理学療法士の実習生が悩む【統合と解釈】を超分かりやすく解説する

毎年僕は1年に3名の実習生のスーパーバイザーをさせていただいております。

ちょうど今も1名担当しているのですが、【統合と解釈】の作成が苦手のようです。よくよく思い出してみると、今までの学生さんも苦手な方が多かった印象があります。ここでは、【統合と解釈】をどこよりも簡単に解説し、その書き方を伝授させていただきます。

学生からはお世辞も交えて「どの実習先よりも分かりやすかったです」と言っていただけております。

どなたにも必ずお役に立てると思います。

【統合と解釈】ってなに?

簡単に説明すると、『評価を組み合わせて問題点を見つけ出すプロセス』です。

簡単に考えてください。これをプラモデルで例えるとすれば、各評価(検査)はパーツでしかないので、そのパーツとパーツを組み立てて、本体に接続し、一つの作品を作りましょうということです。しかも、そのパーツ自体も自分で作る必要があります。

それらの過程をトップダウンやボトムアップで進めていくように指導されるわけです。

理学療法士の学生はトップダウン評価とボトムアップ評価どちらが良いのか

今回ご説明していく要点は、以下の通りです

  • 評価の方向性を決定する。
  • 評価していないことは【統合と解釈】には書かない。
  • 『主訴・Hope』『Need』から脱線しない。
  • 小説家・シナリオライターを参考にする。
  • 30文字で説明できるかどうか。
  • フローチャートを活用する。
  • 動作分析ができなければ、必ず行き詰る

では一つずつ見ていきましょう。

評価の方向性を決定する。

ここが最初の関門です。

問診や、事前に収集した情報、観察した動作などから得られた情報などを使って、次のことを最初に決めていかなければいけません。

  1. 解決すべき主訴。
  2. 介入対象とする動作。
  3. 評価すべき検査項目。

1:訴えがたくさんある症例の場合、何を優先しなければいけないのか?

2:最優先に介入すべき動作は何なのか?

3:検査項目は何を選べばよいのか?

このあたりが最初につまづくポイントでしょう。その解決になるのが、次のことです。

ICF・ICIDHの活用

活用の順番

学生のみなさんは症例レポートを書く際に、次のどちらの順番で進めているでしょうか?

➀:統合と解釈を書いてからICF・ICIDHに当てはめる。
➁:ICF・ICIDHを埋めてから、統合と解釈を書く。

おそらくほとんどの学生さんは、➀番で進めています。しかし、実は➁番で進めた方が圧倒的に分かりやすいのです。

冒頭でも話が出ましたが、統合と解釈はプラモデルの組み立てだと想像して下さい。作るものは何でもいいです。

僕は個人的にはガンダムが好きなので、それを例にします。

検査項目:パーツ
統合と解釈:組み立て作業

これが原則です。

問題は、完成予想図がない状態で組み立て作業を行うのは、めちゃくちゃ難しいということです。

何を作ってるか分からないのですから、難しいに決まっています。何を検査項目としたらいいのか分からないわけです。

その完成予想図を最初に作るのが、ICF・ICIDHなのです。

使用例

最近ではICFを使うように指導するバイザーが多いので、ICFを例に挙げて説明していきます。

ICF:国際生活機能分類

まずは、分かっている範囲で良いので、これを埋めるのです。

問診と事前情報、観察した動作だけで結構です。

例を挙げてみましょう。

まだ具体的な検査は実施していませんが、問診と事前情報、観察した動作の情報さえあれば、これだけ埋められます

どうですか?何となく完成予想図が見えてきませんか?

