枕の高さを合わせるだけでは不十分?頭痛や肩こりに効く『枕リハビリ』のススメ

「枕は高い方が良いですか?低い方が良いですか?」

これは、肩こりや頭痛で悩む方からよくいただく質問です。

多くの方が、枕が合わないことに悩んでいらっしゃることを日々感じています。

ここではリハビリの視点から、枕について考えてみます。

枕の必要性

頭部の重さに対応する頸部筋

人間の頭部は、体重の10分の1程度と言われています。

体重60Kgの方であれば、6Kgです。

お米5㎏の袋より重いものを乗せていると考えると、どれだけの負担か分かると思います。

その重い頭部の重心線(頭部の重さが作用する線)は、正常であっても頸部の支点の前方に位置しています。

立位や座位で首の力を抜くと、頸部が前方へ自然に屈曲するのは、このような構造のためです。

それに対応するために、頸部後方の筋肉は、絶えず頭部を前方へ倒す頭の重量と均衡しなければいけません。

枕の役割

起きている間は、常に座っているか立っているわけですので、頸部の筋肉が休まる暇がありません。

1日の3分の1を占める睡眠時間は、唯一筋肉が休息できる時であり、その間に筋肉の状態をリセットしなければいけません。

枕の役割は、一日中働き続けた筋肉を休ませることと言えるでしょう。

よって、朝起きた時にだるさが残るような場合には、十分頸部の筋肉の休息がとれていないのかもしれません。場合によって、頭痛や肩こりといった症状で現れることもあるでしょう。

枕リハビリについて

 枕を補助具として考えてみる

人間の正常の頸椎は緩やかに前方にカーブしており、その角度は30~35°です。

これが【理想の姿勢】と呼ばれています。

この姿勢は、直立した際に重い頭部を支えるのには適していますが、横になった際には、どうしても頭頸部後方に隙間が生まれます。

そのため、枕は人間の構造的な問題を補助するための道具(補助具)と考えても良いかと思われます。

リハビリは両方向からアプローチ

リハビリは、常に両方向からのアプローチが必要です。

枕を補助具として考えた場合、やはり両方向からの視点が必要です。

すなわち、

  • 体に合わせた枕を使う
  • 枕を使いやすい体を作る

この両者を考えてみてはどうでしょうか。

歩くのに支障のある方が、杖を使うだけでなく足のリハビリもするのと同じです。

良い枕の条件

以上のことを踏まえた上で、良い枕の条件を2つに集約してみたいと思います。

  • 筋活動が行われていない
  • 寝返りがしやすい

どちらも、筋肉へ負荷をかけないという点では同じです。

体に合わせた枕選び

パーキングファンクションという考え方

パーキングファンクション(Parking function)とは、支持面に接した身体部分が、筋活動で結合されずに独立した重心をもって支持面から支えられている状態のことを指します。

これを枕に応用して言えば、少なくとも頭部頸部が、それぞれ独立した重心を持つ物体として支えられる必要があります。

枕の『高さ』と『硬さ』を決める際に、この考え方は役に立ちます。

枕の高さ

先ほど、横になった際には頸部の後方に隙間が生まれることについて触れました。

頚部には頸椎弧と呼ばれる、第7頸椎を基点に始まる弧を描くようなカーブが存在します。このカーブで生まれる隙間を埋めることが、枕には求められます。

人間の安静肢位は、顔面が5~6°傾斜する姿勢であると言われています。

その肢位を取った上で、頸椎弧の深さを計測することで、理想的な枕の高さを知ることができます。

この頸椎弧の深さの計測は、専用の計測器を使用するのがベストですが、簡便に行うとすれば、以下の方法があります。

1:第7頸椎を触診する

第7頸椎の触診は比較的容易にできます。

頚部を前屈させ、最も突出するものが第7頸椎の棘突起です。

このような特性を持つことから、第7頸椎は別名を“隆椎(りゅうつい)”とも呼びます。

2:顔面が5~6°傾斜する肢位を取る。

3:第7頸椎から垂直に手掌を置く。

4:ものさしや定規を頸椎弧の最も深い部分を計測する。

この数字を基準に、枕の高さを決定するのが良いでしょう。

側臥位での高さ

また、側臥位(横向き)になった際に、頭部と体幹が一直線になっていることも、当然大事なことです。

枕の硬さ

枕の硬さは重要な要素です。

硬すぎれば、圧の分散ができないので良くないでしょう。また、沈み込みすぎる枕は高さの調節が難しくなります。

適度に硬く、尚且つ頭部と頸部の圧がそれぞれ分散するようなものでなければいけません。

重要なのは、先ほどパーキングファンクションの話を出しましたが、頭部と頸部がそれぞれ独立した重心を持つ物体として支えられているかどうかということを評価することです。

枕はフラットなものを

寝返りしやすいということは、就寝時に余計な筋活動をしなくても済むということです。

そのため、枕はできるだけフラットなものを選択すると良いかと思います。

枕に合わせた体作り

寝ている向きの問題

寝返りを考えた際に、背臥位(仰向き)と側臥位(横向き)の両方で枕が適合することを考えなければいけません。

これは難しい問題です。

なぜなら肩幅というのは個人差があり、背臥位で適合していた枕も、側臥位になれば不適合となる可能性があるからです。

肩甲帯の動きを調整する

肩甲骨の内転・外転で、肩幅というのは変化します。

それにより、側臥位になった際の頸部の傾きも変わることが予想されます。

下の図をご覧ください。

枕の高さは同じですが、肩甲骨の位置によって頸部の向きが異なっているのが分かります。

この図で言えば、左側の図では右頸部筋が伸長されてしまう可能性があります。

よって、肩甲骨周囲の筋肉の柔軟性や筋力の調整を行うことで、より枕に適合した体を作ることができると言えます。

肩甲骨の内転・外転で言えば、菱形筋などは重要な筋肉です。

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頸椎の分節的な動き

頸椎の重さを均等に分散するには、頸椎に分節的な動きが重要です。

下の模式図をご覧ください。

分節的な動きに乏しい例では、枕に相当の適合性が無ければ接触面積(赤色で示した範囲)が狭くなります。

しかし、頸椎の分節的な動きが十分ある例では、枕に合わせて頸椎が適合するために、接触面積が大きくなります。

これも、パーキングファンクションを考える際には重要な要素です。

頸椎の分節的な動きには、僧帽筋や胸鎖乳突筋、肩甲挙筋、半棘筋といった長く厚みのある筋肉に加えて、頭長筋や棘間筋、後頭下筋群といった比較的短く分節化した筋肉の働きが重要です。

よって、そのような筋肉の柔軟性などの評価が必要です。

これには専門的な視点が不可欠です。

特に後頭下筋群は、頸部の最深層で頭部と頸部をつなぐため特に重要です。

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まとめ

適合した枕を使用するということは、頭痛や肩こりの予防・改善につながることも多くあります。

良い枕を使うということはもちろんのこと、どうすれば枕に適合した体を作っていけるのかという視点も加えてみると良いのではないでしょうか。