【リハビリ】と“マッサージ”の認識の違いから見える理学療法士の問題点

数年前のことですが、ある介護保険サービス事業所にお邪魔した際に、理学療法士と利用者さんがこんな会話をしていました。

利用者さん:「あぁ、マッサージは気持ちがいいねぇ」

理学療法士:「○○さん、これはマッサージじゃありません!リ・ハ・ビ・リ!!」

何気ない会話でしたが、色々と考えさせられる場面でした。リハビリを受ける立場の方にとって、【リハビリ】と【マッサージ】の違いが分からないということにも驚きましたが、理学療法士がムキになって訂正するのもどうかと感じました。

ほとんどの理学療法士が意識していることだとは思いますが、このことが象徴する現在のリハビリの問題点をあえて挙げてみます。

リハビリとは何か?

リハビリテーションの語源はラテン語で、re(再び)+ habilis(適した)、すなわち「再び適した状態になること」「本来あるべき状態への回復」などの意味を持つ。

引用:ウィキペディアより

リハビリテーションは、身体機能の改善によって、その人が自分らしく生きることを取り戻すことを第一に、周囲の環境にも働きかけることで障害を持った状態においてもよりよい人生が送れるように支援することであると定義できます。

マッサージとは何か?

狭義の【マッサージ】

【マッサージ】という言葉は、本来『あん摩マッサージ指圧師』という国家資格を有する人間による行為です。それを定めている法律は、一般に「あはき法」と呼ばれます。これは正確には「あん摩マッサージ指圧師・はり師・きゅう師等に関する法律」というものです。

本来、法的には【マッサージ】という言葉を使って良いのは、医師以外ではこの資格者のみということになります。

よって、余談にはなりますが、一見すると“マッサージ”をしているような世の中のお店では、この法律の影響で【マッサージ】という言葉を使うことができないので、『ボディケア』『リフレクソロジー』『リラクゼーション』『もみほぐし』といったフレーズで看板を掲げているわけです。これは別に法律違反でも何でもないので(現時点では)、とやかく言われる筋合いはないわけですが、グレーゾーンであると揶揄されることが多々あります。僕は特に偏見はありませんので、よく利用しています。

今回のテーマで用いる“マッサージ”とは

冒頭の介護サービスを利用していた方の言った“マッサージ”とは、国家資格者の行うようなものを意図していたわけではなく、体をもむこと全般を指しているでしょうから、今回はそのような意味において“マッサージ”という言葉を使います。

【リハビリ】と“マッサージ”の違いとは?

確かに、リハビリの現場にいる僕でさえ、客観的に見るとリハビリはマッサージのように思えるようなことが多々あります。リハビリを受ける方がそのように感じるのも無理ありません。

その両者の違いは、目的の違いに他なりません。

理学療法士は、クリニカルリーズニングを行って対象者の身体機能の問題点を探り、それに対応した治療を行います。

【これなら誰でも分かる】リハビリにおけるクリニカルリーズニングの内容

一見マッサージのように腰を押しているように見える行為も、仮説と評価に裏付けられた理論的なアプローチであることでしょう。

【リハビリ】を“マッサージ”と呼ぶことは問題なのか?

リハビリを受ける方がそう呼ぶこと自体には、実際は何も問題はないでしょう。

リハビリを受ける方がどのように思うかは自由であり、リハビリという言葉を強要する必要はありません。ただし、体を触るリハビリの目的を患者さんや利用者さんが意識することで治療効果は高まることもあるでしょうから、マッサージだと思っていても結構ですが、何のためにそれを行っているかということは最低限理解していただく必要があるでしょう。ストレッチやモビライゼーション、筋膜リリースなどをマッサージと思われることはあるでしょうが、さすがに筋力訓練や動作訓練などをマッサージと思う方はいないわけですから、一部でマッサージを受けていると思われたとしても全体としてはリハビリへの主体性などへの大きな問題はないかと思われます。

理学療法士によっては、自身の治療を“マッサージ”と呼ばれてムッとする方も実際は多くいらっしゃると思いますが、そこまで目くじらを立てるような問題でもないかと思われます。

本当の問題は、次に挙げる事柄です。

“マッサージ”を肯定する理学療法士について

信じられないかもしれませんが、僕は“マッサージ”を行っていることを肯定する理学療法士に会ったことがあります。その方は、「利用者さんが気持ちよく感じるなら、マッサージするのも良いと思っている」と話していました。

世の中に、ここまでの考えを持っている理学療法士はごく少数でしょうが、自分の行っているリハビリに目的意識を持っていないケースは少なくないと感じています。リハビリは疲れを取ったり、癒しのためにあるものではありません。そのような目的のために医療保険も介護保険も使うべきではないでしょう。

これは、理学療法士の社会的地位を今後発展していくためには十分注意しなければいけない問題です。

こちらの記事で触れましたが、リハビリ医療が効果的でないと思われれば、診療報酬改定において今後さらに不利な方向へ向かっていくことでしょう。

理学療法士がリハビリで超音波診断装置(エコー)を使っていくべき理由

自分で自分の首を絞めないためにも、最低限【re+ habilis】というリハビリの語源に即した行為を行っていきたいものです。