大腿直筋反回頭(はんかいとう)と股関節痛の関係

大腿直筋は大腿四頭筋の一つであり、その中でも唯一のニ関節筋として広く知られています。

大腿直筋は、少なくとも直頭(Straight head)と反回頭(Reflected head)に分かれており、それぞれ解剖学的な特徴が異なる部分があります。

ここでは反回頭の特徴や、股関節痛との関係などについて、若干の考察を踏まえてご紹介します。

大腿直筋について

概要

大腿直筋(rectus femoris muscle)の筋繊維は二層構造となっており、浅層は羽状構造となっており、深層は筋繊維が平行に配列されているような形態をしています。

また、大腿直筋は大腿四頭筋の中央における表層に位置しており、広筋群とともに膝関節の伸展に働きます。

下の図は大腿骨中央付近での大腿部の断面図です。

また、大腿四頭筋の中でも唯一のニ関節筋であることから、股関節の屈曲にも働きます。また、下肢を固定すれば、リバースアクションとして骨盤の前傾作用として機能します。

大腿直筋は、股関節における等尺性屈曲トルクの約1/3を占めていると言われています。

起始・停止

起始

①下前腸骨棘

②寛骨臼上縁・関節包

停止

膝蓋靭帯を介して脛骨粗面

反回頭の起始

「大腿直筋の起始はどこですか?」

この質問に対して、

「下前腸骨棘」

と答える方が多いかと思います。

もちろんそれも大腿直筋の起始ですが、下前腸骨棘はあくまでも直頭(Straight head)の起始部のことです。

もう一つの起始として、寛骨臼上縁や関節包があり、ここに反回頭(Reflected head)が付着しています。

大腿直筋のもう一つの起始である反回頭は、腸骨大腿靭帯(関節包靭帯)を介して臼蓋の上縁に付着していると言われています。

股関節角度による働きの違い

直頭と反回頭は、起始部が異なることから、股関節屈曲角度による働きに違いがあります。

股関節屈曲0°

股関節屈曲0°における股関節屈曲動作では、大腿直筋の筋繊維は直頭の方向と一致します。

よって、この肢位で股関節屈曲動作を行う際には、直頭が主に引っ張られることになります。

股関節屈曲90°

股関節屈曲90°では、大腿直筋の筋繊維は反回頭の方向と一致します。

こうなると、今度は反回頭が主に引っ張られることになります。

評価と治療への応用

このように、股関節の肢位によってどちらの起始部が引っ張られるかが分かれるということは、そのまま評価や治療に応用できます。

収縮時痛を確認する場合やストレッチなどでは、股関節肢位を考慮した上で行うことで、選択的に大腿直筋へのアプローチを行うことができます。

大腿直筋と股関節痛との関係

股関節インピンジメント

股関節疾患における様々な症状の中でも、股関節前面部痛というのは比較的多い傾向にあります。

その中には、股関節インピンジメントfemoroacetabular impingement=FAI)のような病態があります。

股関節というのは、頚体角が存在することにより、通常の屈曲動作では頸部と臼蓋がぶつかりやすい構造をしています。

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そこに構造的な問題が加わることで、股関節はインピンジメントされることになります。

インピンジメントにより大腿直筋は影響を受ける

股関節インピンジメントでは、次の2点が衝突する可能性があります。

  1. 大腿骨頸部と下前腸骨棘
  2. 大腿骨頸部と臼蓋前上方

1では、主に下前腸骨棘から起始する大腿直筋直頭が、頸部と下前腸骨棘の間で挟まれる可能性があります。

2では、臼蓋の縁がぶつかる際に、まずは股関節の関節唇へダメージが加わります。

関節唇は腸骨大腿靭帯と連続していることから、このダメージが大腿直筋反回頭へも影響を与えると考えるのはおかしなことではありません。

少なくとも、炎症が反回頭に至るまで波及していく可能性はあります。

大腿直筋の筋攣縮

上記のように、大腿直筋へのダメージが加わると、痛みによる防御性収縮(筋攣縮=筋スパズム)が生じます。

その上でさらにインピンジメントが起きれば、股関節前面部痛はさらに増強されることになるでしょう。

よって、大腿直筋の直頭と反回頭は、どちらも股関節前面部痛の原因となる可能性があります。

まとめ

股関節の前面部痛を中心に、大腿直筋が絡む病態は少なくありません。

大腿直筋の特徴を理解することで、より正確なリハビリへとつなげていくことができると思います。その際には、反回頭の存在も考えてみても良いかもしれません。