【膝蓋骨】に付着する組織の基礎知識

膝関節の疾患に限らず、膝を対象としたリハビリは多くあります。そんなとき、どこをみていけば問題が見つかるのか、膝周囲の知識の引き出しが足りなくて困った経験ないでしょうか。

膝関節は、人体で最も大きな滑膜性関節であり、2つの構成体で成り立っています。

  1. 大腿骨と脛骨の関節(脛骨大腿関節)
  2. 膝蓋骨と大腿骨の関節(膝蓋大腿関節)

この中でも、膝関節を捉えにくくしている一因は、膝蓋骨の存在です。膝蓋骨には実に様々な組織が付着しており、膝蓋骨の可動性に影響しています。膝蓋骨の可動性は膝(脛骨大腿)関節の可動性に不可欠なものであり、膝蓋骨周囲組織の中には、痛みに弱い部分も存在します。

膝の痛みなどを改善していく上で、膝蓋骨周囲は重要な項目です。まずは、どのような組織があり、どのような働きがあるのかを知っておくことで、知識の引き出しが増え、効果的なリハビリへとつなげていくことができるでしょう。

膝蓋骨周囲の解剖と運動学の基礎

膝蓋骨(ラテン語のsmall plateに由来)は、人体最大の種子骨です。種子骨ということは、大腿四頭筋腱内に埋没していることからです。

膝蓋骨は逆三角形をしており、下方を膝蓋骨尖(しつがいこつせん)と呼び、膝蓋腱に連結しています。膝蓋骨尖は、立位ではちょうど関節裂隙付近に存在しています。上方の平面は膝蓋骨底(しつがいこつてい)と呼び、上方からくる大腿四頭筋・共同腱へと連結しています。上にあるのに“底”って呼ぶなんて、なんだか紛らわしいですね。

膝蓋骨関節面は後面のことを指し、独特の形状をしています。関節面は4~5㎜の関節軟骨で覆われ、関節面を縦走する垂直稜よりも外側面は面積が広く、逆に内側面は面積が狭い構造となっています。レントゲン読影などで、膝蓋大腿関節が描出される撮影方法(膝スカイライン撮影といいます)をよく見かけますが、迷ったら関節接触面が大きい方を外側と覚えれば迷うことはありません。

膝蓋大腿関節は、大腿骨前面に存在する内側顆と外側顆によって作られるV字状の溝と、それに向き合う膝蓋骨後面によって成り立っています。関節面における接触面積は、膝屈伸角度によって異なり、簡単に言えば、膝伸展に伴い接触面は膝蓋骨後面の下方へ移動し、屈曲するにしたがって上方へ移動します。

膝蓋骨に付着する組織

膝蓋靭帯

膝蓋靭帯(patellar ligament)は、大腿四頭筋腱の一部です。膝蓋靭帯が断裂すると、膝蓋骨が上方へ偏位することがあります(Patella alta)。また、ジャンパー膝では、バスケットボールなどの跳躍競技において、膝蓋靭帯などに炎症が起きることで生じる比較的遭遇することの多い疾患です。膝蓋靭帯の瘢痕化や短縮は、膝蓋骨低位(Patella baja)を生じることがあり、膝伸展制限を呈します。

内側広筋斜走繊維・外側広筋斜走繊維

内側広筋斜走繊維(Vastus medialis oblique)は、内転筋腱板を介して大内転筋から、膝蓋骨内側縁に付着します。この繊維は、膝蓋骨を内上方へ引き上げる作用があると同時に、下腿の内旋にも影響を与えます。また、この繊維の機能低下がExtension lagの原因とする報告も多くあります。

膝は内側広筋の斜走線維によってのみの伸展が不可能である。膝の最後の15°の伸展にはそれまでの伸展に要した力の60%増しの力が必要とされる。そこで、斜走線維が膝蓋骨を大腿骨溝に(中心に)位置させるように収縮すれば13%より少ない力で可能となる。

出典:Calliet著「膝の痛みと機能障害」

また、膝関節は生理的に外反しており、大腿四頭筋(特に外側広筋)の影響で、膝蓋骨は外方偏位を起こしやすい形態となっています。それに拮抗するためには、この内側広筋斜走繊維の存在は大きな意味を持っています。

外側広筋斜走繊維は、腸脛靭帯より起始します。よって、大腿筋膜張筋の張力に筋出力は影響を受けます。この事実は、膝関節拘縮がある場合に、膝周囲だけでなく大腿筋膜張筋の筋力や伸張性までも評価すべきことが言えます。

内側膝蓋支帯・外側膝蓋支帯

内側膝蓋支帯・外側膝蓋支帯(patellar retinacular fibers)は膝の関節包を補強しています。これは、強靭な結合繊維であり、網のように張りめぐらされた広範囲な繊維は、大腿骨・脛骨・膝蓋骨・大腿四頭筋・膝蓋靭帯・側副靭帯・半月板の間で連結されています。内側膝蓋支帯は内側広筋から起こり、脛骨内側に連結しています。同様に、外側膝蓋支帯は、外側広筋から起始し脛骨の外側へ連結しています。

この2つの支帯は、膝伸展力の補助的な役割とともに、下腿の内外旋(内側膝蓋支帯の緊張により下腿は内旋し、外側膝蓋支帯の緊張により下腿は外旋します)にも関与します。よって、膝屈曲制限因子としての、この2つの支帯の影響も日々の臨床において評価すべき項目といえます。

内側膝蓋大腿靭帯・外側膝蓋大腿靭帯

膝蓋支帯の深層において、膝蓋骨と大腿骨を連結している繊維束を膝蓋大腿靭帯(Patello-femoral ligament)と呼びます。

膝蓋大腿関節における膝蓋骨内側支持機構については、内側膝蓋大腿靭帯が最も早期に膝蓋骨の外方偏位を制動する組織として証明されています。特に、膝蓋骨脱臼に関しては、内側大腿膝蓋靭帯の再建術の良好な成績が報告されております。外側大腿膝蓋靭帯については、明らかな繊維束として触れられない程度の場合もあります。膝蓋骨外方偏位アライメントが長期間に及んだ場合、外側膝蓋大腿靭帯は拘縮を引き起こす場合があるので注意が必要です。

膝蓋下脂肪体

膝蓋下脂肪体(infrapatellar fat pad)は、膝前方において滑膜と膝蓋靭帯の間に存在しています。もう少し具体的に言えば、関節包内にはありますが、滑膜外にあるということです。膝蓋下脂肪体は、膝蓋大腿靭帯の関節に介在することで、間接的に関節の接触面積を増大させています。膝蓋下脂肪体は、その内圧変化が重要であり、膝伸展最終域や、屈曲最終域において内圧が高くなりやすいようです。膝蓋靭帯炎における疼痛発生メカニズムにおいては、この組織の影響があると言われています。

まとめ

膝蓋骨は、膝可動域に大きな影響を与える部位ではあるが、その安定性には各組織の張力バランスなどが重要です。それぞれの組織に拘縮や機能低下がないかどうかを評価していくことで、臨床でのリハビリ効果は向上するものと考えています。