梨状筋症候群の原因と評価方法について

『坐骨神経痛』

よく耳にするこの言葉は、お尻の痛みや下肢のしびれなどの症状を表しています。

梨状筋症候群とは、梨状筋が引き金となって生じる坐骨神経痛の一つであり、リハビリでもよく遭遇する病態の一つです。

ここではリハビリへ繋げるための知識として、梨状筋症候群の原因とその評価方法についてご紹介します。

坐骨神経と外旋筋群の関係

坐骨神経とは?

坐骨神経(sciatic nerve)は人体で最も太い神経であり、L4~S3から始まり、大坐骨孔を抜けて骨盤を出ます。

坐骨神経が支配するものは以下の通りです。

  • 大腿後面(後区画)の全ての筋
  • 大内転筋の一部
  • 下腿と足のすべての筋
  • 下腿外側・足外側・足底の皮膚領域

これらの理由により、坐骨神経が障害されることで感覚障害や筋力低下が起きることになります。

坐骨神経は、脛骨神経(tibial nerve)と総腓骨神経(common fibular nerve)に分かれていきます。

股関節外旋筋群とは?

股関節を外旋させる筋肉は、一般的に深層外旋6筋と呼ばれます。

それらは次の通りです。

  1. 梨状筋
  2. 上双子筋
  3. 内閉鎖筋
  4. 下双子筋
  5. 外閉鎖筋
  6. 大腿方形筋

これらの内で、梨状筋症候群に関わるものは1~4の筋肉です。

 坐骨神経と外旋筋群の関係

坐骨神経は、梨状筋深層を通過した後に、上双子筋・内閉鎖筋・下双子筋表層を通過します。

要するに、坐骨神経というのは殿部において・・・

  • 梨状筋により上から押し付けられ
  • 上双子筋・内閉鎖筋・下双子筋により下から突き上げられる

といった絞扼(しめつけられること)されやすい構造をしています。

坐骨神経の異なる走行

ほとんどの場合において坐骨神経は梨状筋の下をくぐるような走行をしていますが、全てがそうではありません。

タイプA

Beaton¹⁾によると、前述したように坐骨神経が梨状筋の深層を走行するものがタイプAであり全体の90%であったとのことです。

Beatonによる分類では、これ以外の走行をするパターンもあります。

このタイプA以外の坐骨神経の走行の形態は、『破格』という言葉として知られています。

次に、そのいくつかを記載します。

タイプB

坐骨神経が2つに分かれて、梨状筋の筋腹の中を貫くものと、梨状筋の下方を通過するものの両者が存在するものがタイプBです。

このタイプは全体の7%だったとのことです。

タイプC

坐骨神経が2つに分かれ、梨状筋の上と下を走行するものがタイプCです。

これは全体の2%だったとのことです。

タイプD

坐骨神経が梨状筋の筋腹の中を、全て通過するものがタイプDです。

これは全体の1%存在したとのことです。

梨状筋症候群の原因

梨状筋症候群の原因は、次の2つが考えられます。

  1. 解剖学的な『破格』を伴うもの
  2. 解剖学的な異常を伴わないもの

1.解剖学的な『破格』を伴うもの

梨状筋症候群の報告では、解剖学的な『破格』を伴ったとするものがいくつもあります。

特に、梨状筋内を坐骨神経が貫通するようなタイプに発症しやすいと言われています。

確かに、梨状筋内を貫通するようなタイプでは、容易に坐骨神経が絞めつけられやすいと考えるのは理にかなっているようにも思えます。

2.解剖学的な異常を伴わないもの

タイプAのように解剖学的な異常を伴わないものでは、股関節の不安定性や疼痛に伴う梨状筋などの筋攣縮(スパズム)が原因となっていると考えられます。

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解剖学的な異常を伴わないパターンでは、梨状筋は上から、上双子筋・内閉鎖筋・下双子筋は下から坐骨神経を押さえるような構造をしています。

これらの筋が攣縮を起こすことで、坐骨神経は挟まれるような形で圧迫を受けます。

これを模式図で表してみます。

両者の筋は外旋作用を有しており、同じように股関節の安定性を高める役割を持っていることから、同時に攣縮を引き起こすことがあります。

すると、坐骨神経はより締め付けられやすくなるでしょう。

しかし当然、梨状筋単独の攣縮だけでも坐骨神経を圧迫する可能性は十分にあります。

鑑別は容易ではない

坐骨神経の解剖学的な走行を見分けることもそうですが、腰椎椎間板ヘルニアなどの他の坐骨神経症状と梨状筋症候群を鑑別するのは簡単ではありません。

なぜなら、梨状筋症候群は特徴的な画像所見に乏しいといった面があるからです。

よって臨床での評価の実際では、いくつかの評価を織り交ぜて、病態を総合的に判断していく必要があります。

梨状筋症候群の評価

評価項目

梨状筋の一般的な評価項目は以下の通りです。

  • 圧痛検査
  • 整形外科的テスト(フライバーグテスト・ペーステスト・ラセーグテスト)
  • 筋力テスト
  • 感覚テスト
  • 深部腱反射テスト

 圧痛検査

圧痛検査では、梨状筋を正確に触診できるかどうかが全てです。

梨状筋の触診は、腹臥位もしくは側臥位で行います。

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梨状筋(りじょうきん)の起始停止・作用・触診方法、ストレッチ方法について。

 整形外科的テスト

梨状筋症候群の代表的なテストを挙げます。

  • フライバーグテスト(Freiberg‘s test)
  • ペーステスト(Pace‘s test)
  • ラセーグテスト(Lasègue test)

フライバーグテスト

フライバーグテストは、背臥位で股関節を屈曲・内転・内旋させ、坐骨神経痛の有無を見ます。

これは、梨状筋などを伸長させることで疼痛を誘発させるテストです。

ペーステスト

ペーステストは、座位で股関節を内転・内旋させる方向に抵抗を加えることで、坐骨神経痛が出現するかどうかを見るテストです。

梨状筋を収縮させることで、疼痛を誘発します。

ラセーグテスト

ラセーグテストは、いわゆるSLRテストのことであり、下肢の伸展挙上に際して坐骨神経痛が出現するかどうかを見ます。

 

筋力・感覚・深部腱反射テスト

坐骨神経障害を評価においては、殿筋の萎縮がないかどうかや、下肢の感覚異常の有無、深部腱反射の減弱などが起きていないかを把握することが重要です。

特に、腰部椎間板ヘルニアと混同しないためにも、これらの評価を行う必要があります。

坐骨神経の走行に関する問題などについては、医師とよく相談をする必要してリハビリを進めるべきです。場合によっては、MRI画像などからリハビリのヒントを得ることができるかもしれません。

梨状筋症候群のリハビリ

梨状筋症候群についての具体的なリハビリはこちらの記事をどうぞ。

梨状筋症候群のリハビリについて【梨状筋のストレッチだけでは不十分】

まとめ

梨状筋症候群のリハビリを行うためには、なぜ梨状筋症候群が起きるのかということを理解する必要があります。

病態の予測は、効果的なリハビリへと繋げるためには重要です。

参考文献

1)Beaton,L.E., et al.:The siatic nerve and the piriformis muscle;their interrelation a possible cause of coccygodynia. J.Bone Joint Surg.,20:686-688,1938