頭痛を持つ方は非常に多くいらっしゃり、市販の頭痛薬などで、ごまかしながら生活していらっしゃるケースも多いのではないでしょうか。
しかし、頭痛の中には、くも膜下出血や髄膜炎、脳腫瘍といった生命に危険のあるものもありますので、基本的には専門医を受診するべきです。
それを踏まえた上で、筋肉の緊張などを主体とする『緊張型頭痛』・『後頭神経痛』について、ここではご説明していきます。
緊張型頭痛について
緊張型頭痛という名称は、1988年の国際頭痛学で定められたものです。およそ日本人の20パーセントがこの緊張型頭痛に悩まされているようです。
整形外科でのリハビリにおいても、頭痛を主訴に来院される方は多くいらっしゃいます。
緊張型頭痛は、はっきりと限定した病態を指すというよは、心身の緊張によって引き起こされる、頭部における筋肉の異常を伴う症状のことを指します。
緊張型頭痛による症状は多岐にわたり、その原因についてもまだ統一した見解が得られていないのが現状です。
緊張型頭痛と片頭痛は、混同しやすいこともありますが、一般的には緊張型頭痛には、片頭痛にみられるような『ズキン、ズキン』といった拍動性の痛みはないとされており、生活に支障が出るとしても重度の問題となることは少ない傾向にあります。
緊張型頭痛が起きやすい人
緊張型頭痛を引き起こすとされている要因はたくさんあります。
以下に例を示します。
- パソコン仕事が多い方
- 鞄をどちらか一方の手でばかり持つ方
- 不安を抱えている方
- 新しい環境に慣れていない方
- 口や顎に何かしら問題がある方
- 睡眠不足がある方
特に女性は男性よりも、発症頻度が多い傾向にあります。
頭痛は1週間から10日程度続くことが多いですが、頭痛の頻度が月に15日以上、年間では180日以上あり、さらにこの状態が半年以上続いているものを慢性緊張型頭痛と呼びます。
緊張型頭痛の対処法
基本的には、次の3つの治療を行う場合があります。
- 運動療法
- 心理療法
- 薬物療法
僕は理学療法士ですので、この中の運動療法について少し触れさせていただきます。
頭部の位置に注意する
人間の頭は実はかなり重く、体重の10%程度あると言われています。
60Kgの人であれば、頭部は約6Kgあるということです。ボウリングのボール程度の重さだとイメージしていただければ、その重さが分かると思われます。
この重い頭部が前方に位置していると、周囲の筋肉は過緊張状態を強いられてしまいます。
下の3D画像は、よくデスクワークを行う方に多い不良姿勢です。
赤色の線は、座っている際の体の重心線です。青色の線は、頭部の重心線です。
この2つが遠ざかれば遠ざかるほど、頭部~頸部の筋肉に負担がかかります。
とりわけ、後頭下筋群への影響は大きいでしょう。
後頭下筋群の起始停止・機能・ストレッチ方法について。
逆に、この2つの線が重なるようにすれば、頭部周囲への筋肉の負担は減っていくということです。
これで、2つの線はほぼ同一となりました。
この姿勢を取るためには、以下のことに注意してください。
- パソコンのモニターは、極端に目線の下に置かない。
- デスクの高さを変えられなければ、椅子を低くする。
- 胸を張って、顎を引く。
運動方法
首を動かすような運動を行うこともありますが、これはなかなか容易なことではありません。緊張型頭痛をお持ちの方は、首を動かすと筋肉が突っ張り、痛みがでることもあります。
そこで、肩甲骨などを動かしていきます。
頸部周囲の筋肉の中には、有名な筋肉で言えば、僧帽筋といった頸部と肩甲骨・鎖骨を結ぶ筋肉が存在します。この筋肉は、肩をすくめるような動きで働きます。
軽く大きく反復してこのような動きをすることで、頸部周囲の筋肉の柔軟性は改善していきます。
ポイントは、肩甲骨同士を近づけながら上へ引き上げるような意識を持って動かすことです。筋力トレーニングではないので、軽めの力で結構ですが、動く範囲の最後までしっかりと筋肉の収縮を入れるのが重要です。
この運動に限らず、肩甲骨をあらゆる方向へ動かすことは、頸部周囲のリラクゼーションとしても効果があります。
温める
筋肉の緊張を改善させるためにも、精神的にリラックスするためにも、頸部を中心として体を温めることは効果があるでしょう。
温熱は、血管拡張作用もあり、発痛物質を洗い流す作用があります。
よって、夏場でもシャワーだけで済ませず、毎日お風呂の湯舟に浸かるような習慣をつけるだけでも良いかと思われます。
面倒だと感じる方は、ホットパックを使用しても良いかと思います。最近では、次の商品のように、レンジで温めることができるものも販売されています。
[amazonjs asin=”B00GAN7LRG” locale=”JP” title=”富士商 ホット&スチームパッド 肩用”]後頭神経痛について
後頭部がズキンズキンとする。そんな痛みの多くは、後頭神経痛である可能性があります。
後頭神経痛とは、大後頭神経という頭皮を支配する神経の痛みです。この支配領域は、後頭部の大部分を占めています。
よって、痛み方も後頭部全体が締め付けられるように痛みを感じることがあります。原因としては、この大後頭神経が僧帽筋や頭半棘筋といった筋肉を貫通することから、これらの筋肉が過剰に緊張することで神経を圧迫していることが考えられています。
改善のためには
基本的には、先ほどの緊張型頭痛の場合と同様に、姿勢に注意したり、肩甲骨の体操や温熱を心がけることが大切です。
しかし、いわゆる交通事故の追突で生じるような、むち打ち(外傷性頸部症候群)などで生じた後頭神経痛では、改善に難渋することもあります。
特に、組織変性が進行していることが多い高齢者の場合では、神経に影響を与える軟部組織の修復はさらに遅延することもあります。
まとめ
頭痛に悩まされた場合には、まずは専門医への受診が原則です。
緊張型頭痛や後頭神経痛が原因である場合には、生活習慣や運動などに配慮することで、改善を目指していきましょう。