大円筋についての基本的な情報はこちらです。
起始:肩甲骨の下角
停止:上腕骨の小結節稜
神経支配:肩甲下神経(C5,C6)
肩関節への作用:内旋、内転、後方挙上
大円筋について、さらに詳しく知る場合には、以下の目次より進んで下さい。
英語表記
大円筋の英語表記は、以下の通りです。
Teres major muscle
「teres」というのは、ラテン語で「丸い」という意味であり、「major」というのは大きいという意味にあたります。
略して、TMと呼びます。小円筋と併用して使用する場合には、大円筋をTMと表記し小円筋をtmと表記するのが一般的です。
大円筋の概要
大円筋の上方には小円筋が存在しています。名前は良く似ていますが、作用や役割は全く別物であることに注意が必要です。
大円筋の内転作用について
大円筋は、肩外転位では内転作用に働きます。
この内転時、大円筋は比較的大きなトルク(回転力)を発揮する可能性があることは注目すべきポイントです。なぜなら、大円筋の停止部である小結節稜は、関節回転軸から距離が離れており、長いモーメントアームを持つからです。
以下の図を参考にしてください。
大円筋は、広背筋と停止部も走行も類似しており、共同して内転動作を行います。
大円筋の内旋作用について
肩内旋筋群の筋総重量は、外旋筋群よりはるかに大きく、筋出力も外旋筋群を上回っています。
肩の内旋筋は、大円筋の他にも広背筋・三角筋前部繊維・肩甲下筋・大胸筋が挙げられます。
それぞれの筋肉は、肢位によって効果的に働いたり、逆に働きにくかったりするわけですが、大円筋については肩屈曲位からの内旋時に大きく作用します。
これは、下の図にあるように、大円筋の起始停止が離れて張力が得られるとともに、内旋運動方向のベクトルが大円筋作用線に近いからです。
たとえば、これが肩外転位でも大円筋は内旋に作用しますが、肩外転位では大胸筋の方が働きやすくなります。これは、大胸筋が屈曲位に比べて外転位では伸長位となるからです。
触診
大円筋の触診は、ここまで見てきたように、肩屈曲位で行うと分かりやすいです。
肩屈曲において、下角~外側縁下部で筋の膨隆を触知できます。
下の図で言えば、肩内旋自動運動させながら、赤の矢印方向から触れることで、筋腹を触れることが可能です。
筋腹は、下の写真のように、比較的しっかり目視でも確認できます。
指で挟むように存在しているのが大円筋です。
リハビリへの応用
肩関節可動域制限の原因となる
肩関節周囲炎(五十肩)などでは、大円筋のスパズムが起きやすい傾向にあります。
大円筋は、先ほど述べたように、内旋・内転作用があります。逆に言えば、大円筋が短縮やスパズムが生じることで、外旋・外転制限が生じるということです。
肩関節を全可動域に渡って挙上させるには、外旋・外転どちらも必須動作ですので、挙上可動域制限が生じる可能性が十分にあるわけです。また、結髪動作に関しても、制限因子となり得るでしょう。
様々な動作に関わる
日常生活動作の中で、上にある手すりなどにつかまる動作などでは、広背筋が主体に働きますが、大円筋も同じように働きます。
鉄棒で懸垂をするような動きと言えば分かりやすいかもしれません。スポーツで言えば水泳のクロールや平泳ぎなどの、水をかくような動作で必要となる動きです。
しかし、大円筋単独では動作の遂行は不可能であり、必ず肩甲骨の固定が必要です。
下の図では、菱形筋が肩甲骨を下方回旋方向へ引っ張ることで、肩甲骨を固定します。それがなければ、大円筋の収縮は体幹に影響を与えるような動作に活かすことはできません。
まとめ
今回、時間をかけて大円筋に関する情報を書籍や文献などで調べてみましたが、正直なところあまり見つかりませんでした。
大円筋の役割は、今後研究が進めば何らかの重要な機能が他に見つかるかもしれません。
現時点で分かっていることでは、肩の可動域制限に関わるものや、肩甲骨周囲筋と連動した動きが重要であることは間違いないので、ぜひリハビリへ取り入れてみて下さい。