脳梗塞・脳出血などに代表される『内反尖足(ないはんせんそく)』の原因や、リハビリ治療についてご紹介します。

『つま先が引っかかって歩きにくい』

脳梗塞や脳出血などの脳血管疾患では、麻痺側に痙性麻痺が出現することがあります。そのような筋緊張の亢進を伴う麻痺が長期間残存すると、足部が『内反尖足』として変形を生じてしまいます。

ここでは、内反尖足の原因やそのリハビリ方法についてご紹介します。

僕は運動器疾患のリハビリが専門ですので、脳へのアプローチというよりも、足部の解剖学的・運動学的なアプローチ方法ということになります。

 内反尖足とは?

用語の意味について

まず、内反尖足とは、どのような形のことを指すのかということです。

冒頭に3Dで足の図を載せましたが、『大体そのような形状』であることは理解していたとしても、言葉で説明できるでしょうか。

そもそも『内反』や『尖足』とは、どのような時に使うのかということから考えていきましょう。

『関節可動域表示ならびに測定法』の記載

1995年に改訂された『関節可動域表示ならびに測定法』(日本整形外科学会・日本リハビリテーション医学会 1995年)では、足関節や足部の『運動方向』としては、以下の表示があるのみです。参考可動域とともに記載します。

足関節

・屈曲(底屈):45°
・伸展(背屈):20°

足部

・外がえし:20°
・内がえし:30°
・外転:10°
・内転:20°

[参考文献]j-stage:関節可動域表示ならびに測定法

ここには、『内反』も『尖足』も出てきません。

変形や異常肢位を表す言葉

『内反』と『尖足』は、実は変形や異常がある際によく使う名前であることを理解する必要があります。

なぜなら、これらは運動ではなく形状だからです。

その故に、尖足変形、内反変形、内反捻挫、内反足といった感じで使われるわけです。

『内反』・『外反』

外反とは、前額面上において「体の中心軸に対して足底面が外側に反っている形状」のことです。

内反とは、前額面上において「体の中心軸の方向に向かって足底面が反っている形状」のことです。

足底面を移動軸、下腿軸への垂直線を基本軸とするのは、『外がえし』『内がえし』です。

よって、内がえし=内反(Varus)、外がえし=外反(valgus)ということが言えそうです。

ただし、先ほど述べたように、内がえしが運動を指すことに対して、内反は形状を指していることには留意する必要があります。

『尖足』

尖足とは、矢状面上において「足関節が底屈している形状」です。

反対に、「足関節が背屈している形状」は、踵足と呼びます。

いずれも、尖足変形、踵足変形などといった用語の使用方法をします。

下垂足との違い

下垂足との違いは、その質的な変化にあります。

一見すると、見た目は同じように足趾が下を向いているのですが、『内反尖足』の場合には、その言葉自体に固定されている意味合いを含んでいることです。

下垂足は、前脛骨筋を中心とした足関節背屈筋力の低下によるものです。

よって、簡単に言ってしまえば両者は、「硬さ(stiffness)」があるかどうかです。

内反尖足の原因

陽性徴候と陰性徴候

脳血管疾患において、内反尖足が出現する原因は、その運動機能に障害が起きるからです。

脳血管疾患における運動機能障害は以下の2つに分類できます。

  1. 陽性徴候(正常では観察されない現象が出現すること)
  2. 陰性徴候(正常ならば観察される現象が消失すること)

陽性徴候が内反尖足に与える影響

陽性徴候とは、以下の4つが出現することです。

  1. 痙縮
  2. 共同運動
  3. 連合反応
  4. 病的反射

これらは、中枢側にある上位運動ニューロンが傷害され、その下位運動ニューロンに対する抑制が消失することで出現します。

脳血管障害の発症直後は、弛緩性麻痺になることが一般的ですが、腱反射は亢進していることが多く、一見弛緩様(筋緊張は低下しているが、腱反射は亢進している状態)の運動麻痺となります。

その後、筋緊張は次第に亢進していき、連合反応も見られるようになります。また、共同運動パターンも出現し、随意的に動くことが困難となってきます。

共同運動の背景には痙縮の存在があり、立位や歩行などの重心が高くバランスが必要な動作などでは、より一層筋緊張は亢進してくる傾向にあります。

内反尖足では、下腿三頭筋の筋緊張亢進が原因となります。共同運動では、上肢は屈曲パターン、下肢は伸展パターンを取りやすく、足関節に関しては底屈位を取りやすい傾向があります。