  • 膝が痛くて歩けないことで、買い物に行けないんだな。
  • 歩くとすれば痛みを取らなければいけないから、正座動作よりも歩行動作を優先すべきだな。
  • 検査項目は、膝の痛みに着目しよう。
  • 痛みが取れなければ、杖の使用や交通機関の活用を考えなければいけないな。

このように、方向性が見えてきます。

最初にICF・ICIDHを埋めるということは、それだけ価値があることなのです。

注意

上記の表には便宜上マイナス面しか記載していませんが、ICFはプラス面も記載する特徴があるので注意してください。

評価していないことは【統合と解釈】には書かない。

ここからは、実際の検査について説明していきます。

よく、【統合と解釈】の中に、検査していない内容を書く学生がいます。

それを僕は【妄想と解釈】と呼んでいます。どうしても、学生さんは引き出しが少ないので、参考書に頼ろうとします。

すると、参考書に書いてあることを引用してそれを症例さんに当てはめていきます。そうしますと、評価(検査)していないようなことまで書いてしまうのです。

また、症例が『こうあって欲しい』という願望が具現化してしまい、検査した事柄と関係ないことまで書いてしまうのでしょう。

一見良くできたレポートが完成するのですが、ベテランの理学療法士からすると、つぎはぎしたのがバレバレなのです。

原則は、学校で学んだ『解剖学』『運動学』『生理学』これらをしっかりと活用することです。

症状の当てはめパズルをやるのではなく、間違っていても良いので、自分でこれらの基礎学問を使って考えるほうが100倍意味があります。考えたことに自信がなければ、そこに文献や教科書の情報を裏付け資料として追加すれば良いのです。

例えば、こんな感じです。

A評価とB評価により、運動学的には〇〇方向に力が加わっていると考えられる。よって、解剖学的には〇〇筋に過負荷が加わっていることが言える。圧痛が〇〇筋にみられたことから、過負荷により生理学的には〇〇筋の中において発痛物質が産生され、筋スパズムが起きていると考えられる。文献によると~~。

ちょっと極端に書きましたが、このような感じでしっかりと基礎学問をベースとした考えを自分でまとめることが重要です。

何度も言いますが、バイザー側からすると、学生が症状を参考書を当てはめただけなのか、自分で考えたかどうかは、一発で分かります。

検査項目の解釈を載せる。

通常のレポートでは、【検査項目】のすぐ後に【統合と解釈】があるわけですが、その中間地点に、【検査項目の解釈】を載ます。

みなさん無意識に、【検査項目の解釈】などは、【統合と解釈】の項目で行うことが多いです。

先ほどのプラモデルの例えで言えば、パーツを本体にくっつけたあとに、あーでもないこーでもないとイジっているのと同じです。それよりも、先にパーツの形を本体に適合するように整えておいた方が、後からずっと楽なのです。

どのようにするのかというと、各【検査項目】の後に、その解釈を一緒に書いてしまうのです。例えば、【検査項目】にこういった表を作成して入れますよね。

膝関節ROM   
方向種類左膝動作時痛
伸展
Active(自動運動)-10°(-)
Passive(他動運動)(-)
屈曲Active130°(-)
Passive130°(-)

その後に、こんな風に書き込むのです。あくまで例です。

<解釈>左膝伸展可動域にActive/passive間のextension lagを認める。動作時痛は発生してないことから、疼痛によるものではないと言える。
これで、膝ROM検査の“表”は、“文章”としてまとめられました。この“文章”自体を【統合と解釈】へ組み込むことで、すっきりと考えることができます。

 『主訴・Hope』『Need』から脱線しない。

『主訴・Hope』『Need』の違い

どの学生も、最初に『主訴・Hope』『Need』を書きます。主訴とHopeについては、両方書く学生がいますが、個人的にはあえて分ける必要もないと考えています。しかし、分けるように指示するバイザーがいることも想定して、まずはそこから説明しましょう。

