極超短波(マイクロ波)療法の禁忌。そのメカニズムと適応もご紹介します。

整形外科におけるリハビリテーションの現場では、物理療法として極超短波(マイクロ波)療法を行うことが多くあります。

ここでは、マイクロ波療法の禁忌を中心に、その効果やメカニズムをご紹介していきます。

まず、マイクロ波療法の禁忌は、以下の通りです。

  • 急性炎症部位
  • 結核等炎症疾患
  • 悪性腫瘍
  • 湿布やテープを貼った部位
  • 阻血組織
  • 浮腫(重度、非炎症性)
  • 出血性部位
  • 感覚脱失部位
  • 金属挿入部位
  • 妊婦の腹部
  • 生理中の女性の腰部・腹部
  • 成長期の骨端部位
  • 眼球
  • ペースメーカー装着者
  • 男性生殖器・・・等

これらの部位や疾患にはマイクロ波を照射してはいけません。

それでは、ここからマイクロ波療法のメカニズムや適応をご紹介していきます。

極超短波(マイクロ波)療法とは

マイクロ波療法は、高周波療法に分類される

極超短波(以下マイクロ波)とは、高周波療法の一つです。

高周波療法とは、電磁波や音波のエネルギーが熱エネルギーに変換される効果を利用したものです。これを、エネルギー変換熱(energy conversive heat)と呼びます。

高周波は、なぜ熱が発生するのか?

高周波が何かの組織を通過すると、そこでは分子が毎秒数百万回以上向きを変えるような現象が起きます。すると、そこには摩擦熱が発生し、それが熱産生の発生源となるわけです。

高周波には、マイクロ波の他にも以下のような種類があります。それぞれの周波数とともに記載します。

  • 長波:~300kHz
  • 中波:300~3000kHz
  • 短波:3~30MHz
  • 超短波:30~300MHz
  • 極超短波(マイクロ波):周波数300MHz~30000MHz

マイクロ波の周波数

上記のように、マイクロ波というのは、周波数300MHz~30000MHzの電磁波のことです。マイクロ波には、熱の産生以外にも様々な用途があります。例えば、ラジオやテレビ、レーダーや気象観測といった、意外にも私たちに身近なものに活用されています。

その中でも、極超短波療法として使用する周波数は2450MHz±50MHz、波長は約12.5㎝であり、これは一般家庭で普及している電子レンジと同じ周波数です。

このマイクロ波療法は、温熱療法として、ホットパックと並んで高い頻度で使われています。
マイクロ波は、光に似た性質を持つことから、反射・屈折・透過・吸収作用があります。よって、照射される物質によって、反射率や吸収率、透過率が異なります。

マイクロ波の原理

マイクロ波の構造

マイクロ波を発生させるには、『マグネトロン』という、磁場を用いた二極管が利用されます。

マグネトロンでは、真空の容器の中に陽極と陰極が閉じ込められています。

まず、陰極が熱されることで、電子が放出されます。陽極は陰極の回りを取り囲んでいて、その外側にはコイルが巻かれており、真空容器に磁界を発生させます。そして、電子が陽極に影響を与えることでマイクロ波が発生することになります。

マイクロ波の深達度

マイクロ波のエネルギーの50%は皮膚表面で反射されます。その残りのエネルギーが皮膚を透過するわけですが、その途中で吸収されて半減する深さを、深達度と呼びます。

一定の方向へ照射されたマイクロ波は、深さ3~5㎝までの皮膚、脂肪、筋肉に吸収され、そこで熱を発生させます。

ホットパックなどの温熱療法が表在部の温熱効果があることに対して、マイクロ波療法では比較的深部までの温熱効果があることが分かります。

マイクロ波が熱を発生させる仕組み

マイクロ波も高周波の一つであるので、電気的エネルギーが熱エネルギーに変換されます。

マイクロ波では、極を持つ分子が電磁界の動きに伴って回転し、他の分子との間で摩擦が起こることで熱を発生させます。

水分も極を持つ分子であることから、水分を含む組織では熱を発生させやすいことになります。

電子レンジでも、同じように水分が含まれていると温められやすい現象が起きるので、これは理解しやすいかと思います。

マイクロ波の生理作用と効果

マイクロ波には、大きく分けて以下の3つの効果があります。

  1. 温熱作用
  2. 循環作用
  3. 鎮痛作用

温熱作用

マイクロ波の生体へ主な作用は、温熱作用です。その温熱効果による影響はいくつかありますが、その中の一つとして代謝を亢進させる効果があります。組織の温度が1℃上昇するごとに代謝は約13%上昇すると言われています。

