リハビリで絶対に押さえておきたい肩関節の特徴3選

肩は、人間の関節の中でも特徴的な関節の一つです。

狭義の肩関節については、名称一つとっても

  1. 肩甲上腕関節
  2. 胸鎖関節
  3. 肩鎖関節
  4. 第2肩関節
  5. 肩甲胸郭関節
  6. 烏口鎖骨間関節

というように、解剖学・機能学的にいくつかの構造体に分けられています。これだけ見ても十分ややこしいですね。

➀~➂までを解剖学的関節、➃~➅までを機能学的関節と呼び、全てをひっくるめて広義の肩関節=肩関節複合体と呼びます。

ここでは、リハビリを行う上で押さえておきたい肩の特徴を3つ記載していきます。

その1.『可動性』

肩に求められる最も大きな役割は、『自由に大きく動かせること』です。二足歩行を行う人間にとっては、両手は作業するために適しています。そのため、自由度が非常に高くなっています。屈曲・伸展、外転・内転、外旋・内旋といった、あらゆる方向に動く関節は多軸関節(関節自由度3)と呼びます。

肩関節は、支持性を犠牲にして可動性が高くなっています。それは、同じ球関節の仲間である股関節と比べてみるとよく分かります。肩関節と股関節の違いを以下の表で見て下さい。

肩関節股関節
運動軸多軸性多軸性
関節の深さ浅い深い
可動性全関節中最大肩関節よりは低い
支持性股関節よりは低いかなり高い

その2.『適合性』

上腕骨頭の関節面は、その3分の1を関節窩に覆われるに過ぎません。これは、“ゴルフボールとティー”などの言葉で例えられることがあります。肩甲骨側の受け皿に比べて、上腕骨側の骨頭は大きいため、このような形状となっています。

引用:グレイ解剖学 原著第2版

関節唇による補強

関節窩の周りは、関節唇と呼ばれる繊維性軟骨で縁取りされています。そのおかげで、浅い関節窩は深さを補われます。関節唇は、もともとの関節窩の深さを約2倍に深くしていると言われており、そのことで上腕骨頭との適合性を高めています。

その3.『求心性』

肩はこのような構造をしているために、『求心力』が求められます。ここで言う求心力とは、上腕骨頭を関節窩に引き付ける力です。

肩関節は、Hanging joint(懸垂関節)とも呼ばれ、体幹との接点は骨においては胸骨と鎖骨のみであり、体幹からぶら下がっている関節です。その上、先ほど述べたように適合性が低いため、上肢の重さに負けないような構造である必要があります。

そのため、求心力を高めるために以下の特徴を持っています。

  1. 関節内が陰圧になっている。
  2. 関節窩は前上方を向いている。
  3. 関節包靭帯による安定化機構。
  4. 回旋筋腱板による安定化機構。

1:関節内が陰圧になっている

肩の関節内圧は陰圧に維持されており、上肢の重みで下方へ牽引が加われば加わるほど、関節内圧はさらに減少して陰圧となることで、関節はオートマチックに安定しています。もし万が一肩関節包に穴が開いた場合には、亜脱臼してしまうことでしょう。

2:関節窩の向き

関節窩は肩甲骨体を通る水平軸に対して約4°上方へ傾斜している。~中略~関節窩は、前額面に対して前方約35°を向いている。
引用:筋骨格系のキネシオロジー 原著第2版

関節窩の向きによって、上腕骨頭が関節窩へ押し付けられるように求心性を高めることの補助をすることができます。

肩甲骨の操作によってこれは調整可能であり、上方回旋位に誘導することでさらに骨に関して言えば支持性が高まります。逆に言えば肩甲骨が下方回旋位に偏位することで、求心性が低下する可能性があることを示唆しています。

もう一つ重要なのは、関節窩の向きを調整することで、後述する回旋筋腱板が機能しやすいアライメントを保つことです。そこまで考えて治療に臨めると良いでしょう。

3:関節包靭帯による安定化機構

肩の関節包靭帯(関節上腕靭帯)は、上腕骨長軸に対して約45°の角度で付着しており、肩外転45°の肢位が張力が一定となる肢位となっています。よって、そこから肩が内転して下垂位となった場合には、上関節上腕靭帯は緊張します。それによって、骨頭の関節窩への押し付ける力が発生し、求心性が高まります。

4:回旋筋腱板による安定化機構

肩関節は靭帯で補強はされていますが、関節包に付着する靱帯はそれほど強くないことから、上腕骨頭を安定させるための主たる役割は関節周囲の筋が担うこととなります。肩関節は、上方からは棘上筋、前方からは肩甲下筋、後ろからは棘下筋といった具合に、周囲を筋で覆われています。これらの筋は、肩関節の回旋作用をも持つことので、回旋筋腱板(rotator cuff)と呼ばれます。

回旋筋腱板を構成する筋群が絶えずバランス良く働くことで、静的安定性のみならず、肩を動かした際の動的安定性も保たれます。しかし、これも逆に考えれば、一つの腱板筋が拘縮を起こせば、たちまち関節のバランスは崩壊し、関節軸は動作とともに偏位することでトラブルを起こします。それほど、肩関節というものは繊細であるということができます。

 

まとめ

「機能は構造に伴い、構造は機能に伴う」という言葉を聞いたことがあります。肩の構造と機能の関係を押さえておくことは、リハビリを行う上で必須と言えるでしょう。

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