浮腫(むくみ)の種類と原因について。特にリンパ性浮腫のリハビリについてもご紹介します。

浮腫(むくみ)という言葉は、医療現場のみならず、日常生活においてもよく使用します。

しかし、浮腫にも数多くの種類があり、原因もそれぞれです。今回は、その浮腫の基礎知識やリハビリとの関連についてご紹介します。

浮腫とは?

浮腫とは、細胞内・細胞間隙・皮下組織などの水分(組織液やリンパ液)が、何らかの原因により過剰に貯留されてしまっている状態です。

私たちの体重の約60%は水分で作られています。その中で、体の中の生理的な水分代謝が行われているわけです。

その水分代謝異常がおきると、次の2つの問題が起きます。

  • 局所の水分循環障害
  • 全身の水分循環障害

このように、浮腫とは体全体に症状が現れるケースもあれば、体の局所的に症状が合わられるケースもあります。

全身に症状が合われるケース

体全体に関連がある浮腫は、全身性浮腫と呼びます。全身性浮腫には、代表的なものに、以下のような病態があります。

  1. 心性浮腫
  2. 腎性浮腫
  3. 肝性浮腫
  4. 内分泌性浮腫
  5. 薬剤性浮腫

ここでは、1~3についてご紹介します。

1.心性浮腫

これは、心臓の機能不全による浮腫です。全身の血流に重要な役割を果たしている心臓ですが、機能異常に陥ると【うっ血性心不全】を発症します。

うっ血性心不全の結果、全身性に浮腫が生じることになります。

重症化すれば、肺水腫により呼吸困難に陥ることもあるので、とても注意が必要なものです。

2.腎性浮腫

これは、腎臓の機能障害による浮腫です。腎臓は、体の中の老廃物を排泄する働きがあります。また、体の水分やナトリウムなどのミネラルバランスを保つ役割があることから、腎臓に障害が起きることで、全身性の浮腫につながることがあります。

腎性浮腫を引き起こす代表的な疾患としては、ネフローゼ症候群や急性糸球体腎炎などが挙げられます。

3.肝性浮腫

これは、肝臓の機能障害により生じる浮腫です。肝臓の機能としては、タンパク質の合成や貯蔵を行ったり、身体の老廃物を分解したりする役割があります。

慢性肝炎や肝硬変などにより、肝臓の機能低下が起きると、水分調節に重要な役割を持つアルブミンというタンパク質量が減ることで浮腫が生じます。

局所的に症状が合わられるケース

体の局所に浮腫が見られるものを、局所性浮腫と呼びます。局所性浮腫の代表的なものとして、以下のようなものがあります。

  1. リンパ浮腫
  2. 静脈性浮腫
  3. 炎症性浮腫
  4. 血管性浮腫

ここでは、1~2についてご紹介します。

1.リンパ性浮腫

これは、リンパ管への還流が何らかの原因で障害されることによって起きる浮腫です。

動脈から毛細血管へ送られてきた水分やタンパク質は、組織に栄養を供給した後に、再度リンパ管や静脈の2つの方向へ戻っていきます。

その際のほとんどの水分量は静脈に戻り、残りのがリンパ管に戻っていくという仕組みとなっています。よって、リンパ管への還流が滞れば、そこに水分は貯留することになります。

2.静脈性浮腫

これは、静脈の働きが悪くなることで、血液が心臓に戻れなくなって生じる浮腫です。これは、高齢者になるほど多くなる傾向があります。

静脈性浮腫で特に注意すべきなのは、急性肺血栓塞栓症(エコノミークラス症候群)にもつながる恐れのある深部静脈血栓症です。

浮腫の理解に役立つStarling(スターリング)の法則

Starlingの法則とは、動脈側の静水圧と膠質浸透圧の関係により、毛細血管での水分代謝のバランスが保たれているというものです。

膠質浸透圧とは、アルブミンやグロブリンなどの血漿タンパクにより、水分を血管内に保とうとする力(浸透圧)のことです。実際には、血漿タンパクはグロブリンよりもアルブミンの分子数の方が、はるかに多いためのアルブミンの濃度によって浸透圧は変化します。