マイクロ波では、先ほど述べたように水分含有量が高い組織にて熱が発生しやすくなります。それにより、脂肪や筋肉、皮膚などをほぼ均等に温めてくれる作用があることから、特に筋肉への作用が有効です。

循環作用

代謝が亢進することにより、温められた皮膚や筋、筋膜の代謝率が亢進します。それにより、新たな熱が産生され、動脈の血管拡張につながります。このように、毛細血管の血流が増加されることで、マイクロ波には循環作用もあると言えます。

しかし、血液量が少ない組織(眼球、脳、睾丸など)では、数分の照射で変性を起こすことがあるため注意が必要です。

鎮痛作用

この毛細血管の血流増加により、痛みを抑える効果もあります。これは、白血球・抗体・栄養素・酵素・酸素などの供給が増し、発痛物質を除去することができるからです。

このことは、マイクロ波療法により、筋スパズムの改善が可能であることの理由ともなります。筋スパズムはその特徴から、痛みの悪循環を引き起こしやすいので、それを断ち切るためには温熱による鎮痛作用は重要なものです。

極超短波(マイクロ波)の適応

マイクロ波の適応となるのは、次のような症状・疾患です。

  1. 疼痛
  2. 循環障害
  3. 筋緊張亢進

疼痛

疼痛の中でも、明らかな炎症症状が認められるものは除きます。

適応となるのは、打撲や捻挫などに伴う痛みや変形性関節症、肩関節周囲炎(拘縮肩)、慢性腰痛などです。

循環障害

循環障害の中でも、重度な浮腫や非炎症性浮腫は除きます。

慢性炎症に伴う軽度な浮腫などに適応となります。

筋緊張亢進

中枢性疾患による筋緊張の亢進や、疼痛に続発する防御性の筋スパズムなどに適応となります。

マイクロ波療法の実際

照射距離と時間

マイクロ波の照射する距離は、10㎝程度です。

また、照射時間は平均20分程度が通常であり、5分~30分の範囲でも行うことがあります。実際には、どのくらいの時間マイクロ波の照射を行うかは、患者さんの自覚的温感を目安に決められることもありますが、治療者がそばでその程度を適時確認する必要があります。

注意点

使用前に、ペースメーカーや人工関節など、患者の生体内金属の有無を確認します。また、知覚障害の程度なども合わせて確認します。
禁忌の中でも、これらは見た目だけでは分かりにくいことなので、改めて確認を行う必要があります。

マイクロ波を照射するにあたり、患者さんは椅子坐位もしくは臥位で安楽な肢位を取ります。その際に注意すべきこととして、金属製の椅子を使うとそれ自体が発熱する可能性があるので注意が必要です。

また、照射する部位に指輪やネックレス等の金属類がないかどうかを観察することも重要です。マイクロ波は、直接肌に照射しなければいけないというわけではありませんので、金属類がなければ衣服の上から照射することは問題ありません。

しかし、湿布をはがし忘れるということは、よくあることですので貼ってある場所がないかどうかをチェックするようにしましょう。

マイクロ波の出力

マイクロ波の出力は50ワットから120ワットが目安です。先ほど述べたように、患者が自覚的に心地よいと感じる程度に調節しながら照射する出力を調整します。

多くの場合には、出力は一定のものとなっており、スイッチを押すだけというケースが多いかと思われます。

まとめ

マイクロ波は温熱療法の中でも、深部まで到達するメリットがある反面、リスク管理も重要な治療方法です。

効果に先立って、安全性の確保を最優先するように心がけましょう。