梨状筋症候群のリハビリについて【梨状筋のストレッチだけでは不十分】

梨状筋症候群のリハビリについては、何をすれば良いか思いつかないという方も多くいらっしゃるかもしれません。

なぜなら梨状筋症候群のリハビリでは、むやみやたらにストレッチしたりマッサージするだけでは改善に乏しいばかりか、かえって痛みを増悪させることもあるからです。

ここでは、リハビリのコンセプトとその実際の流れをご紹介させていただきます。

梨状筋症候群について

梨状筋の解剖学的特徴を理解する

梨状筋症候群のリハビリを行うにあたり、まずは梨状筋の解剖学的特徴を理解する必要があります。

具体的には、次のことを把握しておきます。

  1. どこからどこへ付着しているか(起始停止)
  2. どこを通過するか(走行)
  3. どのような働きをするか(作用)
  4. 負荷が強まる姿勢や動作

まずはこの4つのことを押さえておきましょう。

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梨状筋症候群の原因と評価

梨状筋症候群の症状は、坐骨神経痛(お尻の痛みや下肢のしびれなど)として現れてきます。

その原因は、坐骨神経が梨状筋の周囲で圧迫されたり絞めつけられたりすることによるものです。

しかし、梨状筋の周囲というのが漠然としているために、「なんとなくストレッチしておけばいいかな?」と考えがちになってしまいます。

効果的なリハビリを行うためには、梨状筋の周囲で何が起きているかを予測できる(仮説を立てる)ことが重要です。

そのためには、梨状筋周囲での坐骨神経の圧迫が、次の2つに大別できることを理解しておきます。

  • 解剖学的な『破格』を伴うもの
  • 解剖学的な異常を伴わないもの

※これらは理学所見(視診・触診など)だけ鑑別できるものではありません。

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梨状筋のストレッチについて

いきなりのストレッチはNG?

梨状筋症候群では、坐骨神経が筋肉(梨状筋上双子筋・内閉鎖筋・下双子筋)のどちらか・もしくは両方によって圧迫されることで症状が出ます。

そのため、まずは筋肉の状態を考えてみましょう。筋肉は、おそらく次の内のどちらかが起きているはずです。

  1. 筋肉の短縮
  2. 筋肉の攣縮(スパズム)

結論から言ってしまえば、1ではストレッチが有効ですが、2においては必ずしもストレッチが有効であるとは言えません。

1.筋肉が短縮している場合

筋肉の短縮が起きている場合には、ストレッチが効果的でしょう。

特に、股関節が長期間内旋位となっていた場合などには、相対的な位置関係から梨状筋を始めとする外旋筋群の短縮が起きているかもしれません。

そのような場合では、下のような股関節屈曲・内旋位における梨状筋のストレッチは有効でしょう。

その際のストレッチは、痛みの範囲内でスタティックストレッチとしてゆっくりと行うべきです。

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2.筋肉が攣縮している場合

筋肉の攣縮が起きている場合には、ストレッチは有効ではないこともあります。

筋攣縮により筋緊張が高まると、血管が圧迫されて血流障害が起きます。すると、ブラジキニンやプロスタグランジンのような発痛物質が産生されて痛みが強まります。

このような状況下でストレッチを行うのは、痛みが出やすく効果的とは言えません。それでも、どうしても行うとすれば、やはりⅠb抑制の利用を目的とした、スタティックストレッチに限られます。

それよりも、筋攣縮に対しては温熱療法などの物理療法を用いたり、筋のポンプ作用を利用した筋収縮エクササイズを反復するようなリラクセーションの方が、より改善を期待できます。

筋肉の短縮か攣縮かを見分けるポイントは、下の記事を参考にして下さい。

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『筋の短縮』と『筋の攣縮(筋スパズム)』の違いと評価・治療について。~どちらもストレッチで良いのか?~