  • 主訴=訴え
  • Hope=希望

ですので、例えば

  • 主訴=歩くと膝が痛い。
  • Hope=痛みなく散歩に行きたい。

とこんな具合に書いておけば、まず問題ありません。主訴は、患者さんが訴えることであれば何でも書いて良いです。

Hopeに関しては、できるだけIDIDHで言えば能力障害レベルか社会的不利レベル、ICFで言えば活動レベルか参加レベルを設定しておくのが望ましいでしょう。

Needについては、objective(客観的)な視点が含まれる必要がありますので、医療サイドからみた意見となります。

意識するべきなのは『一貫性』のある構成

問題は、【統合と解釈】を進めるに従って、これらから脱線する学生がとても多いです。症例報告レポートは、あくまでも患者さんの問題を解決するためのツールに過ぎません。

主訴を解決するという一貫性のある文章が必要です。問題点を並べてプログラムを立てても、患者さんを無視した一方的な治療になることがあります。実例を出しましょう。

治療を押し付けてはいけない

以前、僕の患者さんで、肩の痛みで来院したトラックドライバーの患者さんがいました。挙上可動域は50°程度でした。主訴は、痛みを何とかしてくれとのことでした。しばらくリハビリを行い、痛みは取れましたが可動域はまだ90°程度でした。

しかし、その患者さんは「トラックを運転するのに支障がなくなったのでもう大丈夫です」とのことでリハビリは終了となりました。

我々の仕事はインフォームドコンセントの考え方で成り立っています。治療の必要性はお話しますが、こちらから「いや、可動域制限が残っていますので治療は終了できません」とは言えません。

学生も同様であり、症例レポートは、【統合と解釈】も【考察】に至るまで、患者さんの主訴を解決することのツールに過ぎないことを自覚する必要があります。

小説家・シナリオライターを参考にする。

主人公は一人、主体となる問題点も一つ

【統合と解釈】を書いていると、途中で何が言いたいのかさっぱり分からなくなるものがあります。というか、大半がそうです。

原因は、焦点が定まっていないからです。ここで、小説家やシナリオライターを参考にしましょう。大半の小説は、主人公がいます。

主人公のみが一人称を使い、後は脇役として登場するだけです。だから読みやすいのです。主人公が8人くらいいて、みんなが「私は・・」とかいってたら読みにくくてしょうがありません。

しかし、学生の【統合と解釈】は普通にこれが多いです。バランスの問題が主体なのか、痛みが主体なのか、可動域が主体なのか、すべてが主人公であり、読みにくいのです。

ではどうすれば良いのでしょうか。

主訴の原因となる一番の問題を主人公にして、後は脇役として文章を構成する

ということです。可動域が一番の問題(主人公)としたら、筋力は可動域にどう影響を与えているかの脇役となります。バランス能力も、可動域とどのような関連があるかの接点が中心となります。こうすると、読み手は非常に理解しやすくなります。
問題点のフローチャートを作るときも同じです。

みなさん見たことがありませんか?恋愛ドラマのパンフレットなどによくある、誰が誰を好きで、誰がライバルで・・・といった関係性が複雑すぎる人間関係フローチャートなどを。

一体だれが主人公か分からなければ、頭はパンクします。できるだけ話をシンプルにするために、学生のレポートで活用するフローチャートも、主人公の問題点を一つ抽出しましょう。

仮説は何度でも立て直す

もしその問題点が間違っていたらどうすれば良いか。

もう一回主人公(一番の問題点)を選びなおすだけです。実際の理学療法は、こういった仮説と検証の過程の繰り返しです。どうしても主人公(主体となる問題の焦点)を増やしたいときには、文章を第一部と第二部に分けてください。

小説でもそういうのありますよね。第一部と第二部を分けて、最後の最終章でまとめていくもの。あれと同じように展開してください。

一つ目の主体となる問題点と、二つ目の主体となる問題点を別々の段落でそれぞれが主人公として構成し(できるだけ分かりやすく枠で囲うとベターです)、最後にその二つの関連を結びつけます。

30文字で説明できるかどうか

完成した【統合と解釈】は、一言で説明できるかどうかが重要です。30文字というのはあくまでも目安ですが、一言で説明できないものは、一貫性がなく、支離滅裂なものが多いです。

これは臨床でも言えることです。後輩が、患者さんの状態を説明するときに、長々と説明することがあるので、僕は決まってこう言います。「一言で説明できる?」これで詰まってしまう理学療法士は、頭の中が整理しきれていません。

