小胸筋の作用と触診方法について【筋力トレーニング】

前胸部にある筋肉の中では比較的マイナーである小胸筋(pectoralis minor muscle)ですが、近年小胸筋トレーニングは様々な効果があるなどして注目が集められています。

ここでは、そんな小胸筋を効果的に触診・トレー二ングしていくための方法をご紹介します。

小胸筋の概要

起始・停止

小胸筋は、以下の場所に付着します。

  • 起始:第3~第5肋骨前面、肋間腔を覆う深筋膜
  • 停止:肩甲骨の烏口突起

作用

小胸筋には、以下のような作用があります。

  • 肩甲骨の下制、前傾
  • 肩甲骨の下方回旋
  • 肩甲骨を前方へ引く
  • 吸気の補助

通常は、小胸筋は肋骨に対して肩甲骨を動かすための筋肉として作用します。

しかし、肩甲骨を固定した場合には、逆に肋骨を上方へ引き上げます。これをリバースアクション(筋の逆作用)と呼びます。それにより、吸気の補助筋としても作用するのです。

神経支配

胸筋神経(C5~T1)

※小胸筋の深部を腕神経叢・鎖骨下動静脈が通過します。

触診方法

吸気補助筋としての作用を利用する

触診方法としては、烏口突起から始まる小胸筋が、吸気時に補助筋として収縮するという作用を利用します。

そのためのポイントは次の通りです。

  1. 烏口突起を正確に触れる
  2. 肩甲骨を胸郭に固定する
  3. しっかりと胸を張る
  4. 大きく息を吸う

烏口突起を触る

まず、起始部となる烏口突起を触れます。

烏口突起は、鎖骨を3分割にした際の外側1/3の位置から、1横指下方にあります。

別の言い方をすれば、烏口突起は、胸鎖関節から真っすぐ伸びる鎖骨がちょうど後方へ折れ曲がる部位から1横指下方に存在しています。

ここを正確に触れないと、小胸筋は見つかりにくいので注意して下さい。

肩甲骨を胸郭に固定する

他動的に肩甲骨を固定しても良いのですが、簡単なのは肩を伸展内転させることです。

これにより肩甲骨は胸郭に固定され、動きが制限されます。

前述したように、リバースアクションとして小胸筋が吸気補助筋として作用するためには、肩甲骨が動かないようにする必要があります。

さらにこの肢位は、大胸筋が比較的緩むので、その深部にある小胸筋を触りやすいというメリットがあります。

しっかりと胸を張る

肩の伸展内転を行うと、肩甲骨は前傾・下方回旋しやすくなります。要するに、小胸筋の起始と停止が近づきます。

効率的に小胸筋を働かせるためには、起始と停止の付着部間がある程度離れていないと効率がよくありません。

そのため、この肢位からしっかりと胸を張り、肩甲骨の前傾・下方回旋を最小限に留めます。

大きく息を吸う

烏口突起から下方へ指をずらし、そこで触診しながら、大きく息を吸います。

いわゆる胸式呼吸を行うために、肋骨を上へ引き上げるような意識をもって吸気を行います。

すると、小胸筋が緊張する様子を触ることができます。

小胸筋の働く様子は、大胸筋の下から筋肉が盛り上がってくるような形で触診できます。

もし分かりにくければ、指を烏口突起下方よりも内側にずらし、小胸筋がある部分と無い部分との違いを触り分けると、その差が分かりやすいかと思います。

この方法で患者さんの小胸筋を触診する際には、アライメントを整えてしまえば、息を大きく吸っていただくだけで良いので、指導しやすいというメリットがあります。

小胸筋のトレーニング

強い負荷は必要ない

小胸筋は、いわゆるインナーマッスルです。

インナーマッスルは、大きく関節の動きを出す筋肉ではなく、どちらかと言えば関節を固定したり微調整したりするための筋肉です。

よって、ダンベルを使用したりする強い負荷は必要ありません

むしろ、強い負荷をかけてしまうと、アウターマッスルである大胸筋などが働いてしまう可能性があるため、弱い負荷の方が適しています。

触診の方法でトレーニングは十分に可能

先ほどご紹介した触診の方法でも、筋力トレーニングは十分に可能です。

肩甲骨を固定して胸を張り、大きく呼吸するだけでも小胸筋は働きます。その際には、肋骨を引き上げるよう意識をして、息を最後まで吸い続けると効果的です。

大胸筋も働かないので、効果的に小胸筋のトレーニングができます。

自分の反対の手で、小胸筋を触りながら行うと、より一層筋肉が働いている様子が分かると思います。

まとめ

小胸筋を起因として生じる病態には、『小胸筋症候群』が挙げられます。

小胸筋症候群の原因と症状について。

また、肩関節疾患などにおいても、肩甲骨のアライメントに影響を与える小胸筋の存在は重要です。

ぜひ、小胸筋の触診方法や筋肉の働き方のパターンを理解しておきましょう。