梨状筋症候群のリハビリ

梨状筋症候群により坐骨神経障害が起きている患者さんのほとんどは、梨状筋の攣縮によるものです。

それを踏まえて、ここではリハビリの一連の流れの例をご紹介します。

  1. 外旋筋群のリラクセーション(できるだけ筋別に行う)
  2. 神経の滑走訓練
  3. アライメントの調整

 1.外旋筋群のリラクセーション

最初に、主に梨状筋上双子筋・内閉鎖筋・下双子筋の筋攣縮を改善させます。

これらは、筋攣縮によって坐骨神経を締め付ける要因です。

リラクセーションには、前述したように筋ポンプ作用を利用した筋収縮訓練を利用しますので、それにより坐骨神経へのストレスが加わりやすくなります。

そのため、坐骨神経は可能な限り緩ませるような肢位を取らせることが重要です。

梨状筋のリラクセーション

梨状筋のリラクセーションの流れは次の通りです。

  1. 坐骨神経を緩めるために、腹臥位で膝屈曲位とする。
  2. 効率よく梨状筋が筋収縮できるようにするため、股関節は内転位とする(起始と停止を引き離す)。
  3. 自動もしくは自動介助で、股関節外旋運動を反復する。

Point

運動は、痛みが出ない範囲で軽めに行う。

梨状筋を触診しながら、その収縮の程度を確認する。

上双子筋・内閉鎖筋・下双子筋のリラクセーション

この3つの筋肉のリラクセーションの流れは次の通りです。

  1. 坐骨神経を緩めるために、腹臥位で膝屈曲位とする。
  2. 梨状筋の作用を減らすため、股関節は中間位~外転位とする。
  3. 股関節外旋運動を反復する。

梨状筋の逆作用を利用した方法

上記の2つの方法は、坐骨神経を緩ませた肢位で行うことができるために神経の伸長によるストレスは軽減されます。

しかし、梨状筋上双子筋・内閉鎖筋・下双子筋はどちらの方法でも少なからず働いてしまいますので、両者の間で神経が絞めつけられるようなストレスは完全には避けられません。

そこで、梨状筋の逆作用を利用した方法も使います。

梨状筋の逆作用とは、股関節屈曲90°においては、梨状筋は股関節の外旋作用から内旋作用に切り替わることです。

これを利用することで、梨状筋上双子筋・内閉鎖筋・下双子筋はそれぞれ別個に収縮させることができます。

具体的な方法としては、次の通りです。

  1. 背臥位において股関節を90°屈曲させる。
  2. そこから、股関節外旋・内旋へと反復収縮運動をさせる。
  3. 最初は自動介助運動から、徐々に自動運動へと切り替えていく。

こうすることで、外旋させた際には上双子筋・内閉鎖筋・下双子筋が収縮し、内旋させた際には梨状筋が収縮するはずです。

そして、それらは共同して働くことはないため、筋収縮による坐骨神経の締め付け自体は軽減できるでしょう。

しかし、股関節を屈曲位にすることで、坐骨神経は伸長されます。

そう考えると、前述した腹臥位での運動とは一長一短があるように思えます。どちらが有効なのかは、ケースによって異なるのかもしれません。

2.神経の滑走訓練

リラクセーションにより外旋筋の攣縮が改善すれば、締めつけられていた坐骨神経は動きやすくなります。

しかし、長期間の絞扼や坐骨神経周囲での炎症などから、坐骨神経と周囲組織との間に滑走制限が生じていることがあります。

そのようなケースでは、いかに外旋筋の柔軟性が改善したとしても、痛みが残ってしまいます。

そこで、坐骨神経の滑走訓練が必要です。

坐骨神経の滑走訓練

まずは、外旋筋群を含めた殿部周囲での滑走を改善させます。

背臥位において、股関節を屈曲させながら坐骨神経を伸ばしていきます。その際には、総腓骨神経や脛骨神経への伸長刺激を同時に行わないように、膝屈曲位で行います。

総腓骨神経の滑走

殿部での坐骨神経の動きが改善されたら、下腿での総腓骨神経の滑走訓練を行います。

背臥位において、股関節外転位から屈曲・内転方向へストレッチさせていきます。

そうすることで、腓骨頭下部から前面へ向かう深腓骨神経を含めて、総腓骨神経の滑走を促すことができます。

これらは、痛みが無い範囲で徐々に行う必要があります。

3.アライメントの調整

梨状筋症候群は、股関節が過度に内旋位であったり、骨盤が前傾していたりすることで負荷が加わりやすくなります。

よって、股関節や腰椎・骨盤帯のアライメントを整えることで、症状の予防が図れます。

特に、変形性股関節症などの股関節が不安定になっているような方では、アライメント不良であることが多々あるので注意が必要です。

まとめ

梨状筋症候群は、病態を把握することが困難なことが多くあります。

だからこそリハビリの効果判定をしっかりと行い、何が効果的で何が効果的でないのかを集約させることで、少しずつ解釈していくことが必要です。