半月板損傷に対するリハビリのコンセプトについて

半月板損傷後のリハビリは、病院によってはプロトコール(定められた治療計画)が存在する施設もあるかと思われます。

しかし、それらはリスク管理を中心とした大まかなものであることが多く、個別の機能障害についてはそれぞれの理学療法士が判断してリハビリに取り組む必要があります。

ここでは、半月板損傷後のリハビリで見るべきポイントなどについてご紹介させていただきます。

半月板の構造や、受傷メカニズムを押さえおくと理解がしやすいかと思われます。多少重複する内容があることをご容赦下さい。

半月板の構造と役割【膝屈曲・伸展で半月板はどう動くのか?】
半月板損傷のメカニズム(受傷機転)について

保存療法か手術療法か

保存療法

まずは、半月板損傷後に手術が適応となるかどうかによって、リハビリは異なります。

半月板は、辺縁部1/3には血流が存在しますが、中心部2/3は無血管です。

血流が存在する=治癒が期待できる

ということですので、血流がある部位の損傷の場合は保存療法が適応となることがあります。

しかし、その場合には損傷が重度でないことや、症状が早期に消失することが条件となります。そのため、MRIなどでの検査を行った上で医師がその判断を行います。

保存療法ではリハビリの他に、足底板療法やヒアルロン酸の関節内注射などが行われます。

手術療法

上記の保存療法に該当しない場合や、半月板が痛みや膝屈伸時の引っかかり(catching)やロッキングの原因となっている場合には、手術療法の適応となります。

手術は、大きく次の2つに分けられます。

  • 縫合術
  • 切除術

縫合術は、半月板の修復を目的とする手術です。基本的には血流の存在する辺縁部での損傷であり、かつ変性のない縦断裂である場合に行われます。

切除術は、修復を目的とするものではなく、不要な部分を取り除く手術です。縦断裂以外の断裂面が不整なケースや、血流が無い部分での損傷に対して行われます。

半月板は、関節の適合性を良くする役割があることから、切除してしまうことで適合が悪くなる可能性もあります。そうなれば、新たな半月板損傷や変形性膝関節症へつながる恐れがあることから、可能な限り半月板を温存する治療が検討されます。

縫合術と切除術後のリハビリの違いはこちらをご参照下さい。

半月板縫合術と切除術後のリハビリの違いについて

共通するリハビリのコンセプト

半月板損傷におけるリハビリの課題

半月板損傷に対するリハビリを難しくさせる原因は、次の2点です。

  1. 半月板の動きの評価は困難
  2. 半月板は直接触って動かせない

効果的にリハビリを行う際には、この2つの問題をクリアする必要があります。

半月板可動性の評価

半月板は、膝関節の屈曲・伸展・回旋にともなってその形を変化させます。

本来であれば、そのような動きが正常であるかどうかを判断する必要があるのですが、半月板は直接触って評価できるわけではないので、実際には困難です。

せいぜい触れるとすれば、下の図のように、膝の屈曲伸展に伴って前後に出てくる辺縁部を少し触れる程度です。

内側半月板の辺縁部は、内側側副靭帯を避けた関節裂隙で触れることができます。

上の水色の部分の半月板を触れた状態で、膝を伸展させれば前方部が前に突出する様子を触れることができます。

逆に、膝を屈曲させれば、半月板の後方部が後ろに突出する様子を触れることができます。

 

外側半月板の場合も同様に、半月板前方は関節裂隙前方で触れます。後方は、腸脛靭帯と大腿二頭筋腱の間で触れることができます。

 

これらの半月板の触診による評価や、整形外科的テストとしてMcMurray(マックマレー)テストやAplay(アプレー)テストを行う意義はもちろんあります。

しかし、それだけで半月板の評価とするには十分ではないでしょう。

そのため、次の2つに着目して評価・治療を行います。

・半月板に連結する組織

脛骨大腿関節の動き

半月板に連結する組織

周囲組織の評価

半月板を直接触れることは困難ですが、半月板に連結する組織を触れることは可能です。

具体的には、次の組織が挙げられます。

  • 膝蓋下脂肪体
  • 外側半月膝蓋靭帯
  • 内側半月膝蓋靭帯
  • 膝窩筋
  • 半膜様筋
  • 内側側副靭帯

半月板の動きを評価するには、これらの組織がいかに正常に動いているかを評価することが重要です

逆に言えば、半月板が正常に動くには、これら周囲の環境が整っている必要があります。

その代表的なものを挙げていきます。

膝蓋下脂肪体の動き

膝蓋下脂肪体の拘縮などは、半月板前方に存在していることから半月板の動態に影響があります。

特に、半月板の損傷に伴う炎症や、術後の炎症後には、膝蓋下脂肪体にまで炎症が波及していることがあります。炎症を慢性化しないことが重要なので、RICE処置を適切に行いながら膝蓋下脂肪体の柔軟性改善を図る必要があります。

【炎症】の基礎知識とRICE処置について。理学療法士がリハビリを行う上で理解しておくべき内容。

また、膝蓋下脂肪体の可動性確保のためには、膝蓋支帯の柔軟性や膝蓋骨の左右への動きを改善させる必要があります。

【膝蓋下脂肪体】による膝前面の痛みと伸展・屈曲制限について。リハビリ方法もご紹介します。

半月膝蓋靭帯

膝蓋骨が上方へ引き上げられることで、半月膝蓋靭帯が緊張し、半月板は前方へ引き出されるように移動します。

構造を考えると、➀膝蓋骨の可動性、➁大腿四頭筋の収縮、➂膝蓋下脂肪体の柔軟性などが確保されて初めて、半月膝蓋靭帯は正常に機能すると言えます。

そのため、膝蓋骨のモビライゼーションやパテラセッティングは有効な手段と考えられます。

膝のリハビリにおける、パテラセッティングの基本と応用。

膝窩筋と半膜様筋

膝窩筋と半膜様筋は、半月板の後方牽引力として重要な役割を果たしています。

これらの筋肉の柔軟性や筋力、収縮のタイミングを評価することは、すなわち半月板の評価として成り立つと考えられます。

よって、圧痛検査や、MMT検査を行う意味がありそうです。

脛骨大腿関節の動き

スクリューホームムーブメント

膝関節は屈曲位から伸展する際にスクリューホームムーブメント(screw home movement)と呼ばれる下腿の外旋運動が生じます。

スクリューホームムーブメントが起きる理由としては、大腿骨外側顆に比べて内側顆の方が大きいので、『転がり』の副運動が内側で大きいために脛骨が外旋すると言われています。

スクリューホームムーブメントを言い換えれば、膝関節を伸展位から屈曲する際には、下腿が内旋するとも言えます。

問題となるケース

半月板にとって問題となるのは、スクリューホームムーブメントが起きなかったり、むしろ逆の動きが起きるときです。

例えば、伸展する際に下腿の内旋が起きたり、屈曲する際に下腿の外旋が起きたりすれば、半月板にはその歪みが加わる可能性があります。

このような問題が起きるケースとしては、ACLやPCLのトラブルを始め、下腿の回旋に影響を与える広筋群や縫工筋、薄筋、大腿筋膜張筋などの影響を考慮する必要があるかもしれません。

 まとめ

半月板損傷のリハビリでは、半月板の構造や機能を十分理解した上で行うことが必要です。しかし、半月板は直接触れることが困難であることから、その周囲組織の評価・治療を行うのが有効であると考えられます。

スクリューホームムーブメントの異常に関しては、今後その要因の研究が進めば、より一層対策を立てることが可能になってくるでしょう。