下腿三頭筋の痙性が出現しやすい動作様式を繰り返し、それを放置すると、足関節は内反尖足として著しい拘縮を起こすことになります。

 陰性症状が内反尖足に与える影響

陰性徴候とは、次に代表されるものが正常に機能しなくなることです。

  1. 立ち直り反射
  2. 平衡反応
  3. 感覚

まず、立ち直り反射や平衡反応などの姿勢反射障害が起きることで、転倒リスクが高まります。

転倒しないように努力するということは、それだけで筋緊張の亢進につながります。

また、感覚は内反尖足にとって非常に重要な要素です。

深部知覚障害や足底感覚障害、また筋紡錘などよる固有感覚障害では、ボディイメージへのフィードバックができなくなります。

要するに、自分の足がどこにあって、どのような動きをしているのか、また筋肉がどのくらい収縮しているのかといった認識ができなくなるわけです。

このことにより、感覚を増強しようと、また関節を安定させようとするあまり、さらに筋緊張は亢進することになります。

このように、陰性徴候によっても、やはり下腿三頭筋の筋緊張は亢進することになります。

解剖学・運動学から見た内反尖足

距腿関節の回転軸

距腿関節は、運動自由度1の蝶番関節です。蝶番関節の中でも、らせん階段を登るように回転に伴って軸の方向へずれることから、『らせん関節』とも呼ばれます。

なぜ関節の回転軸がずれるのかというと、次の2点が影響するからです。

  1. 外果が内果よりも下方に位置する。
  2. 外果が内果よりも後方に位置する。

このように、距腿関節の軸は水平から前額面上で約10°、水平面上で約6°ずれています。

これにより、距腿関節での底屈は、内反方向へ誘導されていくということが分かります。

このように内反尖足は、距腿関節軸による影響を大きく受けることになります。

内反尖足での距腿関節アライメント

距腿関節とは、内外の両果と脛骨の遠位端によって形成された部分と、距骨の側面と滑車面である部分の関節です。

この形状のことから、距腿関節は、大工さんが使用する『ほぞ継ぎ』に例えられます。

・mortise(ほぞ穴)=内外果と脛骨遠位端
・tendon(ほぞ)=距骨

重要なのは、底屈するに伴い距骨はmortiseから前方へ変位するこということです。

拘縮の原因

前述したように、内反尖足となる一番の要因は、脳血管疾患における運動機能障害によるものです。その中でも、下腿三頭筋の筋緊張亢進は最も大きな要因となります。

しかし、拘縮はそれだけで生じるものではありません。

拘縮の原因としては、下腿三頭筋以外にも、次の3つの要因を考える必要があります。

  1. 関節包
  2. 靭帯
  3. 長母趾屈筋

関節包

距腿関節のゆるみの肢位は『底屈10°・外反内反中間位』です。

ゆるみの肢位=Loose-packed position(LPP)とは、関節包が最もゆるみ、関節の遊び(joint play)が生まれるアライメントのことです。

底屈に従い、距骨(ほぞ)がmortise(ほぞ穴)から前方変位することで、後方関節包には“ゆとり”が生まれます。逆に言えば、背屈するのにはそれだけの“ゆとり”が必要であることになります。

その位置で後方関節包が短縮してしまえば、背屈制限が起きるのは容易に想像がつきます。

靭帯

また、ゆるみの肢位では靭帯にも“ゆとり”が生まれます。特に底屈位においては、後距腓靭帯や三角靭帯脛距部繊維などは短縮位となります。

関節包同様に、それらの靭帯も背屈制限の原因となり得ます。

長母趾屈筋

筋肉では長母指屈筋腱が距骨の後方を通過することから、長母指屈筋は拘縮原因の一つとなります。

画像引用元:プロメテウス解剖学アトラス 第2版

特に、長母指屈筋の短縮は、その腱がストッパーの役割となることで、距骨(ほぞ)がmotise(ほぞ穴)に戻る動きを妨げてしまいます。

内反尖足のリハビリ

内反尖足のリハビリは、何を置いても予防が重要です。拘縮が起きてしまっては、その改善には非常に難渋します。

脳卒中治療ガイドライン2015

日本脳卒中学会は、2015年に脳卒中ガイドライン委員会を設け、脳卒中治療ガイドラインを作成しています。

この中において、内反尖足について言及している部分があるので、抜粋してご紹介します。

【歩行障害に対するリハビリテーション】

・内反尖足がある患者に、歩行の改善のために短下肢装具を用いることが勧められる(グレードB)

