『筋の短縮』と『筋の攣縮(筋スパズム)』の違いと評価・治療について。~どちらもストレッチで良いのか?~

『筋短縮』『筋攣縮(筋スパズム)』

理学療法士であれば、どちらも何気なく使用する言葉ですが、2つの違いを明確に説明できるでしょうか?

似ているようで、全く違う病態です。

ここでは、両者の違いとその評価方法、治療についてご紹介します。

筋短縮とは?

筋短縮とは、筋の伸張性・粘弾性が低下した状態のことを意味します。これは、次の2つの問題によって引き起こされます。

  1. 筋実質の問題
  2. 筋膜の問題

筋実質の問題

骨格筋の構造としては、筋繊維の束とそれを包む膜ごとに分かれています。それぞれ『筋上膜』『筋周膜』『筋内膜』となります。

その中における最小単位である筋原繊維は直径が1〜2μm(マイクロメートル)であり、これは0.001mm〜0.002mmに相当します。

その筋原繊維を光学顕微鏡で観察すると、規則正しい明暗のしま模様が見られます。このしま模様に見えることから、心筋と骨格筋は横紋筋と呼ばれています。

筋節とは?

このしま模様の中で、明るく見える部分をI帯、暗く見える部分をA帯と呼びます。さらに、I帯の中央をZ帯、A帯の中央をH帯と呼びます。筋短縮に関わる短縮とは、筋節(サルコメア)が減少することで生じます。

筋節とは、筋原線維におけるZ帯とZ帯の間のことを指します。

アクチンとミオシンのフィラメント構造

筋を伸ばすと、太いミオシンフィラメントに対して隣り合う細いアクチンフィラメントが引き離され、筋節間が引き延ばされます。

そのため、一直線上に存在する筋節の数が多ければ多くなるほど、筋の伸長性は高くになります。

よって、筋の短縮の1つの原因として、筋節数が少なくなることが挙げられます。

筋膜の問題

筋膜は、先ほどの図のように、それぞれの階層ごとに筋実質を取り囲む薄い膜状組織です。

筋膜は、コラーゲンで構成されており、大半が水分です。長期に渡る不動や、炎症後には、筋膜の繊維化が起きることがあります。

筋膜の繊維化では、コラーゲン分子に架橋(組織と組織の間が連結すること)結合が形成されることで、伸長性を失います。

筋原繊維における筋節などの問題が無かったとしても、それを包む筋膜の伸長性に問題があれば、筋短縮が生じます。

筋攣縮とは?

攣縮(スパズム)とは、痙攣性の収縮のことです。これは、防御性収縮とも呼ぶこともあります。

防御性収縮の名の通り、痛み刺激に対して防御的に筋肉や血管を収縮させるものです。

関節周囲での化学的刺激、機械的刺激は、脊髄反射によって前角細胞のα運動繊維と交感神経に作用します。交感神経は、血管攣縮を引き起こし、α運動繊維は筋攣縮を引き起こします。

さらに、血管が攣縮を起こすことで、発痛物質が産生され、さらなる筋攣縮が引き起こされます。

よって、この負のスパイラルをいかに断ち切るかが重要になります。

筋短縮と筋攣縮の見分け方

圧痛の有無

基本的には、圧痛の有無で見分けます。

分かりやすい例えを出すと、『肩こり』と『突っ張るハムストリングス』です。

肩こりは僧帽筋などの軽度の筋攣縮と言えます。肩こりを強く押すと、痛みが生じるかと思います。

攣縮を起こした筋は、閾値が低くなります。どういうことかと言うと、攣縮によって筋細胞が虚血により変性し、発痛物質を放出することで侵害受容器の閾値を下げるのです。

一方、前屈した際などにハムストリングスが突っ張るようなものが筋短縮だとすると、そこには伸長痛はあったとしても、圧痛はないはずです。なぜなら、短縮しただけの筋内では、基本的に発痛物質は産生されないからです。

収縮時痛の有無

肩こりがひどい状態で肩甲帯の挙上運動を強制すれば、筋収縮に伴う痛みが生じます。しかし、短縮したハムストリングスでは収縮時痛は出現しません。

どちらもストレッチで改善するのか?

短縮した筋に対しては、ストレッチは当然有効な手段です。筋の周期的なストレッチは、ミオシンフィラメントから隣り合うアクチンフィラメントが引き離されるために、筋節間の距離が長くなります。

それに比べ、攣縮の起きている筋を伸張させるのは、注意が必要です。筋攣縮に対しては、ストレッチよりも、血管拡張作用を狙ったアプローチが効果的です。

その方法としては、例えば温熱療法や筋のポンプ作用を利用した方法があります。

特に、筋ポンプ作用を利用した筋収縮運動を反復することで、筋内の血液循環やリンパ液還流が改善するため、発痛物質の除去をすることができます。

まとめ

筋の短縮や攣縮という言葉は、良く使われる用語ではありますが、その病態と改善方法には違いが存在します。

それぞれの特徴を理解した上で対処することが重要です。