、保存的に治療することは十分に可能性があります。なぜなら、上腕二頭筋長頭の作用を代償するための筋が他にも存在するからです。肘の屈曲動作などにおいては、筋力低下は多少生じるでしょうが、ADLに大きな支障が出る程度まで影響を与えることはないでしょう。

リハビリの実際

炎症が強い時期

炎症が強く残っている際には、まずは生活指導を重要視します。

先ほど見てきたように、上腕二頭筋長頭腱は、結節間溝が正面を向いた状態で負荷が加わります。よって、物を持ち上げる際には、下の写真のような持ち方は良くありません。

できるだけ上腕二頭筋長頭へ負荷の加わりにくい持ち方をするか、健側で持つかするなどの指導が必要です。負荷をかけ続けた生活をしていると、なかなか炎症が治まらないばかりか、症状が慢性化して閾値が低下するきっかけにもなりかねません。

また、上腕二頭筋腱の機能低下があるわけですから、肩の挙上動作などに伴う上腕骨頭の求心性は低下している可能性があります。

そこで、炎症が強い時期には、上腕二頭筋腱への負担を減らすためにも、他の要素で求心性向上を高めるようなリハビリが必要です。

リハビリで絶対に押さえておきたい肩関節の特徴3選

こちらの記事に詳しく書かれていますが、骨頭求心性改善のためには、肩甲骨のアライメント調整や、回旋筋腱板のトレーニングが有効です。

この時期に上腕二頭筋のストレッチは、やってはいけないわけではないですが、炎症を助長しないように注意する必要があります。

炎症が落ち着いてきたら

炎症が治まってこれば、炎症後の上腕二頭筋腱と結節間溝部周囲との拘縮や滑動性低下を改善させるために、ストレッチと筋力訓練を本格的に実施していきます。

これら炎症の有無に関する時期さえ間違えなければ、ストレッチ等で伸長刺激を加えたとしても、痛みを誘発することなく改善させていくことは十分可能です。

ストレッチでは、前腕回外位での肩関節伸展方向への他動的なスタティックストレッチを中心に、前腕回外位にて肩関節伸展最終域から屈曲最終域までの全可動域をしっかり使った自動運動もしくは自動介助運動も効果的です。

個人的には、効果判定においてもスピードテストとヤーガソンテストは使用しており、それらの陰性化を目指すといったことが当面のゴール設定としています。

まとめ

上腕二頭筋腱炎は、スポーツ障害でも肩関節周囲炎の病態の一つとしてでも遭遇することが比較的多いものです。

スポーツ障害である場合には、運動制限が必要な場合もあるので、医師と相談しながらそれらの指導に当たると良いかと思います。