合ってるか間違っているかなんてよりも、まずは自分の仮説や考えを一言で説明できるかどうかというのは、非常に重要な事柄です。

文章が完成したら、ぜひ一言で言えるかどうかチャレンジしてみて下さい。

フローチャートを活用する

『統合と解釈』をレポートやレジュメに書くときには、必ず文章で書くという決まりは基本的にありません。

レポートやレジュメに文章でぶわーっと書かれると、正直読み手も辛いわけです。

「新聞かよ・・・。」

と思うような文字を羅列しまくった『統合と解釈』もあり、しかも症例発表ではそれを読むだけ、というのは最悪です。

一方、フローチャートを使った表現では、一見しただけで、どのように考えを進めていったをのか分かります。発表においても、フローチャートを見ながら補足としての説明を聞けば、理解もしやすくなります。

もちろん、実習先によっては文章で書きなさいとの指導を受けることがあるかもしれませんので、バイザーに確認する必要はあるでしょう。

フローチャートの書き方

フローチャートは、何でもゴチャゴチャ書けば良いというものではありません。

原則は、先ほどの【小説家・シナリオライターを参考にする】という項目でも挙げたように、1つの病態(仮説)を主人公にしたら、生活背景などの個人的要素や、各評価項目がその病態にどのように関わりがあるかということを1つのフローチャートでまとめていきます。

もし、患者さんの主訴を解決するための病態に、2つ以上の可能性がある場合には、もう1つフローチャートを作成して、後からその2つを統合していきます。

例を上げましょう。下のフローチャートは、膝内側部痛を主訴とする、ある患者さんの評価を統合して解釈したものです。

内容は適当に書いたので、深く突っ込まないで下さい。

大事なことは、赤色で記したフローチャートの流れは、あっちこっち行かないようにすることです。ここに一貫性が無くなったり、紆余曲折してしまうと、訳が分からなくなってしまいます。

緑で記したものは、赤色の主軸となる思考過程を補佐するものです。ここには、各種評価がくることで、赤色の部分は信憑性を増していきます。緑の評価項目がたくさんあればあるほど良いです。

逆に言えば、評価はこの赤色の考え(仮説)を証明するための要素ですので、ここに組み込むことのできない意味のない評価をいくらやってもフローチャートには反映されません。

青色の部分は、背景となる因子なので、必ず直接フローチャートの中に組み込むべきかどうかということについてはケースバイケースです。ここは文章で最初に書いておいても良いかもしれません。

動作分析ができなければ、必ず行き詰る

統合と解釈の、「統合」とは、「各評価を統合する」ということに他なりません。

その各評価項目の中でも、主軸になるのはやはり動作分析です。

動作の中で気づいたことをまとめ、問題点を分析し、仮説を立て、他の評価で実証していくという過程が重要です。

統合と解釈がうまく進まないとすれば、もしかすると動作分析がしっかりとできていないのかもしれません。

特に、歩行や立ち上がり動作などの評価はよく行う機会がありますので、興味のある方はこちらも参考にしてみて下さい。

理学療法士が歩行動作を見るとき(歩行周期ごとの分析)に必要な能力とコツ
リハビリにおける、立ち上がり動作分析の基礎と臨床応用
【寝返り動作】から【起き上がり動作】について。動作分析のポイントを解説します。

まだよく分からないという方へ

統合と解釈とは、いわゆる『クリニカルリーズニング』とほとんど同義語として考えて良いものです。

厳密に言えば、統合と解釈は問題点だけにフォーカスするわけではないので違いはありそうですが、問題点を明らかにするための思考過程という意味では同じことです。

統合と解釈が分からない方は、ぜひクリニカルリーズニングの方法を学んでみて下さい。

【これなら誰でも分かる】リハビリにおけるクリニカルリーズニングの内容

考察との違いは?

『統合と解釈』と『考察』の違いはよく混同してしまう傾向があります。両者の違いを理解することで、より一層『統合と解釈』の意味について理解できるかもしれません。

参考記事としてこちらをどうぞ

理学療法士の実習生が悩む【統合と解釈】と【考察】の違いについて

まとめ

現在の実習システムは本当に大変ですよね。ぜひ参考にしていただき、乗り切ってください。