Starlingの法則を、以下の図を用いてご説明します。

静水圧とは、静止した水の中で、任意の面に対して働く圧力のことです。この図で言えば、動脈と静脈において血管の壁へ作用する毛細血管圧のことです。

動脈側で水分を血管外に押し出そうとする力(動脈側の静水圧:約35mmHg)は、水分を血管内に保とうとする力(膠質浸透圧:約25mmHg)よりも強いので、その差が血管外へ水分として漏出します。

また、静脈側の静水圧:約15mmHgよりも膠質浸透圧:約25mmHgの方が強いために、水分の流れは逆転することで、動脈側から出た水分は、静脈側の血管内に引っ張りこまれます。

それにより、動脈側から静脈側への水分移動が生じるわけです。さらに、その水分移動で残った水分がリンパ管に入りリンパ液になるということです。

リンパ性浮腫のリハビリについて

浮腫の治療では、根本的な原因を鑑別した治療が基本となります。浮腫というのは症状としての結果であって、原因とはならないからです。よって、とりわけ全身性浮腫の場合には薬物療法を含めたアプローチが必要不可欠となります。

しかし、Starlingの法則によれば、症状の緩和という意味では、ケースによってはリハビリにおいても対応が可能である場合もあります。そして、その判断は医師に委ねられています。

その中の一つとして、ここでは、リンパ浮腫の保存的治療としての対処法をご紹介していきます。

リンパ性浮腫の評価

周径測定

最も簡単な浮腫の評価は、周径測定です。

周径測定では、浮腫の部位に応じた場所を測定します。その際には、必ず皮膚や皮下組織の状態を記録しておくようにしましょう。

周径測定での注意点は以下の通りです。

  • 左右同じ部位を測定し、左右差を見る。
  • 周期的に同一時刻に測定する。
  • 患部だけではなく、念のため離れた部位も計測しておく。

周径というのは、正常であっても多少の差があります。よって、患部以外も参考として計測しておくのが望ましいです。そして、2~3㎝以上の周径差があれば問題視しても良いかと思われます。

また、全身性浮腫の場合には左右差は生じないために、1回の測定値だけで判断するのではなく、経時的な周径差の比較も重要です。

複合的理学療法

リンパ浮腫の保存的治療は、厳密にはリハビリという言葉よりも、『複合的理学療法』と呼ぶのが正確です。

その中のいくつかをご紹介します。

リンパドレナージ

ドレナージとは、排液法と呼ぶものであり、リンパドレナージとは、リンパ浮腫を除去するための手段のことです。

最も基本的な方法としては、患肢の挙上を行います。

リンパ浮腫が起きている局所を、心臓よりも高い位置へ挙上させます。方法としては、下にクッションや枕を当てるような方法で良いです。軽度な浮腫であれば、それだけで改善することもあります。

それでも改善が見られないものなどには、用手的リンパドレナージ(manual lymph drainage :MLD)を行います。

その具体的な方法については、日本リンパ浮腫学会『3)リンパドレナージ(マッサージ効果)』が非常に参考になります。

圧迫療法

外からの圧迫刺激によって、リンパ還流を促進していく方法です。その方法としては、弾性包帯や弾性スリーブ・弾性ストッキングを使います。

弾性包帯を上肢や下肢で用いる場合には、手指や足趾一本ごとに伸縮ガーゼ包帯を巻くなどした後に、弾性包帯を巻いていきます。

弾性スリーブ・弾性ストッキングについては、毛細血管内の静水圧が約30mmHgであるため、下肢に対しては、それよりもやや圧の高いものを使用することが必要です。上肢に関しては、20~30mmHgのものがよく使用されます。

圧迫下での運動療法

上記の圧迫療法に加えて、圧迫下において筋活動を行うことは効果があります。

筋肉にはポンプ作用があるので、軽めの負荷で運動を行うことで、リンパ還流量の増加が期待できるからです。

圧迫療法下での運動療法と同じ原理で、水圧を用いた運動も効果的です。プール内歩行などは、同じくリンパ浮腫の改善を期待できる方法の一つです。

まとめ

浮腫の基礎知識から、リンパ浮腫の対応まで簡単にご紹介させていただきました。

一般的な浮腫の多くは重症化することは稀ですが、命に関わる浮腫があることも事実です。その中で、リンパ浮腫は対処が可能な部分がありますので、正しい知識を身に着けることで効果的なリハビリができるようになります。