棘果長(SMD)と転子果長(TMD)の計測方法や違い。リハビリへの応用について

理学療法士であれば、養成校で必ず覚える棘果長(SMD)や転子果長(TMD)ですが、計測方法は知っていても、実際にどのような場面で使うのか迷ってしまうことはないでしょうか?

今回は、そのような下肢長の評価についてです。

下肢長とは?

下肢長は、形態測定の一つです。

形態測定には、下肢長の他にも、身長・体重・上肢長・周径などがあります。

下肢長は、さらに次の2つに分けられます。

  • 棘果長=SMD(spinomalleolus distance)
  • 転子果長=TMD(trochantomalleolus distance)

棘果長について

棘果長は、次の距離のことです。

上前腸骨棘-内果の最短距離
よく、外果と間違える方がいますので注意が必要です。

計測方法

まずは、計測肢位が最も重要です。

これがおかしいと、正確な数字が絶対に出ません。

計測肢位・背臥位
・骨盤水平位
・股関節中間位(屈曲/伸展、内転/外転、内旋/外旋)
・膝関節伸展位

特に、股関節の外旋はよくある不良肢位なので、一人で操作するのが難しい場合には、股関節の下にタオルやクッションなどを差し込んで安定させるなどの工夫をしましょう。

ここから、上前腸骨棘から内果への直線をメジャーで計測します。

転子果長について

転子果長は、次の距離のことです。

大転子-外果の最短距離

計測方法

計測肢位は、棘果長と同じです。

そして、大転子から外果の最短距離をメジャーで測定します。

転子果長に左右差が無く、棘果長に左右差がある場合

下肢長を計測する場合には、なぜ2種類の計測をしなければいけないのでしょうか?

それは、簡単に言うと下肢のどこに問題があるかを明らかにするためです。特に、転子果長に左右差がないにも関わらず、棘果長に左右差がある場合、次の問題があると言えます。

上前腸骨棘から大転子までの間の問題
これは簡単な引き算です。
[上前腸骨棘から内果の距離]-[大転子から外果の距離]=[上前腸骨棘から大転子の距離]
となるわけです。

上前腸骨棘から大転子の間には、当然股関節が存在します。

よって、棘果長のみの問題というのは、言い換えれば次のようになります。

股関節周囲の問題

具体的な問題例

一概に股関節周囲の問題といっても、このことから分かることはたくさんあります。

その中でも、具体的な例をいくつか挙げていきましょう。

  • 股関節脱臼
  • 股関節の手術後

これらは、構造的脚長差とも呼びます。

股関節脱臼

股関節に脱臼がある場合にも、上前腸骨棘から大転子の距離は短くなります。

股関節が脱臼すると、通常は荷重が加わることや、中殿筋などに牽引されて大腿骨頭は上方へ変位することとなります。

それを図で見てみましょう。

このように、脱臼して大腿骨頭が変位すると、上前腸骨棘から大転子の距離が短くなるのが分かります。

完全に脱臼していなかったとしても、外上方変位があれば、中殿筋は起始停止が近くなるために、筋力が発揮しにくくなることなどが予想できます。

これも、棘果長と転子果長の差から推測できることの一つです。

股関節の手術後

股関節の手術にはいろいろありますが、どのような術式を行ったかで、上前腸骨棘から大転子の距離は変化することがあります。

例えば、人工股関節を置換したとしましょう。

すると、次の図のよう変化が起きます。

術前の距離(赤の線)よりも、術後の距離(青の線)の方が長くなっていることが分かります。

術後、このように距離が変化した場合には、股関節周囲の軟部組織は相対的に伸長され、一時的に可動域制限を引き起こしている原因となっているかもしれません。

その他の要因

このほかにも、大腿骨頸部骨折や外反股・内反股でもこの距離間には差が生まれるでしょう。

棘果長にも転子果長にも左右差がある場合

左右の棘果長に差があり、左右の転子果長にも同じ分だけの差があった場合には、問題は転子果長の間にあると言えます。

転子果長の長さが左右で違うときには、要するに大転子から外果の間での問題ということになります。

その間にあるもので、重要なものは膝関節が挙げられると思います。
原因としては、膝関節の内反変形などの可能性が挙げられるでしょう。

他の検査と合わせて評価しよう

確かに、下肢長検査は、ここまで見てきたように色々な可能性を考えることの助けになります。

しかし、逆に言えばこれだけで結論づけることはできないということです。他のレントゲン所見やROM検査、筋力検査など、様々な検査と合わせて用いることで、病態の詳細な状況を理解する助けになるでしょう。

見かけ上の脚長差

『見かけ上の脚長差』は、機能的脚長差とも呼びます。

例えば、骨盤の一側が挙上位である場合には、骨盤挙上位の下肢は短く見えます。

しかし、上の図のように、見かけ上は短く見える下肢も、棘果長(青の線)をみると、長さに有意な変化はありません。当然、転子果長にも左右差はありません。

まとめ

下肢長測定は、体の状態を把握するとても良い評価項目です。

特に、棘果長や転子果長の差を考えることで、いろいろな可能性を挙げていくことができます。そして、他の検査と組み合わせることで、より病態は明らかになっていくことでしょう。