こんにちは、理学療法士のBaboonです。
僕の職場には、今年は2名の新人が入職しました。最近は毎年このくらいの採用数です。
理学療法士養成校では、解剖学・運動学・生理学を中心に、基礎的な勉強をします。そして養成校を卒業し、国家試験を取得するわけですが、それだけで意味のあるリハビリができるわけではありません。
そのため、まともな医療機関では、基本的に新人教育や研修を行っていることでしょう。
新人教育は、技術的なことから接遇、コストの算定まで、内容はまちまちですが、限られた時間の中で、何を指導すると効果的なのでしょうか。
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新人にありがちな3つの問題
新人理学療法士が治療効果を出せなくて苦労する理由は、大きく分けて3つあります。
- 考え方がおかしい。
- 治療の引き出しが少ない。
- 評価が正確でない。
①に関しては、もはや養成校や実習先の問題です。いわゆる臨床推論(クリニカルリーズニング)は、国家試験を取得した時点である程度備わっていなければいけない能力です。そのために養成校で基礎学問を学び、実習で症例を通してをケーススタディを行うのです。新人教育云々の前に、面接でしっかりとこういった最低限の考え方ができるかどうかを判断して採用するべきかもしれません。
②に関しては、時間がかかるものです。経験によるものや、研修会や本などで勉強しながら、少しずつ蓄えていけば問題ないでしょう。
③に関してこそが、勤務先で早急にレベルアップすべき課題です。正確性といっても、どの新人も、ROMや筋力などの検査は一通りできます。
しかし、正確な評価に必須スキルである【触診】ができる新人はほとんどいません。養成校や実習先で念入りに教える時間はありませんし、教えることのできる人間も少ないのが現状です。
触っている組織が何なのか分からないのに、評価を正確にできないのは当然のことです。
早い段階で触診技術を指導するべき理由
問題のある部分というものは、押す(圧を加える)と痛みを生じます。逆に考えれば、問題のある部分を見つけるためには、押して痛い場所を見つければ良いということになります。
しかし、これだけで十分ではありません。患者さんは、何らかの動作に伴う痛みを抱えており、これがいわゆる主訴であるケースがほとんどです。先ほどの圧痛で確認した部位が、この主訴である動作時痛に再現痛としてリンクしているかどうが非常に重要です。
そのためには、触診のスキルが必須項目です。触っている組織が何なのか分からなければ、治療につなげることはできません。
患者さんは、主訴の解決のために病院へいらっしゃいます。その主訴の解決のために、どうしてもこのスキルからは避けて通れないでしょう。
【触診技術のトレーニング】の方法
触診技術のトレーニングは、以下の方法に従って行うと効果的であると考えています。
- 文字から図への解釈へ
- 二次元から三次元の解釈へ
- 触診技術の高い人間から学ぶ
1.文字から図への解釈へ
学生時代は、ひたすら骨の名称や筋肉の起始停止を文字で覚えます。解剖学アトラスなどでなんとなく見ていても、実際にはあまり図としてあまりイメージできていないことがあります。
そんな時に効果的な勉強は、トレースです。解剖学アトラスなどの図の上にトレーシングペーパーなどを置き、鉛筆でトレースしていきます。骨・関節・靭帯・筋肉にわけてトレースしていくと良いでしょう。
トレースが大体できるようになった後は、解剖学アトラスなどは見ずに白紙に書いていきます。絵心の問題はあるかもしれませんが、ここである程度書けるようになれば、一段階目はクリアです。
2.二次元から三次元の解釈へ
絵という、二次元で大体イメージできれば、次は実際にそれを3Dとしてイメージできるようにします。最初は、骨標本を用います。できるだけ精巧に作られたものが良いです。中には廉価なものもありますが、大腿骨大転子が無かったりと、質のひどいものもあります。
骨標本をひたすら触ります。それも、考えながら触ります。「なぜここにこんな出っ張りがあるのか」「ここのくぼみな何か」と、疑問を持って触っていくと、大体そういう部分は、筋肉や靭帯が付着する部分であったりします。これらの作業を行うことで、名称ー図ー立体イメージといった三者が頭に組み合わさり、触診の準備ができます。
3.触診技術の高い人間から学ぶ
参考書をみながら、分からない人間同士で練習しても全く上達しません。触診技術の高い人から学んでください。「なんとなく触れている」なく、「絶対これだ」という確信が持てるまで練習すべきです。
触診技術の高い人間が職場にいなければ、研修会で学んでください。レベルの高い研修会はいくつか存在します。
まとめ
以上のことを新人教育にプラスしていただければ、早い段階で患者満足度を上げることに貢献でき、職場全体の利益に反映されるでしょう。