【痙縮に対するリハビリテーション】

・痙縮に対し、高頻度のTENS(経皮的電気刺激)を施行することが勧められる(グレードB)
・慢性期片麻痺患者の痙縮に対するストレッチ、関節可動域訓練が勧められる(グレードB)

引用:日本脳卒中学会 脳卒中ガイドライン2015

グレードとはグレードA:行うよう強く勧められる
グレードB:行うよう勧められる
グレードC:行うよう考慮してもいいが、十分な科学的根拠がない
グレードD:行わないよう勧められる

装具療法

装具療法の効果

ガイドラインにもある通り、装具療法は大きな役割を果たします。しかし、出来る限り障害の程度と装具機能の組み合わせが適切かどうかを吟味する必要があります。

装具療法は、動作の矯正だけを目的とするものではありません。

早期に適合性の良い装具を用いることで、適切に荷重を加えることが可能となり、関節拘縮の予防も可能になります。

ストレッチは一日何時間も行うことはできませんが、装具療法では、着用している間はずっとその肢位へストレッチを行っているような意味合いがあるのです。

 下肢装具の種類

下肢装具は、足部の痙性、ブルンストロームステージ、クローヌスの程度などを判定基準とし、重症度に合わせたものを選択します。

軽度の場合には、プラスチック製のシューホーンブレース(SHB=Shoehorn brace)を用います。

Shoehornは、靴べらを語源に持つことから、“靴べら型短下肢装具”とも呼びます。足関節の背屈方向への可動性を得るために、継手付きのものを選択することもあります。

重度の場合には、金属支柱付き短下肢装具を用います。

金属の支柱があるので、より強固に固定が可能です。

TENS

TENSとは?

TENS=transcutaneous electrical nerve stimulationt

これは、『経皮的電気刺激』と呼ばれます。

TENSは、TESの一つとして分類されています。TESについてはこちらの記事をご参照下さい。

電気刺激療法(TES)の適応と禁忌について。EMSによる筋トレは効果があるのか?

TENSは、鎮痛を目的とした電気刺激療法です。これはゲートコントロールセオリーを背景としています。閾値の低い神経線維に対して比較的弱い電流で刺激することで、痛み自体を脊髄の後角で抑制しようとするものです。

このTENSは、痙縮の抑制に対しても効果があります。

また、安静時や自主トレーニング中にも使用することが可能なので、身体負荷が少なく使用しやすいというメリットもあります。

ストレッチ・関節可動域訓練

解剖学と運動学を考慮する

内反尖足の関節可動域訓練としてストレッチを行う際に、むやみやたらに下腿三頭筋のストレッチばかり行うのは得策ではありません。

なぜなら、先に述べたように、背屈動作では距骨がmortiseへはまり込んでいくような運動が起きます。

しかし、拘縮がある場合にはそれが障害されており、無理やり背屈に持っていくことで、距骨頸部と脛骨遠位端が衝突してしまうこともあります。

距骨の後方への入り込みを優先

内反尖足のストレッチでは、まず後方関節包・後距腓靭帯や三角靭帯脛距部繊維・長母趾屈筋のストレッチを優先させます。

距骨を把持するように固定し、痛みの範囲内で後方へ押し込むように操作していきます。内側・外側の靭帯をストレッチする際には、押し込む程度を内側と外側で変えていきます。

長母趾屈筋のストレッチでは、ウインドラス機構に留意するためにMTP関節が屈曲しないように把持し、そこから母趾を伸展方向へストレッチしていきます。

これらをしっかりと行い、距骨の動きが改善された後に、初めて下腿三頭筋のストレッチはより効率的に可能となってきます。

まとめ

内反尖足は、まずその用語や原因を理解することが重要です。

そして、足関節において解剖学的にどのような変化があるのか、運動的にはどのような工夫が必要なのかを絶えず意識して、リハビリに臨む必要があると考えています。

装具療法においては、着用した後には、必ず定期的なチェックをするようにしましょう。