棘上筋についての基本的な情報はこちらです。
起始:肩甲骨棘上窩
停止:上腕骨大結節の上面、肩関節包
神経支配:肩甲上神経(C5,C6)
作用:以下の通りです。
- 肩関節の外転作用
- 肩関節の内旋作用(棘上筋前部繊維により)
- 肩関節の外旋作用(棘上筋後部繊維により)
- 骨頭を関節窩に引き付ける(求心力)作用
さらに棘上筋について詳しく知りたい方は、以下の目次より進んで下さい。
英語表記
棘上筋は英語表記は次の通りです。
Supraspinatus muscle
略して、SSPと呼ぶこともあります。
棘上筋の概要
棘上筋は、回旋筋腱板を構成する筋肉の一つです。
棘上筋の他には、棘下筋・小円筋・肩甲下筋がこの腱板を構成しますが、棘上筋はこの中でもひときわ重要な筋肉です。
棘上筋は肩関節外転筋として広く認知されていますが、実際の外転作用を主に担うのは三角筋であり、棘上筋による外転力作用はそれほど強くありません。
理由は、骨頭中心からのモーメントアームが短いからです。
棘上筋の最も重要な機能は、骨頭を関節窩に引き付ける作用です。
そのおかげで、骨頭求心性は向上し、肩関節は支点が形成されることで運動軸がブレにくくなるわけです。
肩関節は運動性に優れている代わりに、元々適合性に優れた関節ではありません。そのため、この求心性というものが、非常に重要です。
棘上筋を図で見てみましょう
付着する骨について
これは、肩甲骨を上から見ているイラストです。右上方へ広く広がっている肩甲骨棘上窩から、左下方の上腕骨大結節に向かって付着しています。
画像出典元: プロメテウス解剖学アトラス解剖学総論/運動器系 第2版
筋の走行
棘上筋は、肩甲骨棘上窩から外側に向かって走行し、肩峰の下をくぐり抜けます。
下の図の青丸の部分が肩峰の下を通過する部分です。この部分では触診はできません。
触診部位
筋腹の触診は、肩甲骨棘上窩で行います。
下の写真のように、棘上窩を両手指で挟むように触知すると、筋腹の幅が分かります。ここから肩関節を30°~45°程度外転させると、より筋の収縮を感じることができます。
リハビリ応用について
肩峰下滑液包炎やインピンジメントとの関係
肩峰下滑液包炎などが起きた後には、肩峰下滑液包と棘上筋の間での滑動性が低下して動きが悪くなったり、癒着が進むことがあります。
そうなると、結滞動作の制限が生じてくることになります。
また、棘上筋の機能不全が起きると、骨頭の求心力が低下し、骨頭上方変位が生じることでインピンジメントにつながることもあります。
詳しくはこちらをどうぞ。
肩インピンジメント・結滞動作制限の改善に必要な【肩峰下滑液包】の理解
特に、三角筋と棘上筋は、肩関節外転動作にて協調して動く必要があります。棘上筋による支点形成力の上に、三角筋の回転モーメントが加わることで、始めてスムーズな動きとなります。この協同した運動をフォースカップル(force couple)と呼びます。
腱板損傷との関係
腱板損傷は、ほとんど棘上筋を含んだ形で生じます。軽度な損傷であれば保存療法としてリハビリ対応になることもありますが、完全断裂してしまえば、機能の再獲得のためには手術する必要があります。
保存療法では、肩甲骨の上方回旋誘導を行い、骨頭求心力を補助するようなアライメント作りを行ったり、棘下筋のトレーニングを行ったりします。
高齢者などでは、棘上筋腱に退行変性が生じると、より一層損傷しやすくなります。
まとめ
棘上筋は、回旋筋腱板の中でも、『骨頭求心力を高めて、支点形成を行う』という、肩関節の構造にとって必要な機能を有しています。
そうであるがゆえに、負荷が加わりやすく、問題を起こしやすい部分であることをチェックする必要があります。