スポーツに活かす“反射神経”のトレーニング方法。バッティングを例にして説明します。

自分は“反射神経”が悪いからスポーツが苦手だ・・・。

生まれつき“反射神経”がいい子は何をやっても上手だ。

こんなことを思ったことありませんか?実は“反射神経”なんて単語は造語であって、医療現場では一回もそんな言葉は出てきません。

じゃあ、一体“反射神経”って何なんだ?鍛えて良くしていくことはできないの?

 

今回はそういった疑問の一つの答えをご紹介します。

 “反射神経”の正体

反射神経の正体は、目と脳と体の一連の活動システムです。もう少し分かりやすく言うと、目でとらえた出来事・ものを、脳が判断処理をして、体に指令をだしているのです。

ということは、それらの各々の活動システムを理解して、具体的にトレーニングしていくことで、“反射神経”は良くなっていくはずです。

それでは、一つずつ見ていきましょう。

目の役割

まず、目の眼球運動は、滑動性眼球運動(pursuit)と、衝動性眼球運動=サッカード(saccade)というものがあります。

滑動性眼球運動とは、野球のボールを追うようなときに、動く対象を網膜の中心窩でとらえ続けることで起きるゆっくりとした眼球運動です。目の前に指を立てて、右や左や上下に指を動かしてみて下さい。それを見ているときには、眼球が動くと思いますが、そのことです。

サッカードとは、静止しているものを見るときのような非常に高速の眼球の動きです。物から物へ視線を移す時、眼球はかなり早い速度で回転するわけですが、見えている範囲の映像はぶれません。ビデオカメラだとすれば、カメラを急に動かすと、映像がぶれますが、そのようなことが起きないわけです。これは、サッカード中の知覚を低下させるという抑制(サッカード抑制)が起きるためです。サッカードは、物体が動いているものを捉えることには向いていません。

野球などのボールを使う競技において、ボールがかなりの速度で自分に向かって飛んできている場合などでは、まずは滑動性眼球運動において、ボールをとらえようとするわけですが、それには限界があり、眼球運動はサッカードに切り替わります。しかし、サッカードは動いているものを捉えるのは苦手です。

ポイント要するに、高速で飛んでくるボールを目だけでとらえ続けることは不可能ということ

しかし、実際には、プロ野球選手はあんなに小さなボールが高速で飛んでくるのに、実に見事に捉えていますよね?

では、どのように飛んでくるボールを認識するのでしょうか。そこで、脳の役割があるわけです。

脳の役割

目でとらえきれないのであれば、脳で補正していくしかありません。先ほどの例で言えば、ボールが飛んできて、途中までは目で追っているわけですが、途中で眼球運動では捉えられなくなります。すると、脳はボールがこの後どのような動きをするかを予想します。そして、ボールの到着地点を推測した結果、そこにボールがあたかもきているような認識をさせるのです。

目では見えていませんが、脳が認識させることによって、見えているかのように反応できるわけです。それには、反復する経験が必要です。ボールの軌道は様々なので、それぞれの軌道がそのあとどのようなコースで向かってくるかを予想しなければいけません。ピッチャーの投げる球が、ストレートなのかカーブなのかで、軌道は大きく異なるわけですが、それぞれの到着地点を予測するには、相当な努力で経験を積む必要がありそうです。

ポイント目でとらえきれない部分は、脳が補正するが、それには経験が必要

具体的な練習方法を提案します。

実際の練習方法

先ほどの野球のボールを例にしましょう。僕の担当患者さんで、バッティングの相談をしにくる子がたまに来ますが、「ボールになかなか反応できない。何度もバッティングセンターで打つ練習をしている。」といったことをよく言います。

しかし、まずは自分の体を動かす必要はありません。

まずは、バッターボックスの中でじっとして、ボールの軌道をじっくり観察しましょう。それも10回20回ではなく、100回200回とです(場合によっては、その何倍も)。そして、目で見ることのできるギリギリまで飛んでくるボールを見続けて下さい。見えなくなったとしても、目をそらさずに、最後まで見るように努力して下さい。重要なポイントは、目で追えなくなった最後の瞬間は、到着予想地点(バットを振った際に当たる場所)に瞬間的に視点を移動させて、そこでボールを捉える努力をします。

すると、ボールが最終的に自分のところへ到達する場所が、なんとなく分かってきます。それは、目で見えてきたわけではなく、脳が最終的な到着位置を認識できるようになったからです。

しかし、ボールが来る場所が分かっても、それに体を反応させる必要もあります。

体の役割

ボールが来る位置が分かってきたら、それに体を合わせなければいけません。せっかくボールがここに来ると分かっていても、体が反応しなければバットには当たりません。ボールが来るであろう予見した位置にしっかりバットを持ってくることができるように、反復して練習してください。

具体的な練習方法としては、バッティングティースタンドが有効です。いろいろな高さにしたティースタンドを利用して、どんな高さでどんな距離でも確実にそこにバットが持ってこれるように練習してください。

これで、目ー脳ー体の連携がとれ、いわゆる“反射神経”が良くなったはずです。

 違う表現で“反射神経”の説明をします

 電車での2種類の『おっとっと現象』

みなさん電車に乗ったことのない人はいないと思いますが、電車で急ブレーキがかかった時など、『おっとっと』という具合によろめいた経験がないでしょうか?

実はこれには2種類あるのです。

1つ目は、電車でカーブなどで急ブレーキがかかった時、それを予想できていないような不意打ちの場合、多くの場合で大きくよろめいてしまうでしょう。場合によっては、隣のオジサンにぶつかってしまうかもしれません。これをフィードバック制御といいます。要するに、何かが起きた後に、それを修正しようとする動きのことです。倒れそうになったときに、後出しで倒れないように踏ん張ることで体を制御する方法です。

2つ目は、電車で急ブレーキがかかりやすいカーブの存在をしっている場合に、あらかじめ体を踏ん張って耐える方法です。これで隣のオジサンにぶつかることはありません。これをフィードフォワード制御といいます。そのためには、体の使い方を理解しておく必要があります。ブレーキが来る前に、つり革を持って足のスタンスを広くとるなどの対処が必要です。

“反射神経を良くする”とは、フィードバック制御からフィードフォワード制御へ切り替えること

何のスポーツでも言えることですが、いわゆるフィードバック制御として、相手に合わせて動いていたのでは、動作が遅くなります。言い換えれば、“反射神経が悪い”状態です。

これをいかにフィードフォワード制御に切り替え、あらかじめ相手がどのように動くのか、どういった軌道をとるのかを予想できるかどうかが、“反射神経を良くする”ことには必須条件と言えそうです。

まとめ

反射神経をトレーニングする際には、同時にいろいろな作業をやってしまうと、混乱し、効果的ではありません。

目と脳と体、どのパーツからトレーニングしていくか明確にして、最終的にそれらを結びつけるといった作業が効率的ですので、頑張ってください。