『肩こりが辛くて・・・』
よく聞く言葉ですが、そもそも“こり”って何でしょうか?
デスクワークの方や介護職の方、同じ姿勢でいつも何かをしている方などはの多くは“こり”に悩まされており、それはレントゲンなどの画像に写らないために、湿布で様子をみるしかないと考えている方も多くいらっしゃいます。
この“こり”を治すためには、まずはその正体を突き止めなければいけません。
ここでは、その原因について専門的な部分をできるだけ分かりやすくご紹介していこうと思います。
目次
“こり”とは?
筋肉のこりというのは、筋肉が硬くなっている状態です。
英語にすれば、“筋肉のこり”は“muscle stiffness”と呼ぶことができます。
stiffnessというのは、まさしく『硬い』という意味であり、この言葉の使用は一般の方だけでなく、医療職でさえ「この筋肉が硬くなっている」といった表現をすることがあります。
ということは、“こり”を理解するには、筋肉がなぜ硬くなるかを理解する必要があるというわけです。
筋肉の硬さの原因
筋肉の硬さの原因は、大きく分けて次の2つに分けられます。
- 筋肉の緊張が高い
- 筋肉そのものが硬い
この2つは、似ているようで全く違うものです。
1.筋肉の緊張が高い
筋肉の過緊張というのは、筋肉に出入りしている神経の興奮に左右されます。
具体的に言えば、α運動ニューロンと呼ばれる筋肉の収縮に影響を与える神経細胞が活性化していることが原因です。
筋肉の緊張が高くなると、まず筋内圧(筋肉の内部に働く圧力)が高まります。
すると、血管が圧迫されて血流が低下します。下の図はそれを示しています。
筋肉内の血流が低下すると、筋肉の虚血が発痛物質の産生をもたらします。
このようにして、“こり”は痛みとして現れてくるのです。
2.筋肉そのものが硬い
一方で、筋肉そのものの硬さというのは、筋肉に備わっている粘弾性(ねんだんせい)に左右されます。
粘弾性とは、ゴムのように変形したり伸びたりすることのできる性質のことです。
これは、筋肉内のコラーゲン繊維や弾性繊維の量によって決まります。
“こり”の改善のために
以上に挙げた2つの原因のうち、最も一般的な原因は、1の筋肉の過緊張によるものです。
これは、【姿勢】や【使いすぎ】といった日常生活に潜む習慣から引き起こされる問題です。
そして、その原因は先ほど述べたような神経の興奮です。
よって、“こり”を改善するためには神経の興奮の起きる機序を理解し、その興奮を抑えるような手段を取らなければいけないということです。
筋肉の緊張に関わる神経系
こう書くと非常に難しく感じるかもしれませんが、理解することは次の2つだけです。
- 筋肉内のセンサーについて
- 筋肉に出入りする神経について
筋肉内のセンサー
筋肉は、伸び縮みするものであるだけに、過度に伸びてしまわないように防御機能が備わっています。
それが、筋紡錘(きんぼうすい)というセンサーです。
センサーである筋紡錘からの信号は、管制室にあたる中枢神経(ここでは脊髄)に送られ、伸びすぎてしまわないように『収縮する』指令を出します。
このまま筋肉が縮まれば、何事もなかったように治まるわけです。
しかし、縮まなければどうなるでしょうか?
筋肉は収縮しようとしているのに実際には縮まなければ、引き延ばされた状態で筋肉は収縮し、その結果、筋内圧は上昇します。
デスクワーカーの方たちが、同じ姿勢で筋肉に負荷をかけ続けると“こり”につながるというのは、このようなことが起きているからに他なりません。
特に、この筋紡錘というセンサーが多く分布している筋肉ほどこのような現象は強くみられます。
肩こりを引き起こす筋肉にも、筋紡錘は多く存在しています。
筋肉に出入りする神経について
このように筋紡錘のセンサーからの信号は、“こり”に大きな影響を与えます。
筋紡錘からの信号は、神経によって伝えられます。
しかし、非常にややこしい回路になっているため、順を追って見ていきましょう。
“こり”解消にはα運動ニューロンの抑制を!
筋紡錘から出る神経をⅠa繊維と呼びます。そして、筋肉内に向かい筋収縮を促す神経を、α(アルファ)運動ニューロンと呼びます。
先ほどの図に当てはめると、次のような形になります。
“こり”の原因は、最終的にはα運動ニューロンの過活動ですので、目標はその抑制ということになります。
ということは、筋紡錘からの過度な信号を抑えることができれば良いわけです。
筋紡錘に入る神経
筋紡錘には、センサーとしての機能を調整するために、錘内筋と呼ばれる繊維が存在しています。
これは、γ(ガンマ)運動ニューロンの指令により収縮することで、筋紡錘の感度を調整しています。
よって、結論から言えば、γ運動ニューロンの活性を低下させることが、α運動ニューロンの活性化を抑制させることにつながります。
まとめ
ここまで、“こり”が生じる理由を生理学的にご紹介させていただきました。
“こり”の改善には、医師の処方する筋弛緩薬を始め、ストレッチやエクササイズなどが必要です。
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